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2025-08-25

326.金融デリバテイブと賭博⑦:Sport Event Futures Contract(その後)

次期商品取引委員会(CFTC)委員長候補の指名公聴会は連邦上院で6月10日に実施された。
一部民主党議員からKalshiとの利害相反やSport Event Futures Contractは賭博以外の何物でもない違法な行為ではないのか等のするどい質問がでたのだが、委員長の職務は連邦商品取引法(CEA)を守ること等卒のない言い逃れに終始し、特段の波乱も生じなかった。
7月に予定された指名投票は2回も延期され、慌ててホワイトハウスが支持は変わらないと表明する有様だ。
連邦議会ではこの指名を疑問視する意見や、情報公開法に基づくCFTC資料の中に倫理観を疑われる内容の文書迄暴露され、状況は混沌としている。
一方Kalshiと州賭博規制機関との複数の連邦訴訟は複雑さと混迷さを増すばかりだ。
3つの訴訟案件の内、ニュージャージー州の案件が他の案件より早く、連邦第三巡回区控訴裁判所で控訴案件として取り上げられることになった。
原告(Kalshi)、被告(ニュージャージ州)双方が法廷陳述書(Brief)を提出し、係争当事者ではないが利害のある第三者にも意見陳述書(Amicus Brief)を提出する機会を与えるという手順をとる。
第三者意見陳述書とは勿論義務ではなく、関係者が任意で提出するものだが、控訴審では様々な専門家・関係者からの意見陳述も考慮の対象にされ、その意味では裁判に際し、相応の影響力を行使できる。
この事案で話題となったのは意見を陳述した関係者の数とその範囲だ。
34の州の司法長官とワシントンDC、マリアナ群島(サイパン、グアムは米国の信託統治領)の司法長官が連名で意見陳述書を提出したが、こうなると全米の7割を網羅している。
複数ある全ての原住民部族カジノ関連団体と個別60部族による意見陳述書はこれも部族カジノの殆どを網羅する。
アメリカゲーミング協会(AGA)は全国の商業カジノ施設等賭博施設を傘下に持つ強力なロビー軍団だ。
これに加え、ニュージャージー州カジノ協会は直接の利害関係者として意見陳述書を提出した。
要は全米のカジノ賭博関連当事者がこぞって連名で陳述書を提出したことになり、Kalshiはこれら全てから猛反発を食らったというわけだ。
更には興味深いことに賭博に反対する複数の著名なNPOや賭博依存症対応のNPO/NGOもKalshi主張反対の意見陳述書を出している。
一見おかしいようにも思えるが、野放図に規制も何もなく、賭博行為となるスポーツブックを無制限に認めるべきではないという主張自体はカジノ事業者やカジノ関連州規制者、部族カジノ関係者と一致する。
一方のKalshiだが、Kalshi側の第三者意見陳述書は僅か3社のみで実質的に一人芝居を続けている。
興味深いのはDott & Frank法の中でのCEA法改正を上院委員会で委員長として主導した元Lincoln上院議員で、当時はゲーミングは賭博でCEA法では禁止の対象とした議論をしていたはずなのだが、今やコンサルとしてKalshiに雇われ、過去とは全く反対のKalshiを擁護する第三者意見陳述書を提出したことだ。
さすがにこれはないだろうとも思うが、今やトランプ政権、金次第でなんでもありだ。
口頭弁論は9月8日フィラデルフィアで行われる予定で、控訴審は年内にも決着するのではないかと想定されている。

一方、原住民部族の中にはやはりKalshiの行動は看過すべきではないとして訴訟に訴える動きもでてきた。
行動を起こしたのはカリフォルニア州の3部族で彼らはKalshi並びにRobinhoodを連邦IGRA法違反、州法違反、部族法規違反として連邦地裁に提訴した。
州内には109の部族施設があり、Kalshiはこの部族の居留地内からもアクセスできる賭博を提供しており、明らかに違法ということなのだが、109の施設からアクセスできないようにすること等物理的に難しい。
部族に訴える法的適格性があるのかという懸念もあるが、利害関係者が多く、かなり複雑なことになりそうだ。

そうこうしている内にメリーランドの連邦地裁訴訟案件でも進展があった。
メリーランド連邦地裁で審議されていたKalshiによるメリーランド規制当局に対する仮差し止め命令ないしは恒久的停止命令要請は根拠薄弱とし、州規制機関に軍配が上がったのだ。
Kalshiは即日同裁判所に対し、現状維持動議を申請、同時に連邦第四地区巡回控訴裁判所に控訴事前通告をした。
連邦メリーランド地裁が焦点とした議論は、上位の法体系(連邦法)と下位の法体系(州法)の間に矛盾がある場合、上位の法体系が優先されるか否かという点にある。
つまる所連邦法の解釈議論だ(Preemption vs Presumptionという)。
結論的にはKalshiは仮差し止め命令の根拠になりうる訴訟に勝てるという論点を示し切れていない、連邦議会はCEA法の中で明確かつ明らかな形で連邦法の優越性を規定していない、州法による歴史的経緯と背景は論点として重要等の理屈になる。
Kalshiにとり当面は二勝一敗ということだ。
2つの控訴審がどう展開するかの展開は読めず、Kalshiが勝つかは極めて微妙だ。
勝てば現状が全て固定化し、連邦と州政府のスポーツブック許諾体制が並列することになる。
一方この両控訴審で結果が割れたり、更に上訴したりすることになれば連邦最高裁の判断に持ち込まれる。
もしこれら全てにKalshiが負ける場合には、裁判係争ではなく、立法府を動かし、正当化を得る戦略をとるのではといわれている。
ホワイトハウス、共和党主導の立法府を動かし、中間選挙前までにCEA法の一部を立法行為により修正できれば事足りるからだ(規則40.11の文章を若干変えればいいだけの話になる)。
もっともスポーツブックが自州の重要な産業へと成長している州の共和党議員はかかる試みに賛同するか否かは解からない。
一方Kalshiはネバダ州の訴訟案件では何と地裁に対し(審議なくして解決を図る)要約判決とDiscovery手順を排除する緊急訴訟を新たに提起する始末だ。
事実をDiscoveryされると不都合な事実がでかねないため、審議無しで判決をというわけだ。
まともな手順でこれをやると時間がかかり、ニュージャージーの控訴審判決が先に決まるといわれている。
何のことはない、こちらは単純に時間稼ぎをして、棚に上げ、その他の控訴審を優先させるという戦術だ。
二つの控訴審は両当事者にとり早く結審させることのメリットが大きいため、通常より早いステップで裁判が進むことになる。
遅くとも来年初頭までには決着がつくのではといわれているのだが、さてどうなるか。

(美原 融)

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