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2022-05-16

157.IR:区域整備計画認定 セカンドラウンド ①制約は?

IR整備法第九条第12項は、認定される区域数の上限を三と規定している。
あくまでも上限であって必ずしも三つの区域を認定しなければいけないということではない。
都道府県等による区域整備計画の申請期限は2022年4月28日で4月26日に発送、27日に提出し、国土交通省が受領を確認したのは大阪府と長崎県の二つのみとなった。
つい二週間前迄はこれに和歌山県を加えた三つの都道府県等が提出するのではと想定されており、これら三つの計画案はその内容が余程脆弱でない限り、申請にこぎつけさえすれば国からは審査で落とされる可能性は少ないと見られていた。
相対評価ではなく、あくまでも絶対評価で内容を審査することになるという理由による。
三つ全てが認定を得ることができれば、当面これ以上のIR区域は、IR整備法の規定を改正しない限り我が国では認められない。
勿論将来の制度改定のタイミングを活用し、法律を変えれば増やすことは可能だが、かなり先の話になってしまう。
IRは未だ実現されておらず、具体のIRの効果や実践の在り方の検証がないままに、単純に数を増やそうとする法律改正等中々できるものではない。

ところが期限前最後の段階で和歌山県の脱落により、ある日突然IR実現の枠が一つ余ることが確定した。
確かにこれは想定外の事象が起きてしまったことになる。
制度自体は三つ以上の候補都道府県等がでてくること、自治体間の競争が生じることを暗黙の前提とし、三つ以内になる事は考えてはいない。
三つ以上の区域提案があれば、その中から区域を選定することになるが、幾つ選定すべきかという制度的規定はない。
結果的に三つかもしれないし、あるいは二つ、ひょっとして一つとなるかもしれない。
この状況でもし一つの区域しか認定されない場合には、認定終了後の時点で更に枠が余ることが明確になる。
ところが実態は申請前の時点で二つの都道府県等しか申請しないことが明らかになり、枠が余ることが確定してしまった。
すわまだ可能性はある、区域認定のための二次募集が直ちに始まるのではと期待する民間事業者や一部地方公共団体がでて、市場ではかなりの騒ぎになったのだが、ことはそう単純には運ばない。
四つの障害がある。
即ち、

  1. 枠が幾つ余るかは未だ未確定:
    今回の区域認定審査・評価・認定手順が完結し、区域認定が行われるまでは何もおこらないし、できない。
    確かに区域数は一つ余ってしまったことは事実だが、一つだけになるとはまだ決まったわけでは無い。
    追加的にこれが増える可能性もゼロではなく、最初のラウンドの区域認定が固まるまでは数が決まらず、かかる状況下では何もおきようがない。
  2. 都道府県等の意思・意欲・行動が無ければ何も始まらない:
    国が政策ありきで枠の穴を埋める行動のイニシアチブを取ることはありえない。
    発意は悪迄も都道府県等にあり、彼らが要請しない限り、国が率先して動くことはない。
    一方都道府県等の事情とは、初回は準備検討不足や時間不足、合意形成等ができなかったりするなど、様々な事情により申請には至らなかったりしたが、IR誘致の意思を都道府県等が明確に公言し、国に対し残った枠で二次募集をすることを強力に働きかけることは絶対要件だ。
    国の意思のみで二次募集をすることはありえない。
    あくまでも誘致の主体は都道府県等だからである。
  3. 政治的意思・後押しは必要:
    上記を勘案し、制度の枠内で二次募集をすべきという強い政治的要請が政権与党等にあり、潜在的な都道府県等の主張に賛意を示すことは国の政策決定には有用になる。
  4. 立法府は法の施行段階ではあまり口を出すべきではないが、当初の枠が余っている事実を見て、法の趣旨や自治体の意向を勘案し、二次募集をすべきとする政治的意思は当然あった方が実現は早まる。
  5. 政府の同意と行政手続きも当然必要:
    最終的には国の判断となるが、政府が上記を勘案し、二次募集を行うことを判断することになる。
    行政的には基本方針の一部を変えると共に、追加的区域整備計画案の提出期限を政令で定めることによりこれは可能になるはずだ。

この中の内、一番重要なのは都道府県等の強い意思・意欲だろう。
これが無ければ如何なる政治的判断も意味がない。
都道府県等の意思を支援するため、民間企業や関連地域社会等も強い支援の声をあげ、政治的に働きかける場合、政権与党や政府を動かし、二次募集へと繋げられる可能性は十分ある。
但し、これができるのはあくまでも当初の区域認定が確定した後になる。
尚、公平性を期すために、都道府県等による構想・計画立案・地域社会の合意形成・実施方針策定・公募と事業者選定・事業者との区域整備計画案策定という行政的手順をゼロから始めるに必要な十分な時間的要素に配慮する必要がある。
これには最低1年半から2年は必要となるのではないか。
既に裏で過去準備検討した蓄積はあるため、早く二次募集を実施しろという要請が一部都道府県等にありうるかもしれないが、これでは自治体間の公平性を担保することはできない。
ゼロから検討を始める都道府県等に十分な時間的余裕を与えることが公平な政策判断になるからだ。

よって二次募集に至る迄には一定の制約要因があると共に、かなり時間がかかることになるのかもしれない。
この間に都道府県等の首長の選挙がありうるし、反対派の首長から賛成派の首長に交替があれば、手を挙げる都道府県等が再度でてくるのかもしれない。
過去検討し、うまくいかなかった都道府県等が再チャレンジすることも勿論可能だ。
新たに手を挙げようとする都道府県等もあるだろうが、かなり広大な土地を必要とすることより、適切なサイトがあるか否か、地域社会や議会の賛意をタイミング良くどう取得することができるのか、住民対応をどううまく実施するか等一回目のラウンドで得た経験・教訓をうまく生かすことが必要になる。

(美原 融)

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