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2020-09-29

29.After Colona: IR/ゲーミング産業はどうなる?

2020年春から数ケ月の間、全世界のIRやカジノ施設はコロナ禍に伴い閉鎖に追い込まれ、エンターテイメント産業自体が感染を助長しかねない三密の代表として、営業の一時停止を余儀なくされた。
6月第二週以降、世界各地で段階的に都市のロックダウンが解除され、9月に至り、ようやく施設も全面再開となりつつある。
但し、現段階ではまだ、世界で感染は猛威を振るいつつあり、終息に至っているわけではない。
よって顧客の集客も芳しくない。
世の中から観光やエンターテイメントが消えるわけがなく、国際観光や人々の移動・交流も確実に、段階的に元に戻ると想定されているが、如何なるマイルストーンでこれがどう実現できるかは、まだ明確なシナリオを描ける段階ではない。

9・11ショックの場合には、米国ラスベガスのカジノ産業の総売り上げ(GGR)はかなり落ち込み、元に戻るのに約2年かかった。
2008年以降の景気後退時~リーマンショック~は、観光産業全般に大きな停滞を招き、米国カジノのGGRも大きく落ち込み、複数の企業の破綻をもたらしたと共に、GGRが元のレベルに回復するのに何と10年かかっている。
今回のコロナ騒動では、例えばマカオでは4月、5月は前年比GGRの落ち込みは90~95%減少となるが、これは一定期間全施設の閉鎖を余儀なくされたからである。
世界のIRもカジノも同様であろう。
勿論これが長期に亘り継続することはなく、時間の問題で元に戻ることは間違いない。
9.11もリーマンショックも米国でおきた事象から経済的停滞が世界に波及したのだが、今回は短期間にあらゆる国で感染が拡大し、かつ伝播したため、出入国検疫の強化、実質的な空港閉鎖・国境閉鎖に近い行動がとられ、人々の移動と交流が全世界的に停滞したということが特徴的な事象となった。
この様な事象は過去、経験がなく、どうこれを平常に戻していくとのか、あるいは既に昔に戻らずニューノーマル(New Normal~新しい日常)へと人々の行動様式は変わるのではないかとする議論もある。

短期的には色々なことが起こりそうである。
米国を始め、世界中のIR・カジノ施設が徐々に再開されつつある。
もっとも感染防止のガイドラインを遵守し、かなり慎重な形での再開になる。
安全のための消毒徹底、施設入場に際しての検温、顧客・従業員いずれもマスク着用、グローブの使用、デイーラーと顧客、顧客間の適切な距離(Social distance)の確保等、絵にかいた餅のように公衆衛生上の配慮を徹底するということのようだが、これで顧客が来るのか否か(雰囲気が悪くなる、面白くない。
遊び、気晴らし、楽しみのために来ているのに・・という印象を抱かれる)という問題がある。
制約があれば顧客層の行動パターンは変わるかもしれない。
かつかかる制約がある場合、若い世代はカジノ等へ行くことを避け、他の遊びにいってしまうかもしれないということもありうる。
もっとも、米国の場合には、最初は、ルールは守られても、顧客はこれを遵守しないかもしれないし、ある程度の安全性は確保されていると判断される場合、なし崩し的にルールは守れなくなってしまうということは日常茶飯事的に起きている。
但し、遠方からの交通手段が制限され、車だけが来訪できす手段となると、どうしても顧客層は限られる。
国内外の航空機の移動や旅行が自由にできるようにならないと集客産業となる観光やエンターテイメントはビジネスとしての価値がどうしても薄くなってしまう。
カジノだけをとってみると一定の顧客層が戻るのは早いと想定される。
但し、MICEとかエンターテイメント・劇場・イベント等のカジノ外施設(Non-Gaming Amenities)は密な集客こそがビジネスとしての要となるため、どの段階で如何に段階的に元へもどしていくのかに関してはかなり慎重な判断が必要となりそうだ。

一方、この騒動を契機とし、新たな技術や新たな遊び方等従来考えられなかった様々な新機軸が志向されるかもしれない。
例えば既に下記等が議論の対象になっている。

  • テーブル、チップ、カード、ダイス等使用器具の電子化の進展:
    全ての使用器具を電子化し、できる限り非接触型の電子チップ、電子カード、電子ダイスを用いて電子的に賭け事をし、勝ち負けの清算も電子的に行えば、限りなく接触を避けることができる。
    顧客が変わる度に電子テーブルの上や顧客が触る箇所を除菌さえすればかなり安全性を高めることができる。
  • カジノ運営のデジタル化・システム化の進展:
    上記は既存の遊び方をできる限り変えずに、カジノの運営の前提をデジタル化、システム化することを意味する。
    制度や規制の在り方は別にすると、現在の技術でこれを実現することは可能である。
    かかる仕組みが顧客により認められるかは、過去は懸念があったが、コロナ後の世界では顧客の許容度は確実に高まると想定される。
  • 社会的距離に配慮する機械・テーブルレイアウトの再考:
    営業的には問題となるが、スロット等の電子機械の配置の在り方にも工夫をこらすべき時代が来る。
    余裕をもって社会的距離を取ることは、それだけ面積を必要とし、設置台数が減るか面積を大きく取らざるを得なくなる。
    新しいカジノレイアウトが考案されるかもしれない。
  • i-Gamingの更なる展開と発展:
    接触リスクが大きい伝統的な陸上型カジノ施設や賭博行為から、一挙にi-gamingの世界に消費者の行動が変わるのではないかという議論がある。
    確かに、スポーツブッキングやポーカー等限られたゲーム種や賭博行為に関しては、インターネットをツールとして利用する手法が確実に活性化する。
    但し、全てのゲーム種がネットにより代替され、伝統的な陸上設置型のカジノが淘汰されることはない。
    やはり、遊び方や楽しみ方が異なると共に、飲食やエンターテイメント等、カジノ外のアメニテイが充実している施設は、ネットの世界とは異なり、ヒトを呼び込む魅力をもっているからである。

(美原 融)

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