National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 325.オンラインギャンブル規制⑧:米国・民事刑事責任追及

2025-08-18

325.オンラインギャンブル規制⑧:米国・民事刑事責任追及

米国では免許を付与してオンラインカジノを認める州は少数派で僅か6州でしかない。
一方オンラインによるスポーツブックは36州+ワシントンDCで認められており、これはポピュラーな庶民のエンターテイメントとなっている。
もっとも一つの州で免許を取得しても州境を越えて州際間の賭博行為を提供することは1961年連邦有線法(Wire Act)で禁止されている。
よってモバイル、オンラインで賭博行為を提供する許諾事業者は当該州のみの顧客がサイトにアクセスし、その他の州の顧客がアクセスできないようにGeo-Blocking機能を用いてアクセスを遮断することが通例だ(さもなければ違法行為になる。
因みに日本からアクセスしようとしてもできない)。
許諾事業者のみが許諾州内で営業する限り、問題はおこらないが、事はそう簡単ではない。
サイバー空間を通じ、違法オンライン事業者が、カジノ、カジノ類似ゲーム、スポーツブック等あらゆる賭博・賭博類似的ゲームを海外から米国に向けて提供しているという現実があるからだ。
勿論これは連邦法・州法違反行為なのだが、事業者が海外にいる場合、単純な法の執行はできないのは他国と同じだ。
州の賭博規制機関や法務省(法執行当局)もこの状況を黙視しているわけではなく、様々な手段を駆使して、監視や摘発・これら違法サイトの排除を試みようとしている。

良く使われる対抗手段は州政府の規制機関ないしは司法長官による「業務差し止め・事業撤退要請」(Cease and Desist Letter略してC&Dともいう)だ。
これは法的な効果がない一種の警告文になる。
違法となる行為や危害を与える活動を停止することを要求し、相手が聞き入れない場合には訴訟を起こす意思があることの表明だ。
(この慣行は民間レベルでも用いられている。
訴訟行為を起こす前に費用と時間を節約し、相手による救済行動を促す目的がある)。
海外の違法オンライン賭博事業者が相手となる場合、行政機関により外国の当該企業及びその親会社に直接発出され、免許なくオンラインを用いて州民に賭博行為を提供することは州法違反で一定期間内に業務を停止し、州から撤退すること、これに従わない場合にはあらゆる法的手段をとるという警告になる。
もっとも相手は外国にいる外国の事業者だ。
果たしてこれに如何なる効果があるのかは見えにくい。
一方、当該事業者が米国内に何等かの拠点を持っている場合には有効になる。
賭博行為をオンラインで提供する事業者のみならず、プラットフォームプロバイダー、ソフトウエア提供事業者、支払い代行事業者、その他アフィーリエート等の関連主体をも違法行為幇助者として摘発の対象にすればこれは可能だ。
こうなると関連主体は米国在住の個人・法人となり、規制当局や州法務省が本気になれば、現行法制度でもサイトブロックや支払い停止等かなりのことはできる。
既に様々な州の司法長官や規制機関がこのC&D Letterを数多く出している(2024年~2025年の間に全ての州で何と100以上のC&D Letterが発出されている)のだが、無視して一切返事もない事業者や当該サイトを閉鎖し、ミラーサイトで堂々と営業をする事業者がいたりする様だ。
但し、C&D Letterを出された場合、確実に当該州では派手な活動はできにくくなる。
尚、このC&D Letterに反発し、州司法長官や州規制機関を相手に訴訟を提起した海外事業者はいない。
ということは、彼らは違法であることを承知の上で堂々と賭博サイトを開帳していた証左になり、どう考えても質の良い事業者ではない。

この後ありうる手順としては州司法長官が保持している権限を用いて民事執行手続き(Civil enforcement procedures)をとることだ。
米国の州法では民間事業者が違法行為や現行制度から逸脱した行為をした場合、州の司法長官に法廷で救済行為を求める広範囲な権限を認めることが通例である。
これにより利益没収(Disgorgement)、損失補填(Restitution)、差し止め救済(Injunctive Relief)、制裁金賦課(Civil Penalty)等が可能になる。
法的な根拠としては例えばカリフォルニア州ではBusiness & Profession Code (UCE) Section 1703~06,ニューヨーク州ではExecutive Law Section 63(12)等だが、他州でも類似的な法令がある。
勿論これも外国にいる事業者には効き目はないのだが、関連幇助主体を含めて州司法長官が民事執行手続きに入るということにはかなりの重みがある。
但し、まだここ迄いった事案は米国には存在しない。

尚、本年8月4日に全米50州の司法長官が連名で連邦司法長官Pam Bondiに対し、違法な海外オンライン賭博がもたらしている危害に対応するため、より厳格な規制と法の執行を書面で要請するという事態が生じた。
連邦政府機関と州政府が協力・連携し、裁判所命令による効果的な業務停止、サイトブロック・支払いブロックを実施するとともに、関係するサーバー、ドメイン、金融資産等の没収を金融機関や支払い手続き代行業者とも協力し、国家的な法の執行を実行するよう求めるものだ。
法律を変えずに既存の制度や法律の枠組み(UIGEA並びに31USC5365b, 18USC1955d)の中で連邦・州政府による法の執行を厳格にする戦略を実践すべきという提案になる。
違法オンラインを支える金融インフラを解体するという意欲的な考えで、やはり州レベルでは限界があり、ここに関係者の危機感が見て取れる。
殆どの州政府司法長官が連名で行うという行為にも迫力がある。
但し、トランプ政権下の司法省がこの問題を真剣に取り上げるか否か、何ができうるかに関しては不明だ。
歴代政権の司法省はこの問題についてはあまり積極的行動をおこしていないからである。
 尚、一部の州では州法での立法化措置が進んでおり、より法的に明確な形で違法なオンラインカジノ事業者、スポーツブック事業者、賭博類似行為を提供する事業者、並びに関連プラットフォーマーや支払い代行事業者を規制する法案が州議会に提示される状況が生じている(ネバダ州、カリフォルニア州、ニューヨーク州等である)。
法的に明確な禁止規定とその判断基準があれば監視や規制もより効果的になることは目に見えている。
連邦議会でも一部議員の中には統一的、包括的な連邦法の規制を設けるべきという意見もあり、その趣旨の法案も出されるのだが、これはハードルが高く、単純には実現しそうにもない。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top