2023-09-11
225.スポーツ関係者の不正はどう防止できるのか?
スポーツ行為におけるいかさま、八百長等の不正行為とは何らかの要因・理由をトリガーとして、選手・監督・コーチ、関係者等が引き起こす行為になる。
ここに金銭的報酬が絡むこともあれば、非金銭的な理由により生じることもある。
当該スポーツが外部で公認された賭け事の対象になっている場合、外部組織と内部のスポーツ関係者が共謀し、不正や八百長をするリスクは増えるもしれない。
勿論不正行為は賭博行為とは関係のないスポーツ関係者固有の理由・要因でも起こりうることはある。
また、もしかかる事案が起こればスポーツ界としても信用失墜、ファン激減等を引き越しかねず、社会的・経済的損失は計り知れない。
よってかかる行為をできうる限り防止・抑止する手立てと行動と配慮が必要になる。
不正・いかさま・八百長等は、複数の選手がチームでやるスポーツに関しては単純にはできにくい。
一人ではできることが限られ、目立つからで、確実に複数の人間が絡まなければ効果的な不正は無理だからである。
逆に、関係する人数が増えれば増えるほど事が露見するリスクが高まるという矛盾した状況にもある。
一方、一人ゲームとなるスポーツ試合の場合には、問題が露見しにくいというリスクがある。
不正行為は外部で行われる賭博行為に関連するものと、賭博行為とは全く関係のない内部関係者の理由から生じるものに二分できる。
前者に関しては様々なモニタリングや監視の仕組みがある程度機能しており、疑わしい行為は特定できるようになってきている。
逆に後者に関しては、事が金銭に絡まない場合、問題を特定化・摘発することは難しいという状況にあることは間違いない。
ではいかなる手段や措置がなされているのであろうか。
様々な手段の組み合わせや情報の共有等のネットワーク化が、かかる不正行為の発生を抑止している側面がある。
例えば下記のようなものがある。
✓→ガバナンスコードの徹底、厳格な倫理規定:
不正行為への参画はスポーツ関係者に取り、業界永久追放という厳格な処罰規定(制裁措置)を設け、悪事に参加することはペイしないという認識をさせることが、関係者の規律を保持することに有効になる。
スポーツ関係者が不正行為に直接・間接的に関与することがなければ内部的な不正は成立しない。
✓→選手・監督・コーチ・審判員、チーム・リーグ関係者等スポーツ関係者に対する不断の教育プログラムの実践:
いかなるシチュエーションの場合、外部からの不正への誘引が生じるのか、どう対応すべきか等、スポーツ関係者に対する教育プログラムを設け、これを不断に実践しつづけることが有用であることが各国の事例や慣行から明らかになっている。
✓→スポーツ関連内部関係者によるチーム・リーグに対する情報提供制度や密告制度:
実際にスポーツに関わる人達が、スポーツ組織の健全性を維持するために、内部的な相互監視を実践することが、不正行為を効果的に抑止することに繋がる。
おかしな行為は目立つものであり、内部的な情報遺漏が問題の発生を未然に防ぐことに繋がる。
✓→スポーツ団体・リーグ・組織内における廉潔性モニタリングユニット(Integrity Monitoring Unit)の創設と外部組織との連携:
主要な国際スポーツ団体や組織、米国のスポーツリーグ等は自組織内部に廉潔性モニタリングユニットという組織を設け、関連する試合に関し、外部組織と連携しリアルタイムモニタリングを実施する体制をとっている。
賭け金行動から疑わしい行為が散見される場合、直ちに対応できる組織を構築していることになる。
✓→スポーツデータ収集・分析会社との連携によるスポーツブック事業者の顧客の賭け金行動のリアルタイムモニタリングの実施とこれら主体との連携・協力による早期警戒情報システム(Early Warning System)の実践:
スポーツデータ収集・分析会社は主要ブックメーキング事業者顧客の賭け金行動をリアルタイムで全数把握し、これをAIにより全数モニタリングすることで、当該事業者やスポーツリーグ等に対しおかしな賭け金行為を特定し、関連主体に対し、早期警戒情報を発出し、関係者の注意を促す体制が実践されている。
スポーツの不正行為が賭け金行動に絡む場合、必ず大きな資金量が通常のトレンドとは異なる動きをし、特定化しやすい状況が生まれるため、これをシステム的に把握することになる。
✓→モニタリングに関与する主体間のネットワーク化・相互情報提供・不正行為の早期摘発と賭け金行動の部分的停止:
上記のように複数の主体が様々な角度からスポーツ試合の展開とこれに関わる賭け金行動を常時モニタリングし、お互いに情報を提供しあい、共有する体制がとられている。
顧客の賭け金行動という観点から、様々な情報を集中的に分析することで、おかしな行動や不正行為を把握できるため、単純に悪事をすることが難しい環境が成立していることになる。
情報技術の発展とデジタル化の進展は、賭け金行動のベースとなるオッズの設定やこれに伴う顧客の賭け金行動の膨大なリアルデータを瞬時に解析し、疑わしい賭け金行動を特定化し、これをリアルタイムでスポーツ関係者に通告する仕組みを可能としている。
スポーツ試合の不正行為は完璧にこれをなくすことは難しいかもしれないが、不正を仕組み、外部のスポーツブッキングでこれを活用し、悪事を働くことはできにくくなった状況にあることは間違いない。
(美原 融)