2025-11-17
338.ゲームと賭博⑦:Free to Play(F2P)Loot Box③
所与のゲームがLoot Boxと見なされるか否かには一定の要件がある。
①参加に際し、アイテムやゲーム内通貨(仮想通貨)を現実の金銭で購入すること、②購入前に顧客は中身を解らず、中身が得られる仕組みは確率により決定され、ランダム性・偶然性があること、③開封することにより金銭的価値やゲーム内で有用性を持つアイテムを報酬として取得てきること等になる。
勿論ゲームのデザインや構成によりこれら要素の一つでも欠ければ単純なゲームでしかないということだ。
一方、これら要素の全てを満たす場合、当該ゲームはLoot BoxあるいはLoot Boxに類似的なゲームとみなされてしまう。
こうなると国の政策や制度次第では禁止あるいは規制の対象になることもある。
一部の国では上記に加え換金性の有無(即ちゲームで取得したアイテムがゲームの外(二次市場)で現実の金銭価値を持ち、売却(換金)できる仕組みが存在するか否かを問題視する。
これは対価、ランダム性、換金性の三つの要素がそろうと賭博あるいは賭博行為に限りなく近いゲームと判断されるからだ。
我が国でもゲームの開発・提供に際しガチャの要素を含む場合、提供企業は賭博罪を含め、法規制の対象とならない様々な工夫をこらしたしているのが実態となる。
もっとも現実世界ではブロックチェーン技術を利用し、報酬として得られるアイテムがNFT(非代替トーケン、Non-Fungible Token)となるゲームが人気を博するようになってきて、事態を複雑化させている。
NFTが報酬になると顧客が固有のNFTの所有権を持てる仕組みとなり、市場価値が生まれ、ゲーム外での取引が可能となる。
NFTが二次市場で売買の対象になる場合には、偶然の仕組みにより経済的利益の得喪が生じることを意味し、賭博行為に該当する可能性があるとする意見もでてくるわけだ。
我が国ではガチャにNFTによる報酬を前提とする場合には、仕組み次第で賭博罪、景品表示法(景品の過大表示や消費者を誤認させる行為の規制)、金融商品取引法・資金決済法(NFTが実質的に金融商品とみなされる場合、登録や開示義務)等に抵触する可能性はある。
我が国でもNFTカードをゲームの報償としたり、ガチャ的な仕組みでNFTカードの収集を競わせるカード販売が生まれている。
スポーツNFTカードとはプロ野球、Jリーグ、Bリーグ等の関係主体が発行するNFTカードで選手のハイライト映像や写真をNFT化し、ファンに売却するものだ。
中にはレアアイテムもある。
この仕組みは米国で大流行しているプロスポーツ選手のNFTカードに類似したゲームでもあり、(同じではないのだが)米国の仕組みを参考として理解することが理解を早める。
これはモーメント(Moment)と呼ばれる選手のプレー動画等の NFT を、無作為に 複数抽出した上でパッケージに入れ、会員ユーザーに販売するという仕組みのLoot Boxだ。
モーメントはその希少性によって種類が分けられ、各パッケージには、どの種類の モーメントがいくつ含まれるかを明示してある。
これによりパッケージの価格は異なり、安いパッケー ジで 9 ドル、高いパッケージでは999 ドルの価格で販売されている。
尚、顧客はパッケージの購入前に当該パッケージに含まれる個々のモーメントを確認することはできない。
一方顧客は、二次流通市場において、自身の保有するモーメントを転売し、換金することができる。
取引価格は、ユーザーが自由に設定できるが、仲介する事業者は転売の際の取引金額の一定割合(5%程度)を手数料として徴収する。
また顧客は、二次流通市場においてパッケージ販売をすることはできない。
複数の NFT を中身の分からないパッケージ形式にしてランダムに販売する場合、NFTの一部には、稀少性があり、高額で転売可能なものが含まれているため、高額で転売可能なNFT を取得できる。
但し高額で転売可能な NFT を取得できるか否かについて、購入者の間に「勝ち負け」が生ずることは否定できない。
更に販売者自身が二次流通市場を併せ設けている場合には、販売行為後の転売行為が織り込み済みといえるため、なおさら「勝ち負け」が経済的な利得・損失として現実化しやすくなっている。
米国ではLoot Boxを規制する連邦法はなく、州毎に禁止されたり、認められたりして規制の事情が異なる。
これは賭博の構成要件に該当するか否かに関しての異論があり、収拾がつかないためだ。
未成年者保護・消費者保護・確率表示義務の必要性等も議論され、業界団体やプラットフォームによる自主規制が行われているのが実態となる。
勿論我が国のスポーツNFTカードの仕組みは米国と同じではない。
但し、このNFT のパッケージ販売や二次市場での売買、利害関係者の関与の在り方について賭博罪の成立可能性を指摘する見解が散見されてきたことが問題の端緒になった。
この問題は消費者庁が社会問題視する前にまず業界団体や法曹界が動き、2022年9月にはスポーツエコシステム推進協議会が「スポーツコンテンツを活用したNFTのパッケージ販売と二次流通市場の併設に関するガイドライン」を策定し、2022年10月には複数の民間事業者団体が協働して「NFTのランダム販売に関するガイドライン」を設け、一定の自主規制の枠組みの中で消費者保護対策を含めた対応が民間主導でなされている。
勿論これは民間の議論であって、警察当局が如何なる判断を示すかは解らず、今後現状の慣行の問題性が指摘されるリスクはある。
尚、政治レベルでも自民党のデジタル社会推進本部が「NFTホワイトペーパー案」を公表し、NFTの制度化を志向する動きもある。
この問題が大きくならなかったのは米国と異なり、日本ではNFTカード自体の人気が失速し、あまり売れなくなってしまったためだ。
スポーツ関連賭博や様々なゲームあるいはサービスに関し、未だ日本は発展途上でもあり、文化や慣行の差もあるためだろう。
NFTを様々な場面で活用するゲームは今後ともゲーム世界での主流になるかもしれず、問題が再燃する可能性はまだある。
(美原 融)