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2021-04-07

79.カジノ免許取得前に必要となる契約の認可 ② 方向性?

ではカジノ免許取得前の時点で重要契約の認可が必要となる場合、どうすればよいのだろうか。制度上想定される手順と実務上の手順がうまくかみ合わない典型的な事象なのだが、制度は制度と杓子定規に強弁した所で問題は解決できそうもない。法令にもパブコメの対象となっている規則案にも明確な手順の記載はない。制度と実務の間にギャップがあることになり、何等かの考え方や手法でこのギャップを埋める必要がある。では解決のための処方箋には如何なる方向性がありうるのか。アプローチとしては、免許申請・付与の内容・手順自体を工夫し、その枠組みの運用の中で処理する。あるいは免許付与という行政処分から契約認可行為のみを切り出して、免許付与前だが実質的な審査を実施し、内容的に問題ないというコンフォート―を与え前へ進める等の手法は制度の運用上ありうるのかもしれない。制度的制約があることを理解しつつも、解決のための選択肢を以下考えてみる。

制度的前提を満たさない以上、契約事前認可は不要と判断し、カジノ免許取得後法的な地位を得た後に、(既存契約の事後)認可申請をする:
カジノ免許が付与されていない段階での認定設置運営事業者は、そもそもカジノ事業者ではないのだから、融資契約や建設請負契約等の契約締結時点では制度上の契約認可の対象ではない。単なる認可予定者でしかすぎず、法は何らの義務をも課していない。もっとも区域認定後、当該事業者が速やかにカジノ免許申請へ進むことを想定しているが、審査や免許付与が長期に亘ることは前提としていない。よって事前認可取得は不要と判断し、申請できる法的地位が明確になった段階(即ちカジノ免許取得時点)で、過去締結し、継続中の融資契約や建設請負契約に関し、事後認証を求める。もっともこの段階で既に実践中の融資契約やコベナンツ条件の修正や変更要請がカジノ管理委員会からなされた場合、契約行為そのものがデッドロックに陥ってしまうことになりかねない。致命的な問題が生じないことが前提となるが、かかる問題が生じえない何等かのコンフォートを与える仕組みを考慮することが得策であることはいうまでもない。企業として免許取得前に様々な契約を締結せざるを得ないのは当たり前であって、過去・将来の全てを認可の対象とするという立場を取るならば、免許取得前の空白期間における契約につき、事後審査をする手続きや判断基準、対応措置等を予め取り決めておく等の工夫が必要であろう。事後審査が名目的になるならば、制度の価値はなくなる。そのためにはやはり契約締結前の時点での何等かの実質的審査があることが好ましい。

カジノ免許の申請・審査・付与の全体必要時間を早める、あるいは免許取得に付随する行為の一部を分離して、早める:
カジノ免許申請・審査・免許付与のプロセスが短期間に終わり、その後直ちに契約認可申請・認可という手順が短期間に収束できるならば、そもそも何ら問題は起こらない。但し、カジノ免許申請の内容・審査・手順等を考慮すると、これはまず不可能に近い。カジノ免許付与に係る本審査・免許付与と、免許付与に伴う契約認可の審査・認可は、前者が後者の前提となると何もできなくなる。但し、契約認可の審査を本免許とは切り離し、実務的な内容審査を先行し、問題がないことを非公式にかつ暫定的に確認すること自体は、カジノ管理委員会にとりできないことはないはずである。勿論これは確かに正式な認可ではないし、法的な価値もない。但し、一定のコンフォートをカジノ管理委員会が関係者に与えることにより、実務上の混乱を避けることができる。

特例措置としてカジノ免許取得前の契約認可申請・認可を条件付で認める:
重要契約認可の目的は当該契約主体の社会的信用性や清廉潔癖性の確認と共に当該契約行為がカジノ行為やカジノ事業者に何等かの悪影響・影響力をもたらすことの無いように審査することであろう。認定設置運営事業者は時系列的にカジノ免許付与よりかなり前の時点で、資金調達や工事の着工をせざるをえず、関連する契約を締結し、施設整備を始めなければ何も進まない。免許取得前あるいは免許審査中に必ず必要となる契約の認可申請・認可は、認定設置運営事業者を「免許付与候補者」と見なし、当該主体がカジノ免許取得に至ることを条件とし、別途審査、仮認可することもできるのではないか。勿論免許取得後正式な手順を再度行うことになるかもしれないが。

尚、そもそもカジノ管理委員会は契約案としてどのようなレベルのものを要求するのであろうか。例えば融資契約の場合、タームシートでは問題外でコベナンツを含む全体の最終的な枠組みが理解できる契約書案を要求する模様だ。となると、どの段階で如何なる書類を申請するのかという問題も生じるし、契約主体となる融資金融機関も背面調査の対象になるならば、これも契約案認可申請と同様のタイミングで実施せざるを得ないのか等の派生的な問題も生じてくる。これも事後申請なのかというややこしい問題になる。

精緻な法規制ができており、単純な手順の問題ならば、現実のニーズに合わせ、制度を柔軟に解釈し、運用で処理しない限り、単純な解決策はないということになる。融資契約も建設請負工事契約も、区域認定を得られれば、加速度的速やかに締結せざるを得ないのが現実である以上、考えられる現実的な解決策は区域整備計画申請前の時点で利害関係者に示しておくことが必要であろう。もっともこれはカジノ管理委員会の権限・所掌の問題で、国土交通省所管の区域整備計画のタイミングとは全く関係ない事項になる。業務が一元化されていないため、実務上何が問題となるかが中々見えにくい。ここに問題の本質がある。

(美原 融)

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