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2026-02-02

349.違法オンライン賭博規制:国境を超える連携の試み

国境を越えてサイバー世界から一国の国民に向けて提供される違法オンライン賭博を遮断したり、国民をその悪影響から効果的に守ったりする完璧な枠組みは存在しない。
サイバー世界を律する国際的な枠組み等も存在しないし、技術やシステムは常に進化し、高度化し続けており、どこかにループホールが生まれてしまうからだ。
状況は先進国でも、途上国でも同じで、各国いずれもが複数の手法を組み合わせて、国民に対する悪影響や被害を極小化する努力をしているというのが実態だ。
国境の壁等無視して行動できる主体に対し、各々の国がバラバラにその国独自の防御態勢をとっているわけで、これでは制度間に隙間も生まれるし、極めて非効率、必ずつけこまれる。
この意味では誠にこっけいな姿だ。
戦う相手は同じなのだから、共同戦線を張り、同じ戦略・戦術・手法にて相手を封じ込めた方がどう考えても効果は高くなる。
ところがこれが簡単に実現できないのが、違法オンライン賭博の世界なのだ。

一方、やはり何らかの国際的な協調・連携の枠組みが必要ではないのかという動きが一部欧州主要国で生まれつつある。
2025年11月12日にドイツ、オーストリー、フランス、イギリス、イタリア、ポルトガル、スペインの7ケ国の賭博規制機関がマドリッドに集まり、違法オンライン賭博規制に関する連携・協力のための会議が開催された。
これら主要国の賭博規制機関が協調して会議に臨むのは珍しい。
発起者はスペインの規制当局であるDirectorate General for Gambling Regulation(DGO)の様だ。
目的は各国バラバラの政策や努力を同じ方向で一致団結すれば、各国内的にも、国際的にも違法オンライン賭博の摘発や各国の法遵守がより実現しやすくなることにある。
この議論の結果、7ケ国規制機関の間でCooperation Agreement(協力協定)が締結された。
一種の各国賭博規制機関による共同声明に近いが、協力・連携に関し、三つの柱を規定している。
即ち、①免許を取得していない違法オンライン賭博事業者並びに新たなデジタルネットワーク諜報に関する情報交換、②オンラインプラットフォームに対し、違法オンライン賭博広告を排除させるための協調した行動、③違法オンライン賭博事業者を特定し、調査し、制裁する手法の欧州内共同、共通したアプローチの実践になる。
単なる情報交換かと思うかもしれないが、今まで何もしていなかったのから、これでも大きな前進だ。
違法サイトの特定や調査・制裁等に関し各国の規制機関が共同して一致した行動をとれば、その効果は極めて大きくなる。
これも具体的な行動への第一歩だろう。
尚、この協力協定の趣旨は国境を超える脅威である違法オンライン賭博の対策として2025年のEUのProtect EU Strategy(欧州域内安全保障戦略)にもかなう。
尚、EU内では賭博のコンテンツをEU Digital Service Actに含め、新たなマネーロンダリング対策機構による法の執行を考慮することが議論されている。
その他欧州消費者保護規則、反マネーロンダリング規則、一般データ保護規則等、技術的に関係する側面も多く、どこかで調整が図られるのだろう。

ほかにも国際連携や地域連携の動きはある。
IAGRA(国際ゲーミング規制者協会)では2025年6月の会合でもこれが議題となった。
今や2024年統計値では違法オンライン賭博はEU27 国 iGaming全体の71%を占め、この消費総額は800.6億€に相当する。
この場での議論・結論に拘束力はないが、合意された事項としては①違法オンライン事業者に関する規制当局間の情報交換、②デジタルプラットフォーム運営事業者並びにソーシアルメデイア・ネットワーク運営事業者に対し、彼らの管理メカニズムを強化し、違法な広告・宣伝等の排除を要請すること、③違法オンライン事業者の特定、調査、刑罰の賦課に関し、経験とベストプラクテイスに関する情報を共有すること等になる。
やはり違法事業者に関する情報収集の共有、捜査や摘発の手法等につき共通の考え・手法があった方がより効果的な法の執行に繋がるという共通理解だろう。

賭博法制度が州毎にバラバラな米国においても各州の司法省長官や各州賭博規制機関の間でも個別に情報交換したり、様々な州の先行事例を参照したり、あるいは連邦政府に対し、統一行動をとったりしている。
後者の例は36州の州司法長官が漣著した連邦司法長官に対する違法なオンライン賭博としてのSweepstake等に対する国としての何等かの法執行の枠組みに対する要請等だ。
現行制度の枠組みの中で一体何ができるのかということだが、意外と現実的な施策が議論されている。
例えば国内に拠点を保持する違法事業者サイトに関しては、技術的協力事業者や支払い関連ベンダーに法執行により圧力をかけることだ。
海外からの違法サイトに関しては州際間・連邦政府による協力を推進するより方法はない。
但し、①米国内関連資産・銀行口座・ドメイン名の差し押さえ、②違法サイトのビジネスメカニズムを閉鎖に追い込む行動、③米国市場に対するアクセスの遮断、④関係責任者が米国に入国した際の拘束等が議論の棚にのっているようだ。
こんなことできるのかということだが連邦RICO法(組織敵犯罪摘発法)の広義の解釈やUIGEA法(連邦違法インターネットゲーミング執行法)等を根拠に関係責任者を拘束するなど現実に行われた経緯もある。
勿論現実問題としてどの程度の法の執行がなされるか、本当に執行されるのかは別問題だ。
一方、違法オンライン賭博も犯罪組織やマネーロンダリングに絡んで米国内組織や個人が関与することもあり、これが犯罪摘発・逮捕に繋がっていることも現実的には多い。

上記はいずれも萌芽的な試みにすぎず、完璧な考えともいえない。
国境を越えてくる外部からの脅威に対しては、国境を超える国や地域同士が連携・協力しなければ太刀打ちできないということの認識がようやく共有されつつあるのだろう。
但し、これは解決のための一歩でしかない。

(美原 融)

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