2025-08-11
324.オンラインギャンブル規制⑦:クレジットカード利用規制
クレジットカードの支払は、後払いとなり一定の期間経過後支払い請求がくる仕組みである。
要は現金ではなく、一種の与信行為になり、これを利用し賭博行為をすることは、クレジットカードの仕組みから短期的な与信を得ているに等しい。
今現在手元の資金が不如意でも、クレジットカードでチップを購入すれば賭博行為ができるわけだ。
これでは過度の賭博依存を誘発しかねない側面があるわけで、病的賭博の危害を縮小化するためにも、オンライン・地上施設を含むあらゆる賭博行為の決済にクレジットカードの利用を禁止する制度と慣行を採用する国が増えつつある。
米国では、オンラインが前提となるスポーツブックの賭け事に関し、クレジットカードの利用を禁止する州はマサチュセッツ、アイオワ、テネシー、ロードアイランド、バーモント、ニューハンプシャーの6州であった。
2025年4月にはイリノイ州ゲーム管理局が新たにクレジットカードをオンラインカジノやビデオゲーミングに使用することを禁止する措置を制定した。
では現金を使わないキャッシュレスゲーミングはどうなるのであろうか。
キャッシュレスゲーミングとは手元には現金はないが、電子的手段で他にある自分の資金の一部を即時に使う仕組みになる。
キャッシュレスゲーミングを認める州は全米で17州にのぼる。
これは単純に支払い手段が電子的行為であるだけで、今ある現金資金を使うため、与信行為ではないという考え方にたつのだろう。
例えばこの場合、キャッシュレスとして現実的に使用できるのはオンライン電子送金、(先払いの)デビットカード、即座に銀行口座から引き落としされるPayPalやVenno等の電子財布, 銀行送金、プリペイドカード等だ。
確かにこれらの支払手段は与信行為とはいえない。
尚、全米ゲーミング州規制者協議会(NCLGS)によるオンライン賭博モデル法案(2024年11月制定)においてもクレジットカードはオンライン賭博の決済に関しては利用禁止の対象になっており、上記で述べた先払い、同時的払いの電子決済手段しか認められていない。
欧州でも似た様な動向は存在する。
英国の規制機関である賭博委員会(UKGC)は2020年4月以降、賭博行為にクレジットカード並びにこれにリンクする電子財布を使用することを全面禁止としている。
ところが全面禁止でも支払いに利用されるクレジットカードが存在すること(Visa並びMastercard)が問題になり、2025年3月に英国賭博委員会(UKGC)と両クレジットカード会社との(自主的な)協定が成立し、以後両社 はオンラインを含む賭博行為の決済をブロックすることを合意している。
最近の例ではスエーデンは2026年実現を期す賭博法改正案(Gambling Act)の中で、現行法でも賭博施設による与信付与は禁止の対象なのだが、これを更に拡大し、あらゆる与信行為を禁止とし、クレジットカード決済もこの中に入ることを前提としている。
オーストラリアでは2024年6月以降クレジットカード並びにクレジットカードにリンクする電子財布及びデジタル通貨を賭博行為に使用することは全面的禁止となっている。
この様に賭博行為におけるクレジットカード決済の禁止・抑制は世界レベルで生じつつある。
最近の傾向はクレジットカード決済に絡む形で電子財布(Electronic Wallet)を利用することも問題視されつつあり、特にオンライン賭博に関してその利用を規制する制度を設けようとする動きもある。
日本のIRカジノでもIR整備法ではクレジットカードの利用は禁止の対象となっている(もっとも外国人は例外的に利用できる)。
昨年行われた警察庁のオンラインカジノに関する委託調査によると顧客の67%は決済手段としてはクレジットカードを使用しているという。
もっとも公営賭博の売り上げの過半は今やインターネットを通じた販売になり、クレジットカードの利用も深く根付いている。
本年3月に改訂された国のギャンブル等依存症基本計画の中では、競馬ではクレジットカード等を利用した後払い決済の在り方を今後検討するとし、競輪オートレースではクレジットカード等を利用した後払い決済について見直しを求められていることを 踏まえ、効果的な対策を検討すると共にクレジットカード等を利用した後払い決済の月当たりの利用上限額設定についても検討するとあるのみだ。
その他の公営競技(競艇)、パチンコ、宝くじ、スポーツくじ等に至っては何らの言及すらない。
何とも早、全くバラバラ、かなりいい加減な対応で心配になる。
この様に賭博行為に対する与信付与の考えに整合性も一貫性も全くないことが我が国の現実となる模様だ。
陸上設置型施設でクレジットカード利用を禁止するのは当たり前の趨勢になると共に、インターネットを利用する賭博行為や馬券,車券、船券、宝くじ、サッカーくじ等のオンライン販売行為は、基本的には現金は使えずその他の決済手段を利用せざるをえない。
クレジットカードがその主流である限り、簡単にこれはやめるという話はしたくないのだろう。
これでは国民を保護するというより、自らの収益・利権を保護していると思われても仕方が無いかもしれない。
尚、クレジットカードは我が国では割賦販売とみなされ、割賦販売法に基づき経済産業省がこれを所管している。
商品販売に伴う割賦にフォーカスがあるため所管官庁は経済産業省となり、金融商品ではないわけだ。
もっともクレジットカードを用いて現金を引き出す場合には金融事業者とみなされ、貸金業法(金融庁が所管)の規制を受ける。
一方、クレジットカード利用のルールはクレジット会社の判断で取り決めており、違法海外オンライン賭博の決済に関しては、これを踏まえた対応をしている(即ち自主規制)という経済産業省の国会答弁があった。
監督官庁として積極的な規制はしないということなのだろう。
実際のクレジットカード会社の中には自社のルールで賭博関連決済は対象とはしないと公言する(良心的な?)会社も存在し、ウエッブサイトのホームページでこの方針を開示しているカード会社も存在する。
ところが未だに賭博決済に使えるカードと使えないカードがあるというのはこの世界の顧客の中では周知の事実となっている。
全くてんでんばらばらの無法状態なのだ。
果たしてこのような状況を放置してよいのだろうか。
(美原 融)