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2026-04-06

358.イベント予測市場⑥:新たなチャレンジ

アリゾナ州が2026年3月にイベント予測契約事業者に対し、これまでにはみられない新たな訴訟戦術を取り始めた。
何とKalshiを相手に州法違反行為として刑事訴追(criminal prosecution)をしたのだ。
今までの全ての州の係争は民事訴追(civil prosecution)であって、一企業による経済行為が州法に抵触するとして、州からの退出・撤退を勧告(C&D Letter)したり、当該行為の差し止めを行政的に求める民事訴追をしたりするもので、当該事業者の刑事的責任を問う刑事訴追ではない。
民事訴追と刑事訴追は、目的・当事者・手続・証明基準・結果が根本的に異なる。
米国では刑事は“国家や州政府等が処罰する”仕組みで、民事は“私人間の紛争解決”が中心だ。
当然刑事の方が民事より訴追のハードルは高くなり、具体的で説明可能な事実(Probable Cause)による証明基準が求められるため、簡単ではない。

事の次第はこうだ。
3月12日、Kalshiはアリゾナ州連邦地裁に州司法長官・州政府を相手として、緊急差し止め命令(TRO)並びに(係争期間に亘る)予備的差し止め(PI)を求める訴訟を起こした。
C&Dが要請されたわけではないのだが、司法長官による敵対的な発言示唆をもとに、予防的に訴追を求めたものと思われる。
ところが3月17日に州司法長官は何とKalshiを相手取りMaricopa郡高等裁判所に刑事訴追を行った。
あらゆる賭博種・類型毎に20の罪状が列挙され、その全てが州法に違反し、違法賭博を州民に提供したという。
但し、軽犯罪(Misdemeanor )で対象も個人ではなく、企業だ。
何と2028年大統領選挙のイベント予測、2026年知事選のイベント予測、2026年共和党プライマリー選挙等も個別の賭博行為として列挙している。
スポーツイベント予測のみならず、全てのKalshiの営業行為を違法賭博に相当しうるとしたわけで、これはかなり範囲の広い罪状だ。
Kalshiは紙の様に薄い議論、予測市場は連邦法、連邦規制に基づく金融商品であり、州法の管轄は及ばないといういつもの反論だ。
規制機関の連邦先物商品取引委員会(CFTC)も不適切、州法の管轄ではないという委員長見解をSNSで開示した。
刑事訴追の場合、民事訴追と異なり、州裁判所から連邦裁判所へと移すこと(Removal)は難しい。
今後この刑事訴訟がどう展開するのか興味深いが、時間が長くなることは確実だ。
尚他州でも刑事訴追へと動く気配がある。
ユタ州だ。
既に州司法長官はこの可能性を示唆している。

一方ネバダ州では規制機関(NGCB)が州地裁で提訴した民事法執行手続きは、Kalshiによる連邦地裁への移管要請が3月20日上告審で棄却され、翌3月21日に州地区裁判所(First Tribunal District Court)はKalshiに対するTRO(緊急営業停止命令)を発出した。
米国でイベント予測事業者が州内営業禁止となるのはこれが初めてになる。
期限は2週間だが、4月3日の口頭弁論を経て、州内での恒久的提供禁止(Permanent Injunction)が命令されるかもしれない。
もっともこれは上告が可能でまだ続きはある。

尚、民事法執行(TRO/PI)を求める様々な州の裁判では3月末時点でTRO/PIを求める州政府訴訟(連邦裁判所+州裁判所)では州政府側は一審では11の勝利(アリゾナ州、マサチュセッツ州2件、メリーランド州、ミネソタ州、ネバダ州5件、オハイオ州)、審議中が1件(ワシントン州)だ。
一方予測市場事業者が勝ったのは僅か2件のみになる(ニュージャージ州、テネシー州)。
これら訴訟案件は現状8つの連邦巡回控訴裁判所(Court of Appeal、CA)で控訴段階にある。
CA1 (マサチュセッツ州)CA2 (コネチカット州・ニューヨーク州)、CA3 (ニュージャージ州)、CA4(メリーランド州)、CA6 (ミシガン州、オハイオ州、テネシー州)、CA7 (イリノイ州、ウイスカンスン州)、CA9 (ネバダ州)、CA10 (ユタ州)だ。
マサチュセッツ州での州レベルでの裁判でも、時間の問題でネバダ州と同様の法執行手続きが決定されそうだ。
いやはやとんだ訴訟バトルになっているが、こうなると毎週どこかで何等かの進展があるという状況になりつつある。
4月以降、これら控訴審案件の審議が本格化するとともに、口頭弁論等にCFTCも参戦する意向を示しており目が離せなくなる。

かかるとんでもない騒動の最中でもKalshi等の予測事業者大手は市場拡大に向けての活動を広げ、着実に地歩を築きつつある。
びっくりしたのはついにMLB(メージャーリーグベースボール)がPolymarket米国子会社(仮想通貨ベースのプラットフォームであるInternationalは別法人)と複数年の独占パートナーシップを締結したことだ。
ロゴ、商標の使用、賭け情報の提供、試合中の広告宣伝・表示等を認めており、MLBは確実に大口商品になるに違いない。
公表されていないが一説では3億㌦のMLBへの契約金支払いという。
もっとも契約の一条項として、もしスポーツイベント予測契約が違法という裁判判決が確定した場合、契約は解除されるという面白い条項がある! Polymarketは同様にNHL(ホッケー)、UFC(総合格闘技)、サッカーメージャーリーグとも複数年パートナーシップを契約しており、競合相手のKalshiもNHL(ホッケー)と契約を締結している。
まだ関与していない、あるいは抵抗している(?)のはNBA(バスケット)とNFL(アメフト)のみだ。
いやはやMonetizeの匂いがあると、プロスポーツリーグは確実にそちらの方になびいてしまうのだろう。
今の所断固反対は全米大学スポーツ協会(NCAA)のみだ。
興味深いことにMLBは上記と同じタイミングで予測市場の連邦規制機関となるCFTCとMOUを締結している。
目的はスポーツの廉潔性を守るために、双方の共通関心事項につき、協議、協力、情報交換、違反事由の際の適切な対応等で法的拘束力のある内容ではない。
おそらく世間の関心事に対し、積極的に対応しているということを見せつけさせたいだけだろう。
いかにもやらせ感が漂ってはいる。

(美原 融)

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