2025-11-10
337.ゲームと賭博⑥:Free to Play(F2P)Loot Box②
Loot Boxは世界中のゲームの世界では当たり前の慣行として様々なゲームに取り入られてきている。
更には段階的に仮想通貨やNFT(Non Fungible Token、ブロックチェーン上で発行する所有権・財産性がある非代替性トーケン)が報酬として取り入れられ、二次市場での売買・交換・現金トレード(RMT, Real Money Trade)等も活性化することが現実となってしまった。
ゲーム内に留まらず、リアルな世界で金銭に交換できる仕組みが市場にて成立したことが問題を複雑化することになる。
限りなく賭博の世界に近くなってしまうからだ。
ゲーム市場は既に巨大化した市場となっているのだが、制度や規制は国によって異なり、国毎にバラバラで整合性はない。
例えば、①Loot Boxを単なるゲームとして規制もせず市場の展開に委ねる、②あるいはこれを賭博行為とみなし禁止の対象とする、③あるいは賭博とは判断しないが、消費者保護を目的とし、一定の規制の下で規制の対象とする等のアプローチがあり、様々だ。
規制の度合いも厳格、緩い等の差異があるが、これは賭博法制や賭博行為に関する法制度上の政策は各国とも同じではないため、現実をどう評価し、如何なる政策を取るべきかに関し、意見が異なるからである。
これをどう扱うかという議論は2017年以降様々な国で生じてきた。
Loot Boxの本質は無料のゲーム(Free Play)をマネタイズ(Monetize)する一つの手法でしかないのだが、混乱を招きやすい要素は多い。
EUでは賭博法制はEU法の範疇外となり、Loot Boxに関しても統一的な規範はない。
但し、2020年7月欧州議会の内部市場・消費者保護委員会(IMCO)が作成し、採択された調査報告書(「オンラインゲームにおけるLoot Boxと消費者、特に若年層への影響」)では、賭博か否かという狭い範囲の議論ではなく、様々な既存の欧州指令(消費者権利指令2011/83/EUや不公正商慣行指令2005/29/EC等)が存在する消費者保護の観点からLoot Boxを規制すべきという方向性を打ち出している。
これがEU内部での共通認識でもあり、規制の方向性としては、確率の開示義務、未成年者の排除、 アルゴリズムの透明化、デフォルトで課金機能をオフにする提案等になる。
勿論国によりその適用の在り方は千差万別だ。
ベルギー、オランダでは2018年に広義の定義としてLoot Boxは法的には賭博の一種としてLoot Boxを全面的な禁止の対象にした。
いずれもリアルマネーで購入でき、ランダム性があり、外部で価値をもつアイテム等は既存法の解釈として賭博でしかないという判断をとっている。
もっともオランダは2022年の訴訟案件でLoot Boxの報酬はゲーム外で価値をもたない限り、賭博とはならない旨の判決が出され、方向性が不透明になった。
但し、今度は2023年に議会は再度全面禁止の法案を提出しており、今後賭博法/遠隔賭博法改正の動きの中でLoot Box禁止規定が設けられる公算が強い。
これら両国はLoot Boxに対し厳格な態度をとることで知られている。
スペインの消費者庁は2022年に未成年者の保護を目的としたルートボックス規制法案を議会に提出し、2023年に可決されている。
この内容は ランダム報酬型のゲーム内購入に年齢制限を導入(18歳未満への提供禁止)、 透明性の義務化(顧客が購入前に報酬の確率を確認できるようにする)、広告規制、自己排除・制限機能の導入等で、全面禁止ではなく、規制と透明性を強化するという中間的なアプローチになる。
英国規制当局(BGC)は当初はLoot Boxは報奨がゲーム内に限定され、リアルな金銭取引にならない限り2005年賭博法の賭博の定義にはあてはまらないとしていたのだが、2022年7月に全面的に認めることを断念し、消費者保護の観点から未成年の参加は禁止、どうあるべきかに関しては業界の自主規制に委ねることを当面の方針とし、曖昧なスタンスをとったままだ。
消費者保護の規制はするが、基本は業界の自主規制に委ねるという緩い考え方になる。
一方フランスでは消費者保護のため技術的・運用方法等一定の規律は設けるが、一律にLoot Box自体は賭博とはいえないとする独自の考えをとっている。
EUではないがスイスでは、Loot Boxはギャンブル法上賭博行為として、免許・規制の対象で違法な提供行為はオンライン賭博と同様の罰則規定が適用されるという厳格なスタンスを保持している。
この意味ではオランダ、ベルギーに近い。
その他の国では、オーストラリアでは、未成年者保護、依存症への対応策として2023年Guideline for the clarification of Computer Gameに基づき2024年9月の施行分類基準に基づきLoot Boxを一つのゲームとして類型化し、規制を強化する介入方針をとっている(賭博類似ゲーム:18歳以上年齢制限、Loot Box ゲーム;15歳以上年齢制限)。
中国では厳格に禁止だ。
シンガポールでは現実世界で実際の価値を持たないアイテムのLoot Box内での購入は賭博ではないが、顧客がゲーム内外で金銭と交換する場合は賭博と見做すとう規制当局見解がある。
韓国では2017年以降、法律ではなく業界自主規制として確率開示等を取り決めたのだが、全く効果がなく、2023年に法律(ゲーム産業振興法)を改正米し、確率の開示義務、虚偽情報の規制強化、サービス停止後30日以内の料金返還義務等消費者保護の強い規制を取り決め、2024年以降法の執行を厳格に実践しつつある。
米国では単なるゲームとみなす州もあれば、賭博行為として禁止する州もあり、全くのバラバラだ。
一般的な各国の認識は、賭博か否かの議論を横においても、やはりLoot Boxが賭博(Gamble)へのGateway(入口)になっているというものだ。
例え賭博行為とはいえなくとも若年層を保護する施策や依存の症状への対策、過剰な広告規制や情報開示等の消費者保護施策の必要性はや各国ともほぼ共通の認識にあるともいえる。
これら各国の状況はゲームの世界と賭博の世界との境界が解り難くなる状況が生じていることを示唆している。
(美原 融)