2026-02-23
NEW352.スポーツイベント予測契約:日本のプロバスケット試合も対象に?
スポーツイベント予測契約は2025年以降急速に拡大した事象で、所詮米国や欧州における事情であって、常識的には日本には全く関係ないと考える人が過半だろう。
ところがそうでもない状況が生まれつつある。
知らない内に日本のプロスポーツ試合の結果がスポーツイベント契約の対象になりかねないのが現実だ。
Kalshiは2025年から全米でスポーツイベント契約を提供し始め、瞬く間に市場を席捲、その他の競合事業者も市場に進出し、既に巨大な市場を構成してしまっている。
2026年1月Kalshiは自らのプラットフォームで米国のみならず、30以上の世界のプロサッカーやプロバスケットボールのリーグや試合をもスポーツイベント契約の対象とすることをネット上で公表した。
対象は欧州、南米、豪州等のトップレベルのリーグとともにFAカップやFIFAカップ等も含み、何と日本のプロバスケットBリーグもその対象になると明示的に列挙されている。
予測市場ではないスポーツブックの海外サイトでもBリーグは対象になっている。
BリーグのHPを見ると、英語で各チーム、選手のデータが詳細に記述され、かつライブストリーミング等も提供されているため、これは見る人が見れば米国と同じだ。
国際基準にのっとったスタッツ(データ)があるわけで、確かにこれならば外部から分析して、オッズを提供することは可能だ。
スポーツブックでも対象になっている以上、スポーツイベント予測市場でも、当然対象にするということなのだろう。
Kalshiの創設者は昨年来から世界のあらゆるスポーツ試合はイベント契約の対象になりうるし、外国の顧客も市場に参加できる、今後世界を市場にこれを広めていくと豪語してきたため、首尾一貫していることは確かだ。
もっともKalshiは、PR上は結構大言壮語するかなりチャレンジングな企業だ。
米国内でもスポーツイベント契約の合法性につき、様々な法的バトルが継続しているのだが、躊躇せずに市場拡大に奔走しているのが実態になる。
彼らがどこまでが本気なのか、本当に日本市場を含めてやるのかはまだ見えてこない。
但し、米国外市場に触手を伸ばしてくることは確実な情勢だろう。
問題は、これは日本と日本人にとって如何なるインパクトがありうるかになる。
もし、日本人がKalshiサイトでスポーツイベント予測契約を購入したことが発覚すれば、単純賭博罪が適用される可能性が高い。
果たして、日本人がこの海外サイトから購入するか否かは不明だが、少なくともTotoのWinnersにはない一試合毎の単純な勝ち負けやOver/Underならわかりやすく、確実に人気も出てきそうだ。
もっとも実際のスポーツイベント契約の在り方を調べてみると事はそう簡単ではない。
Kalshiのスポーツイベント契約を売買するためには、まず、個人情報を登録して、Kalshiの会員になる必要がある。
登録するネットのページにはKalshi会員規約・契約(Kalshi Member Agreement)が存在し、これを読んでその規約に合意するというクリックを押さないと前に進めないようになっている(クリックにより契約として成立する)。
問題はこの会員規約だ。
規約VI章に「表明と保証」(Rep & Warranties)という項目があり、この中にKalshiのプラットフォームへのアクセスが明示的に禁止されている国に住んでいないことという表現があり、具体の国名がリストアップされている。
ベルギー、スイス、カナダ、イギリス、ロシア、中国、シンガポール、台湾、タイ等かなりの国がリストアップされているのだが、ここに「日本」の記述はない!よって日本はKalshiのプラットフォームへのアクセスを禁止していない国の範疇に入っていることになる。
如何なる判断基準で対象禁止国をリストアップしたのかの説明はない。
そもそもスポーツイベント予測契約等日本ではまだ良く知られていない。
金融商品なのか賭博商品なのかも不明確な状態で、誰も何も気にしていないし、規制の対象になるか否かも不明ということなのだろう。
よって、日本人がKalshiのプラットフォームに参加し、スポーツイベント契約を売買することに対し、明示的な障害になるものは今のところ見当たらない。
もっともこれは賭博という判断があれば、当然禁止の対象になるだろうし、デリバテイブ・金融商品と主張したところで、これは日本では通らないかもしれない。
よって日本人にこのスポーツイベント予測契約が拡散する事態が生じれば、規制・禁止の対象になる可能性がある。
尚、この「表明と保証」はあくまでも、スポーツイベント契約の売買に参加する顧客による表明と保証であって、如何なる事情であってもKalshi側は免責となるような表現ぶりになっている。
この会員規約・契約の他に、Kalshi Rulebook等の内部規則等についても了解することが売買に参加する前提だ。
要は全ての責任は顧客、Kalshiに瑕疵はないというスタンスになる。
全ては顧客自身の選択の結果でKalshiは関係無いということだ。
では海外から提供されるスポーツイベント契約の中に日本のプロバスケットボールBリーグを入れることはどうだろうか。
そもそもBリーグはこの事実を知っているのだろうか。
Bリーグがこの事実を了承したとは到底思えないため、Kalshiによる一方的、勝手な行為なのだろう。
海外で海外事業者が一方的に日本のプロスポーツを賭博の対象にしても、この海外事業者を日本法で規制することはできない。
但し、公開情報とはいえ、チームや選手の過去のデータ(スタッツ)がオッズ設定には必要となるが、これはやり方、使い方次第では知的所有権の侵害になりうる可能性もある。
スポーツイベント予測ではない、スポーツベッテイングの世界では海外のオンライン事業者がかってに日本のプロサッカー・チームの過去の試合データを使用したり、リアルタイムの試合情報を(違法)エージェント経由プラットフォームに中継し、オッズを提供したりするなどの明確な違法行為あるいはルール違反も堂々と行われているのが現実だ。
これは賭博、かつ明確な違法行為なのだが、スポーツイベント予測契約もやることは殆ど同じ故、時間の問題で違法行為として問題にされるのかもしれない。
(美原 融)