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2025-09-29

331.オンラインカジノ規制:デジタル時代の運営・規制

オンラインカジノの特徴は顧客毎の賭け金行動のデータログを正確に記録できることにある。
(まともな制度や事業者の下では)顧客が顧客勘定を開設する場合に本人確認や年齢確認等が必要とされることが通例で胴元は初めから一定の個人情報を把握し、個人の賭け金行動も正確にトレースできる環境にある。
これに伴い事業者側もDX化しているわけで、個人情報保護に配慮しつつ、AIを活用し、個人の賭け金行動を把握、分析、評価した個別マーケテイングやプロモーション等に活用したりする。
顧客の名前を知らなくとも、AIやシステムがビッグデータから顧客の過去の行動を比較・分析・評価し、顧客の趣向に応じた最適のマーケッテイング戦略をとることが可能になる。
オンラインの場だけではなく、陸上設置型カジノにおいてもAIが実装段階にある。
スロットマシーンはシステムとして各機械の行動を把握しているが、顧客がポイントを稼ぐためにロイヤリテイ―・カードを遊ぶ前に登録すれば、すべて個人の賭け金行動として紐づけできる。
テーブルゲームもスマートテーブルが実用化しつつあり、RFIDチップや特殊印刷カード、AIカメラによる個人映像把握等の技術ツールを組み合わせることにより、個人の賭け金行動を個人に紐付け、把握できる仕組みが導入されている。
これにより例えばバカラ等では勝ち負けの判定、誰が勝ち、Winの金額判断等もシステムが提供し、デイーラーの判断や計算は一切不要になる。
確実にゲームの所要時間を短縮することができ、顧客クレームもなくなり、デイーラーやフロアパーソン、ピットボスの負担や役割も減っていくことに繋がる。

もっとも蛇の道は蛇で、悪い事をする人達もAIを用いて、違法行為をする輩も出てきたことが知られている。
例えばオンラインカジノで最初に口座を設ける場合のIDチェックを偽造データ、義損写真、映像等でわからない様になりすましてしまうというものだ。
いわゆる事業者のKYC(Know Your Client)チェックを回避し、IDチェックを逃れ、一端口座を作ってしまえばここからマネロンや様々な違法行為ができてしまう。
これに対抗できるAIで動かすIDチェック手法も開発され、すでに実践に用いられているという。
よってAIにはAIを用いリアルタイムでID詐欺を特定化しようというわけだ。

顧客の賭け金行動のデータを把握できるということは、より前向きな施策としてResponsible Gamblingへの対応としてAIを活用できることをも示唆している。
この分野で先駆的な商品を開発し、提供し始めたのがデンマークのスタートアップMidway AIが提供するGame Scannerという商品だ。
顧客が持つ膨大な顧客データベースをAIで分析・解析させ、これら顧客の賭け金行動パターンより①殆ど低いリスクの顧客、②リスクは低い顧客,③中間的なリスクの顧客、④リスクの高い顧客、⑤極めてリスクの高い顧客の5種に分類し、これら分類に基づきビッグデータから顧客を類型化しつつ、神経科学と先進的な(脳の活動を神経画像として把握する)神経画像スキャン技術を活用し、AIが問題ある賭博行為の生理学的プロセスを特定し、損失を追う顧客行動、異常な資金預託行動、賭け時間等のデータを分析する。
危険があると判断された場合、AIシステムが①事業者に対し適切な警告を行うとともに、②顧客に対する自動的なコミュニケーションを実行する。
警戒サインを見つける正確度は87%以上というから驚きだ。
一方システムだけにまかさず医療専門家のパネルが監視し、チェックする体制をとり、システムを補完する役割を担っている。
顧客が危険あるいは異常な行動をとろうとしていたり、危険な領域に入りつつある段階でシステムが介在し、注意を促したりするとともに、必要な場合には人間が介在することになる。
考えとしては顧客に直接介在するタイミングを経験や感ではなく、AIを用いてより効果的、合理的に判断する仕組みを実現しているともいえる。
デイーラーを教育・訓練して、顧客の異常行動を判断する行為はAIやシステムで代替できるわけだ。
また事業者はリアルタイムでデータベースの解析情報にアクセスできる仕組みが併用されている。
豪州のCrown Casinoはこのシステムを全面的に採用することを決定したとのことだ。

このほか賭博行為の一部にAIやマシーンラーニングの技術を用いて、個人の預託金拠出の行動が過去の典型的なパターンと矛盾する場合、システムが動き、①預託金設定を見直すように顧客に促すプロンプトがでたり、②預託金額を減らすことを推奨したり、③顧客に対し、任意となるが、預託金上銀設定の推奨をしたり、④自分の消費行動を検証するために別に提供されているツールを用いることを推奨したりする仕組みが実際に稼働している(Fan Duel社が全米のスポーツブックにて顧客に提供しているReal Time Check Inと呼ばれるシステム)。
顧客が賭け金行動にのめりこむ兆候は預託金額を吊り上げたり、頻繁に預託したりする行為であることから、データベースから顧客の異常な行動を特定し、システムが介入し、顧客に注意喚起するという仕組みになる。
勿論これが機能するか否かは顧客次第ということになってしまうのだが、同時平行的に人間が介在できる仕組みにしたりすることにより、一端思いとどまらせる効果はあるのではないかとも思える。

このように賭博提供行為のDX化は、顧客の行動をAIやシステムがデーターベースとして把握し、顧客の異常な賭け金行為を特定し、これを抑止するツールとして用いられつつある。
我が国では顧客の個人情報の一部や行動履歴をAIやシステムが捕捉することに関しては感情的な反発が強いかもしれない。
但し、Responsible Gamblingの慣行にAIを活用する試みがより一般的に採用されるようになるのは時間の問題だ。
これにより規制の在り方も、運営の在り方も従来方式とは異なる考え方を採用せざるを得ない時代も近いのではないかと思える。

(美原 融)

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