2025-07-14
320.オンラインギャンブル規制③:インターネットサイト・ブロッキングの法制?①
クロスボーダーのサイバー世界を規制する法制度はどこにも存在しない。
よって海外からサイバー世界を通じ勝手に押し寄せてくるオンラインカジノは違法・禁止と強弁したところで全く効果はなく、国民を違法賭博から隔離させることが最良の施策になる。
外部から押し寄せてきても内部(国民)だけはその悪影響からしっかりと守るという防御策になるからだ。
具体的な方策としてはインターネットと人間とのインターフェースに着目し、これを規制することが得策になる。
即ち、ネット上の情報を閲覧したり、サーチエンジンで目的のサイトを探したり、サイトURLを特定、アクセスし、勘定を設け資金を預託すること、この資金を用い賭博行為を行い、勝った場合には勝ち金を送金させること等は顧客たる国民の行為になり、このどれかを断ち切れば全体の仕組みは動かなくなる。
この内、諸外国で最も幅広く採用されているのは、サイトの情報広告、勧誘、サーチエンジンによる検索、違法賭博サイトへのアクセス等を防止するインターネットサイト・ブロッキングという手法である。
興味本位でサイトを探したり、アクセスを試みようとしたりする一般顧客や未成年層に対しては、確かにこれは抑止効果がある。
但し、完璧な防護手法といえないのは、顧客自身がVPNを用いて回避行動をとったり、海外の胴元がドーメインを変えたり、ミラーサイトを設け、顧客をこれに誘導したりするなどネットをちょっと知っている顧客や悪質な事業者ならばいくらでも回避行動がとれてしまうからだ。
勿論こうなると違法サイトを規制する規制機関とのいたちごっこになる。
一般的にオンライン賭博が認められているEU/EEA諸国では免許を取得していない違法事業者を排除するために別途法制度を設け、サイトブロッキングを実施している。
かかる国は何と20ケ国もある(詳細は2018年EU委員会「オンライン賭博法執行の規制手法・管理された需要への誘導に関する評価」に詳しい)。
一定の抑止力がある以上、積極的に違法オンラインサイトを取り締まり、潜在的にもたらしうる危害を縮小化するという意味ではおかしな政策ではない。
但し、その制度や実践の在り方はその国の事情や法制度の相違によりまちまちでもある。
一方、いずれも明確な法制度を構築し、違法オンライン賭博サイトをブロックできる権能を行政機関に付与していることは共通しており、一定の抑止効果はあると過半の国が認識している模様だ。
尚、制度上オンライン賭博を免許制に基づき認めている国の場合は、明確な違法行為・脱税等違法行為や罰則の定義がしやすいと共に単一の賭博規制機関が包括的な規制責任を担い市場の監視・法の執行を行うため、制度の整合性・一貫性が保持されており、仕組みとしては解りやすい。
一般的な制度上の政策的な選択肢とは①端緒情報を誰が、いかなる手法でどう把握し、違法なオンラインサイトであることを誰が、如何なる判断基準で決めるのか、何を禁止行為とし、関係者の内、誰をどこまで規制の対象とするのか、②誰がどの段階でどのように特定された違法オンラインサイトをブロックするのか、法的な義務客体は誰か、誰に如何なる義務を課すことになるのか、③法遵守に関わる監視や法の執行の担保の枠組みはどうあるべきか、④個人のプライバシーへの侵害、知る権利への侵害、検閲では等という懸念にどう対応すべきか等になる。
違法サイトに関する端緒情報の取得はシステムでも対応できるが、間違いも多いため、何とアナログで取得する場合が多い。
規制機関による独自調査、市民やネットサービス業界団体等による通報、他国の規制機関との情報交換・共有等が情報ソースになる。
規制機関が事実と証拠を分析・評価し、違法サイトと断定した場合、インターネットサービスプロバイダー(ISP)にサイトアクセスブロック命令を出す権限を保持している国と、規制機関が裁判所に違法行為を申し立て裁判所がサイトブロック命令をだす国とがある。
ブロックの手法はDNSブロッキングが主流で行政命令後一定期間内(例えば5日内)にISPはアクセスをブロックする義務を負うというパターンが多い。
またサーチエンジンや広告・アフィリエート等の誘導サイトも別途規制の対象にし、一部サイトへのアクセス制限や誘導サイト自体の閉鎖を伴うこともある。
尚、DNSブロッキング自体も完璧な手法とはいえずオバーブロッキングやアンダーブロッキングのリスクが存在する。
また諸外国でも一部の国ではプライバシーの侵害や通信の自由に対する侵害という観点からかかるインターネットの利用規制には反対論が根強く存在し、必ずしも一様ではない。
一方我が国でも本年4月以降総務省が有識者による「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」を主宰し、公開の上で議論を深めている。
我が国の現状と制度的な課題、あるべき方向性に関しての議論は極めて示唆に富む内容も多い。
但し、インターネットサイトの強制的なブロッキングは憲法上の通信の秘密の侵害にあたるとする根強い意見があり、単純・短期的にどう解決策を考えられるのか不明である。
制度ではなく、自主規制ならば既に一部は児童ボルノネット規制の枠組みで実践されているが、違法サイト数の多さアクセス頻度が高いオンラインカジノとはかなり事情や環境が異なり、同じ手法が効果的となるか否かに」は検証が必要だ。
本来違法なオンラインカジノ運営事業者とその周辺の幇助者を違法行為とする包括的な法規制と明確な判断基準等が必要なのだが、これが無いままにオンラインサイトのブロッキングの是非のみに議論が集中しているのが実態だ。
日本にはこの分野で常時市場を監視し、違法行為を摘発できる専門的な規制組織は存在せず、各省庁がバラバラに所管法令に応じて対応し、捜査権を持つ警察庁と協調連携しているのだが、これではサイバー世界での犯罪に効果的に対応できない。
必要なのはより包括的な枠組みで、セグメント毎に対応することではない。
これでは全体像が見えなくなるし、抑制の効果も小さくなる。
インターネット通信を所管する総務省だけで規制の枠組みを取り決めるにしてもできることは限られてしまう。
おそらくこれでは制度や規制の創出ではなく、何らかの自主的な規制、業界団体による任意での管理の枠組み等がせいぜいの着地点になるのではないかとも思える。
(美原 融)