2026-03-16
355.米国スポーツイベント予測市場の動向③Super Bowlの顛末
アメフトの全米チャンピョンを決める2月9日のSuper Bowl(第60 LX回)は米国人にとっては特別のお祭り騒ぎみたいなものだ。
全米を含む視聴者数は何と約1億2500万人。
家族や友達同士でTVを囲み、ビールを飲み大騒ぎをする。
どちらのチームが勝つか、どのくらいの点数差でかつのか、個別のプレーヤーのパーフォーマンスとか等をリアルタイムで試合を見ながら推測しあうのも楽しいものだ。
仲間内でスポーツブックが流行るのにはかかる背景がある。
勿論高額な賭けではなく、あくまでも庶民の娯楽としての賭け事でしかないのだが、少額でも何回もあるいは様々な賭け方を楽しむということなのだろう。
Super Bowlは一日だけのイベントだが、この一日だけで巨額の金額が賭けの対象となった。
AGA(米国ゲーミング協会)発表ではこの試合での合法免許事業者の顧客賭金総額(Handle ハンドル)は17.6億㌦に達したという。
一方、イベント予測市場では様々なプラットフォームを総計すると総額12億㌦の取引量~売買の総計~になったという(Bloomberg情報)。
これ以外に、海外から違法に提供されるオンラインスポーツブックのプラットフォームもあるのだが、彼らがどのくらいのハンドルとなったのかの統計値は存在しない。
かつ、ややこしいことに州の許諾を得たスポーツブック免許事業者のハンドル(賭け金総額)とイベント予測市場参加事業者の総取引量(Trade Volume)の単純比較はできにくい。
両者の単純比較ができないのは、数値の性格が異なるからだ。
スポーツブックの場合のハンドルとは顧客がリスクをとる賭け金で、オッズを購入すれば、これは試合の結果が分かる迄固定され、変化しない。
一方、イベント予測契約の総取引量とは、顧客が一端ポジションを購入した後に、オッズが変化したときにこれを売却でき、この場合、買いと売りの両方が取引量として計算される(リスクをとった賭けた金が$100でも取引量は倍の$200になりうる。
平均15分単位で同一顧客が売り買いを繰り返すという数値すらある。
かかる行動が取引総量を押し上げることになる)。
大手事業者Kalshiの2月9日の取引量は何と$8.71億㌦に達したという。
一方同日のネバダ州のみの公式ハンドルは$1.338億㌦でこれは2016年以降最低の数値となった(ネバダ州ではオンラインスポーツブックへの参加は陸上設置カジノへ行き、対面で申請・登録して初めてできるという入口の手間がかかる。
これに対し、スポーツイベント予測市場はオンラインで手軽に申請登録できるため、顧客はイベント予測市場へ流れたということだ。
おまけにラスベガスストリップ大通りの最大のビルボードに、「Super BowlはKalshiに、すぐできる予測市場に」等ネバダ州規制当局の顰蹙を買うような広告を出す有様だ)。
もっともイベント予測市場の対象は試合の結果予想だけじゃない。
マイクロイベントというが試合中の一部の選手のパーフォーマンスすら対象になる。
こうなるとスポーツブックと何ら変わらない。
更には試合ではないイベント予測もあるわけで、例えば試合前のコインのトスは表か裏か、ハーフタイムのショーの有名人ゲストは誰か、勝者のコーチにかけられるゲ―トレードの色は?・・・はTVのコマーシャルにでるか否か等一つのプラットフォームに何と数百のあらゆるイベント予想が並ぶことになる。
全くどうでもいいような話なのだが、これがスポーツ試合の結果予想並みに人気が高い予想当てとなっているのだから面白い。
所詮お祭り騒ぎなのだ。
但し、問題を残す事象もうまれてしまった。
グラミー賞受賞者であるBad Bunnyのハーフタイムショーの有名人ゲストのパーフォーマンスに係るものだ。
ラッパー兼歌手でもあるCardi Bがゲスト枠ででることは決まっていたが、「彼女は舞台上でパーフォーマンスをするか否か」という予想だ。
Cardi Bは出るには出たがBad Bunnyの後ろでほかのダンサーとともに踊っていただけだ。
歌を歌ったわけでもないし、ほかに何かしたわけでもない。
これパーフォーマンス(演技?)なの?という懸念が生じ、ハーフタイムショー終了30分後までオッズが上がったり、下がったりを繰り返し、大混乱に陥ってしまった。
何がパーフォーマンスなのかという規則はあるにはあるのだが、曖昧さが残った判断基準で、どっちにもとれるとして市場が混乱したわけだ。
この場合、提供したKalshiが間に入り取引が中断され、規則6.3C(結果が曖昧な場合、取引停止前の価格で清算)に基づき清算ということになった。
KalshiはYesで$0.26、Noで$0.74の払い戻しだ。
ところが全く同じ事象をイベント予測の対象としたPolymarketでは、上記トレンドと結果は全く逆でYesは$1、Noは$0の支払いとなってしまった。
プラットフォーム毎にオッズが逆となったわけで、これでは顧客も大混乱に陥る(因みにこの事象のKalshiの取引量は$47.3M、一方Polymarketの取引量は$10Mとのことである)。
如何なる要素が実現した場合、事象が生じたことになるのかが、曖昧な場合、予測契約市場ではかかる混乱も起こりうるということなのだろう。
一方、顧客にとってみれば大きな不満・不平をもたらしたことも間違いない。
尚、このBad Bunnyのハーフタイムショーはサトウキビ畑を模したステージでラテン調、殆どがスペイン語となり、トランプ大統領は「偉大な米国にとりはずべきこと」、「一体何をしゃべっているのか全くわからない」と酷評の有様だ。
グラミー賞受賞時にも差別的な発言をした大統領である。
ショーの殆どがスペイン語であったため、チンプンカンプンであったのであろう。
試合そのものはシアトルSeahawksがニューイングランドPatriotを29対13で下すという予想通りの一方的な展開となり、息をのむ試合の展開とはならなかった。
いずれにせよ一日としては史上最大のスポーツの賭け事になったことは間違いない。
伝統的なスポーツブックだけではなく、スポーツイベント契約の存在と成長が市場全体を大きくしている。
3月には全米最大級の大学スポーツイベントとなるNCAA男子大学バスケットボールトーナメント(March Madness)が開催され、この勝ち上がり予想は毎年大盛り上がりになる。
もっとも全米大学体育協会(NCAA)はNCAAのロゴ、March Madnessの呼称を利用しないことをKalshi等主要イベント予測事業者に要請した。
賭けの対象にするなとまではいっていないが、学生スポーツが利用されることに関しては反発もあるのだ。
さて、これはどう対応するのであろうか。
(美原 融)