National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 158.IR:区域整備計画認定 セカンドラウンド ②ルール変更?

2022-05-23

158.IR:区域整備計画認定 セカンドラウンド ②ルール変更?

区域整備計画認定のセカンドラウンドの可能性に関し、一部民間企業、組織、地方公共団体等が区域認定のルールを簡素化する道筋はあるとして、声高に関係方面に主張していることを耳にした。
外国のプレスからかかる意見を日本の識者から聞いたとして確認なり、見解を求めてくる有様だ。
一瞬何を言いたいのか理解できなかったが、要するに、第一ラウンドは市場を誘導できなかったという意味では明らかに典型的な政府による政策の失敗であり、同じやり方ではうまくIR等実現しない。
今までの政策ややり方を一部変えるべきという議論になる。
当初は世界中の大手カジノ事業者等が関心を示し、大都市を中心に大きなIRの誘致合戦が都道府県等の間で生じると見られていた。
ところが具体の自治体の要求項目や、案件自体のハードルの高さ、制度や規制の在り方の曖昧さや不案内等により推進や誘致から脱落する民間事業者等が相次ぎ、競争市場ではなくなってしまったと共に、都道府県等レベルでも反対派ないしは慎重派の首長が選挙で選ばれたことによる政策転換や案件凍結、更には地方議会による反発・反対等様々な事情により、あれよあれよという間に様々な都道府県等も脱落し、国に区域整備計画案を提出できたのは僅か二都道府県等に留まった。
勿論市場環境の変化(コロナ禍、これに伴う内外観光旅行客の蒸発、観光・集客産業の市場低迷と民間事業者の投資意欲の減退等)や、将来市場環境の不安定さ、事業の前提というべきカジノ規制が未だ完璧には制定されていないこと等もうまくいかなかった背景にはあるのだろう。
但し、IRの政策自体が失敗であったとは必ずしも断言できないし、市場環境の変化はいたしかたのない事情という側面もある。

上記で問題となるのは第二ラウンドを実施する場合には、第一ラウンドの結果を反省し、区域選定の手順や考え方を変えるべきという主張の内容だ。
当初のラウンドの失敗は市場環境や市場参加者の意図・意欲の読み違いから生じたもので、手順とか考えを是正すれば、参加しうる潜在的事業者も増え、確実に誘致がうまくいくというストーリーになる。
逆に何もルールを変えずに、第一ラウンドと同じ前提で第二ラウンドを都道府県等が実施したとしても、民間事業者が興味を示さず、公募が不成立になる可能性があると共に、競争環境を醸成できない場合には、やはりIRは実現できにくくなり、第一ラウンド失敗と同じ轍を踏むことになりうるという理屈には確かに理解できる側面もある。
では何をどうしようというのだろうか。
考えとしては、例えば政令による施設要求水準のハードルが高すぎるから誰も投資提案をしないのであって、政令を改正し、地方の観光都市にもより適合的な施設種や施設規模・機能等のハードルを合理的に低く設定し、提案できやすい前提とし、競争環境を醸成する施策を導入する。
あるいは、都道府県等による事業者選定、国による都道府県等・事業者の共同区域整備計画案の認定という二つの手順があってもいいが、事業者提案は同じものとし、二つの手順を簡素化するという考え方の様だ。
後者に至っては何をいいたいのかイメージがつかめないが、要は手順・タイミングを簡素化し、事業者にとり投資事業提案をしやすい手順や環境を行政府が設けるべきという主張になる。
枠が余る状態が生じた以上、もう一度仕切り直しした上で、より市場に適合的な考えで、やり方を再構築すれば、IRもうまく実現しうるということなのだろう。
法律を変える議論ではなく、単に政令を変えるだけの話ならば、政府の意思さえあれば可能ではないのかという理屈がこの背景にはある。

いいたいことは理解できるが、制度や法律の創出は長年の議論を経て構築されてきたもので、政府の意思のみで単純にこれを変えることは極めて難しい。
ハードルの高さは、民設民営のカジノを特例的に認めるという違法性阻却の議論に密接に絡んでいるという背景もある。
よってこの立法の趣旨から大きく逸脱することは簡単ではないということに尽きる。
過去積み上げてきた議論や合意形成を崩すためには、再度これらの議論に立ち返り、改正することの是非と共に、変えるとすれば何を何処までどう変えるべきかという議論が常識的には必要になる。
一部政治家や政府の意図だけで、制度の在り方を大きく変えてしまうことはやはりどう見ても無理があるのだ。

かつ、未だファーストラウンドの実践が始まっていない段階で、一回目はうまくいっていない、よって制度の仕組みを変えるべきという主張では、当初の政策が間違っていたことを含意してしまう。
これでは政府内部での反発が生じるかもしれない。
拙速な判断を避け、第一ラウンドの成果を確認した上で、時間をかけ制度の在り方を議論し、必要な場合修正した上で第二ラウンドを実施するという考えの方が本来あるべき道筋という理屈になる。
但し、これでは結果的にあまりにも長い時間がかかってしまう。
IR整備法制定時点から10~15年もたてば、当然市場環境も状況も制度制定時点と比較すると大きく変わってしまっている。
本来市場環境の変化に呼応し、制度の在り方自体も柔軟に変えていくことが正しい議論の在り方になる。
かかる議論があってしかるべきなのだが、一度制度ができてしまうと、考えや慣行が固定化し、柔軟な対応ができにくいことがこの国の実態なのかもしれない。
これも日本の潜在的リスクかと欧米投資家が判断する懸念もありそうだ。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top