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2026-03-30

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357.イベント予測市場:戦争も賭けの対象(War Betting)!

殺人、戦争、テロ等の行為を賭けの対象にすることは倫理的には大きな問題だ。
これらの行為を助長しかねないと共に、人間が起こす行為である以上、これが起こるという情報を知りえた内部者によるインサイダー取引をも助長しかねない側面があるからだ。
米国では公益に反する事象として法的にはイベント予測市場の対象にはできないことになっている。
もっともこれは米国内で行われるイベント予測市場の問題であって、例えばオフショアから仮想通貨を用いたオンラインプラットフォームであるPolymarket International等から提供されるイベント予測市場には規則も何もない。
もっとも米国人であっても一種のトンネルであるVPN(Virtual Private Network)を利用すれば米国内から(違法であろうがなかろうが)これらプラットフォームにアクセスできてしまうから、サイバー世界では国内規制等あまり意味もないのだ。

さて米国・イスラエルによるイランとの「戦争」だが、この先何が起こるかわからない事象は予測市場の人気を呼ぶ格好の題材だ。
事実戦争勃発前からKalshiやPolymarket等の予測事業者の取引量は通常の23%以上膨れ上がっている。
最大の人気素材となったのは「2月末迄に米国はイランを攻撃するか否か」というイベント予測だ。
攻撃する可能性はあっても、何時となるかはなかなか推測できない。
ところが攻撃が開始される71分前の予測可能性は僅か17%だったのだが、Polymarketにて攻撃直前迄に150以上のアカウントが4桁以上の賭けをし、正確にこれを当てている。
この内、Megamynanという偽名のアカウントは一人で8万7000㌦を賭け、この一発で何と勝ち金が535万㌦という天文学的な異常さだ。
とんでもない話で、どう考えてもこれは戦争の内部事情を知っている者によるインサイダー取引ではないのかという疑念があちこちから上がったのだが、オフショアからの規制の対象外のプラットフォームとなると、何ともはや手のうちようがない。
もっとも外電ではイスラエル警察が調査を始めたというニュースが時をまたずにでた。
さすがにイスラエルの諜報活動は早い。
内部情報をつかんでいる政府や軍隊関係者が一儲けをたくらんだに違いないが、そうなるとイスラエルか米国の限られた関係者しかいないということだ。
一方米国の大手イベント予測事業者であるKalshiは「戦争」、「殺人」等の禁句用語は使用していないが「ハメイニ師は二月末までに最高指導者の地位を退任するか否か」というイベント予測で、これだけで何と5400万㌦の取引総量だ。
どう考えてもPolymarketの予測と同じに思えるが 「殺人」・「死亡」等を示唆したわけではない、あくまでも合法的なイベントという理屈になる。
ところが実際に起こったのはハメイニ師を狙い撃ちにした精密爆撃で、殺人行為になる。
対象が死亡してしまえば、職につけないことになるが、退任とはいえない。
こうなると前提そのものが成立しなくうなり、賭け行為自体が機能しなくなる。
都合がいいことにKalshiのルールブックにはDead Curb Out規約(死亡例外規定)というルールがあり、対象が亡くなった場合にはその人のパーフォーマンスは意味がなくなるというものだ。
Kalshiはこれを宣言した。
要は賭け自体、勝ちも負けもない、誰も顧客は損しないということで幕引きをはかった。
この戦争関連のイベント賭博は際限なく多く市場にでているのだが、どう考えてもインサイダー取引は存在する、また単純なイベントではなく、ことは国際紛争、戦争だ。
秘密作戦情報をもとに金儲けをするなど、機密遺漏一つをとっても国家情報安全上の大問題になる。
もし、仮想敵国がこの動きをトレースしていれば、攻撃のタイミングは敵にばれることになりかねない。
かつ倫理的にかかるイベント予測を賭けの対象にすることなどおかしいという意見も多い。
Polymarketのイベント予測でさすがにこれはないだろうと顰蹙をかったのは、「核爆発は12月末迄におこるか否か」「3月末?」「6月末?」というものだ。
大量殺人破壊兵器である核爆弾が何時中近東かイスラエルに落とされるかをイベント予測の対象にしているわけで、クレームが殺到し、このイベントは短期間で取り消された。
因みに「3月末?」の1㌦支払いに対し、Buy Yesが5.5㌣、Buy Noが94.8㌣の予想率、クローズした段階での取引量は83万㌦に達したことがデータとして残っている。
こうなると戦争もゲームのように遊びや賭けの対象にしてしまっている現実が浮かび上がってくる。

さすがにこれではクレージーだとして、米国連邦議会議員も規制の対象にすべきだろうという声があがってきた。
既に連邦上下両院に出された様々な規制・禁止法案は3月末の時点で6つもでてきた。
単純禁止から、自主規制、選挙で選ばれた者や政府職員等の参加禁止等様々な案がでてきた。
一部下院議員は記者会見でホワイトハウス及びその関係者も確実に参加している国家的スキャンダル、即禁止すべきと手厳しい。
本当だろうか?トランプ一家ならやったのかもしれない。
もっとも連邦議会に出される法案も審議されるかもわからず、極めて中途半端な内容でしかないものも多く、単に注目を集めるためだけなのかもしれない。
大手事業者KalshiもCEOがSNSでインサイダー取引の監視、防止、自己規制を強化するとともにイベント対象に関してもより明確なルールを設けることを明言した。
一方規制機関である米国商品先物取引委員会(CFTC)も、イベント予測契約に関してはより明確なルールを設けるべき時期にきているとして、2026年3月3日にホワイトハウス情報規制局(OIRA)に事前規則策定通知(ANPR)を提出したことを表明し、3月時点で予測市場に関する新たなガイドライン(職員Advisoryの形式をとる)を公表した。
内容的には規制色は薄く、事業者を抑止させるものではない。
時間の問題で規則案はパブコメに付される模様だ。
インサイダー取引に関してはより厳格なルールを設けるということだが、CFTCは、規則は事業者の創意工夫を損ねることはしない(Prescriptiveにはしない)としており、対象イベントの事前報告・チェックや事業者の自主規制が主になるのではないかという意見も多い。
これで問題が解決できるとは到底思われないのだが・・

(美原 融)

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