National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 130.区域整備計画申請:1.5ラウンドは有りうるのか?

2021-11-01

130.区域整備計画申請:1.5ラウンドは有りうるのか?

IR推進派の民間の人達の中には、現在進行中の区域提案申請手続きを更に1-2年延長させることが政治的判断として可能で、政府はこれを画策する行動に出ると思い込んでいる御仁がおられる模様だ。
巷ではこれをVersion 1.5ラウンド等と呼称している。
横浜市がIRを断念し、現状三つの都道府県等が申請に至る準備を進行しているが、実質的に競争環境が機能しなかった事業者選定がなされたことより、国全体の手順がうまく機能しなかったことを認識し、より市場を活性化させるために、まだ手を挙げていない都道府県等や潜在的なインタレストを保持しつつもチャンスを狙っているだけの都道府県等にも手を挙げる好機を与えるべく、国の全体スケジュールを遅延させるという考えの様だ。
西日本に限られた区域選定ではなく、首都圏や中部経済圏、あるいは北海道、沖縄県等の状況を考慮し、手続きの制約を緩和し、時間的余裕が生まれれば、いくつかの都道府県等は手を挙げる、あるいは挙げられるのではないかという期待なのだろう。
確かに、毎年少額ながら調査予算をつけ、調査研究や可能性を追求している都道府県等も未だに存在すると共に、可能性は匂わせつつも、未だにその是非を検討中として、様子眺めに徹し気色を鮮明にしない首長も存在する。
かつ個別都道府県等の行政府の内部にも、立場により様々な意見もあり、かかる考えを支持している官僚も一部いるようではある。

考えとして解らないこともないし、かかる考えを主張する国や地方の議会議員諸氏も若干存在する模様だ。
もし時間的余裕があれば対応可能な都道府県等も存在するだろうし、大都市圏の首長が手を挙げ、参加意欲を明確にすれば、再度市場が活性化し、競争環境が創出されうることは十分ありうる。
但し、これはかなり身勝手、かつ独善的な考え方のように思える。
これでは現在区域整備計画を提出すべく、国が提示した予定に従い、策定準備中の都道府県等からしてみれば、とんでもない考えとして猛反発がでてくることは間違いない。
これら地方公共団体は、制度や規則上の手順を踏み、国の大きな枠組みや予定を遵守し、着実にステップを進めてきている。
このために議会の了解を取り付け、実施の為の予算を組み、組織や体制を維持してきているわけで、これが国の一方的な事情により遅延せざるを得ないとなった場合、全ての予定や仕組みが狂ってしまう。
一端枠組みが進捗すると、当初の予定通りに粛々と実務をこなしてくことが地方公共団体のあるべき姿で、これが遅延すると、予算も体制も維持できなくなる公算もある。
事実、現在区域整備計画を策定中の都道府県等は、過去も現在も、今の予定を延長して欲しいという要求を政府に出してはいない。
逆に国が2020年時点でコロナ禍の混乱もこれあり、全体のスケジュールを遅らせる判断をした際、予定通りに実施すべきと主張した都道府県等もいた位である。
予定通りに区域整備計画申請を提出することを考慮している都道府県等の意向を無視して、国が一方的に現在の予定を変えること等可能性としてあるわけがない。
合理的な理由や関連当事者の同意なくして、国が審査・評価のスタートラインを変えることは、すべきではないし、あってはならない。
もっとも、この国では利権は政治的に動くはずと考えている人にとってみれば、制度上の手順等関係なく、かかる発想もありうるのかもしれない。

では現在区域整備計画を策定中の三つの都道府県等の内、どれかが、申請前に申請行為を中断し、計画申請を断念するような事態が生じた場合、どうなるのであろうか。
この場合、最大三つの区域認定の枠が確実に余ることになる。
例えこうなっても、国の現在のスケジュールを更に遅らせること等はありえない。
今後区域認定申請を企図する都道府県等があるか否かの確証もない段階で、潜在的な都道府県等候補を優先し、現在準備中の都道府県等に不利益を与えてしまうことは極めて非合理的、かつ不公平であるからだ。
この場合には、国は例え区域認定数が上限に至らなくても、予定通りのスケジュールで2022年春~初夏迄に区域認定を終了するはずだ。
三つの都道府県等が予定通り期日迄に区域整備計画案を申請し、国の審査過程で要求水準を満たしていないと判断された都道府県等はこの時点で欠格になり、評価の対象から外れる。
この場合には三つの上限枠に至らず、枠に余裕が生じることになるのだが、予定を変えることが無いのは上記と同じ理由に依る。

一方、上記の結果としてもし枠が一つでも余る状況に至れば、国の判断として、もう一ラウンドの区域認定申請を認めるということはありうる。
申請受付、認定を二ラウンドで実施することを禁止する規定はない。
但し、この判断に至るには、もう一度十分な時間があることを前提に、区域認定申請に応じるしっかりとした都道府県等が複数あることが前提だろう。
都道府県等の意向調査、民間事業者サウンデイング等により、この可能性を確認し、追加ラウンドを実施することによる経済効果、市場を活性化する効果、潜在的事業者の興味や意欲、政治的要請等を複合的に考察し、判断することになるに違いない。
これは単純に上からの鶴の一声では胎動せず、それなりに時間のかかるステップになる。

よって1.5ラウンドはありえないが、今後の状況次第では、2ラウンドは可能性として無いわけでは無いということに尽きる。
但し、現段階では状況は不明。
おそらく2021年春以降の状況次第ということだが、潜在的に興味を示す都道府県等もそれまでは実際動けないはずだ。
確実に区域認定を得られる可能性が無い以上、政治的に手を挙げて意思を表明したところでこれこそ絵に描いた餅になってしまうからである。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top