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2022-05-30

159.IR:区域整備計画認定 セカンドラウンド戦略?③都道府県等は?

区域数の枠が余っており、時間的余裕もある場合、区域認定のセカンドラウンドを実施することを政府が判断すれば、これに呼応し、IR誘致に手を挙げる都道府県等が再度現れることになるのであろう。
但し、当初の場合と環境も異なり、どの都道府県等が手を挙げるか次第で競合状態も民間事業者のアプローチも変わってくる可能性が高い。
可能性のある都道府県等は何を考え、どう動くのであろうか。
一部漏れ聞く情報もでてきている。

  • 和歌山県:
    知事はチャンスがあるならば再度チャレンジしたいと意欲を捨てていない。
    但し、潜在的な事業者が興味を示すかは解らない。
    議会の同意を得られなかった同じ事業者と同じ内容の区域整備計画である場合には、資金調達を含め一端崩れた枠組みを再構築することはまず難しい。
    潜在的な民間事業者に余程強い意欲が無い限り、やり直すこと自体のハードルは高い。
  • 東京都:
    知事は誘致のプラスマイナスを検討中と発言し、数年前と全く変化のない考え方を開示している。
    検討の歴史は20年以上に及び、毎年調査予算を少額付け、港湾局を中心に事務方が検討していることは事実だが、結局どうするかは知事による政治判断次第になる。
    知事が手を挙げ、政治的に動けば確実に実現の可能性が高まり、市場の関心を呼ぶことは間違いないが、どうするかは政治的環境次第なのだろう。
  • 愛媛県・名古屋市:
    いずれも潜在的な関心を首長が公言し、一定の調査やサウンデイング迄は第一ラウンドで実施したが、本格的な検討のレベルを実施した経緯はなく、詰めは甘い。
  • 北海道:
    現知事は潜在的可能性を否定していないが、慎重かつ当面は見送りとし、意欲は弱い。
    一方苫小牧市は従前より強い意欲を示しているが、政令市では無い為、発意はできず、知事がその気にならない限り何も動かない。
    過去の検討の経緯より可能性はあるが、利害関係者の合意形成次第だろう。
  • 沖縄県:
    現知事では可能性ゼロだが、保守系の首長が選挙で当選すれば、再度推進を公言することもありえ、その場合には実現可能性が高まる。
    基地問題等もあり、沖縄の観光振興は政策的に政府の支援も強く、知事が同意し、県事務局が動き出せば政治的支援の輪が広がり、大きな可能性はある。
  • 横浜市:
    現市長が推進派市長に交替することが前提だろうが、当初の山下埠頭開発は既に他の計画が考慮されつつあり、ゼロから別のサイト、別の環境で考えることはかなりハードルが高い。
    過去の経緯から市民の感情的反発もありえ、歯車を元に戻すことは時間と努力が必要で、単純ではない。
  • 福岡市:
    現市長は意欲は無い。
    一方商工会議所等民間団体による強い意欲はあるが、一部でしかない。
    また長崎が認定されれば可能性は無くなるが、逆の場合、可能性は確かに高まる。

これら潜在的候補自治体が強い声を政府に届ければ、セカンドラウンドを考慮する機運が生まれるのかもしれない。
もっともどうなるかは、どの都道府県等が手を挙げるのかにもより、状況次第で様相は大きく異なり、自治体間の競争環境も異なってきてしまう。
残された枠は限られるため、より市場性があり、可能性が高いと想定される巨大市場のある地域・都道府県等に民間事業者のインタレストは集中するだろう。
こうなると大都市IRの可能性は高まるが、大都市と競合して手を挙げる地方の観光都市がいるとすれば、間違いなく応札者が少なくなり、地方都市にとっては実現のハードルは確実に高くなってしまう。
一方もし大都市が手を挙げなければ地方都市だけの競争になり、これはこれで異なる競争環境になり、観光特性に魅力がある地方都市の場合には、面白い競争環境が成立するかもしれない。
要はどの都道府県等が積極的に動き出すか否かで、競争環境は大きく変化することになり、間違いなく巨大都市を抱える都道府県等が意欲を示すか否かでセカンドラウンドの帰趨が固まってしまうことになるのだろう。
残念ながら制度に内在する仕組みは市場をかかる方向に誘導してしまうことになる。

あらゆる都道府県等の場合でも、自治体首長による強力な意思・意欲・指導が必要で、これがあり初めてIR誘致が実現の方向に動くことは間違いない。
首長による政治主導が無い限り、行政府は動けないし、地域社会の合意形成も難しいからである。
もっともカジノを含むIRに関しては未だに住民に依る感情的な反発や不安等が存在し、首長から見れば、これは選挙における住民の投票行動に影響を及ぼしかねない政治リスクをも孕んでいることになる。
このリスクを受容し、強い意思で政策を実践し、住民を説得できる力と意欲が無ければ確実にうまくいかない。
慎重あるいは曖昧な態度をとったり、決めきらない態度であったりして推進をする場合には、確実に住民の感情的反発を招き、意味のない政争の具になることもありうる。

(美原 融)

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