2025-07-07
319.オンラインギャンブル規制②:資金決済に関する法律の改正
今やデジタル時代、オンラインによる通販サイトでの物品やサービスの購入は極めて日常的な光景になりつつある。
決済に関しスマフォや自宅のコンピュータを通じ、様々な手法が活用できるようになり、コンビニでの決済や宅配業者の代金引換等も当たり前の事象だ。
多様な決済手法が可能になったのは決済代行事業者や収納代行事業者の介在が大きな役割を果たしている。
前者はEコマース事業者と決済機関の間に立ち、審査や契約、売り上げ管理等の決済に関する業務を代行する。
複数の決済機関を一括して扱える為、顧客にとっての支払選択肢は増え、利便性は高くなる。
後者は顧客から商品代金やサービス料金の回収を代行するサービスになり、コンビニ決済や代金引換等だ。
前者は資金決済法により登録を得た資金移動事業者が銀行法の例外として為替決済ができ、参入規制(登録制)、履行保証金の供託義務、利用者保護の措置、報告書の作成提出等が義務づけられている。
一方後者は個人間送金に該当する一部のサービス(投げ銭、割り勘アプリ等)のみが資金移動業として登録・規制対象となるが、その他は規制対象外でもあった。
近時これが問題となってきたのは、自身が関与しない取引の決済のために国境を跨るクロスボーダー取引として送金を行う収納代行業者が増えてきたことで、その利便性の高さ、安価な手数料、非対面取引に伴う匿名性、規制の対象では無いこと等からこれが違法な海外オンラインカジノの決済や金融詐欺、出資詐欺、マネーロンダリング等の違法行為の手法として用いられる事案が頻発してきたことにある。
規制の対象外となる無登録事業者となるため、金融庁には所轄権限はないが、警察庁と協力し、明らかな違法行為と認知される場合には照会や警告等を発出してきたようだが、これでは不十分で規制対象にすべきという政府判断となった。
かかる事情に基づき今次国会で暗号資産等取引の規制強化と共にクロスボーダー収納代行取引に関し、資金移動業の規制を導入する目的で「資金決済に関する法律」の一部を改正する法律案が提出され可決された(5月16日趣旨説明、28日衆議院財務金融委員会可決、6月3日衆議院、6月6日参議院可決)。
この法律はクロスボーダーの収納代行業務に、資金移動業者としての登録義務を課すことにより規制の対象とし、無登録でかかる業務を担う無登録事業者を取り締まることを可能にする。
収納代行先が海外である場合、賭博行為への関与の有無とは関係無く、資金移動業者としての登録が必要になる。
登録無しでかかる行為をすれば摘発・逮捕の対象だ。
勿論金融庁に捜査権限はないが、監督許認可権限が付与され、登録申請時点で海外オンライン事業者への送金に関与していたことが明確な場合、登録拒否要件に該当する。
この場合無登録事業者として取り締まることが可能になる。
一方登録事業者には自らの取引がオンラインカジノ関するものではないことを確認する義務がある。
もし違法なオンラインカジノ決済に絡んでいたとすれば、金融庁は法令に基づく報告徴求、業務改善命令を発出できると共に、必要な場合、立ち入り検査、業務停止命令等の行政措置も可能になる。
これは確かに国内のクロスボーダー収納代行事業者に対しては、有効な抑止効果となる。
但し、違法送金のリスクが低いと考えられるものは規制の対象外でこの詳細は以後内閣府令で列挙するとあり、このループホールに違法事業者が入り込む余地もゼロではない。
かつ海外に設置され、海外から行動する収納代行業者に対しては、法の執行はできないため、この規制は無視され、効果はない。
もっとも資金決済法62条の2は資金決済業者としての登録を受けていない外国資金移動事業者は国内にある者を勧誘してはならないという規定があり、もともと海外から行動する資金移動事業者は(登録が無ければ)違法なのだが、法の執行ができないため放置されているにすぎない。
クロスボーダーの収納代行には様々な仕組みや手法が技術の発展に伴いでてきており、実際の取引がどうなっているかを把握することは結構難しい。
海外オンライン賭博に限ってみると、まずはカジノのプラットフォームに顧客個人勘定を開設させ、資金移動業者に誘導し、資金を勘定に預託させる。
預託金は何時でも引き出せるため、これは支払いではないが、ここから資金を引き出して遊ぶと預託勘定から差し引かれたり、勝ち金が預託勘定に支払われたりする。
この資金移動に銀行口座やクレジットカード、電子財布、暗号資産等が使われるのだが、業者が支払い先がカジノであることを隠せば、解り難くなる。
かつ銀行口座から電子財布の勘定に送金し、一定期間ここに資金を滞留させ、その後カジノ勘定へ資金を移動させるなど時間差や複数のステップを踏んで支払われるとますます解り難くなる。
抜け道は確実に存在するわけで悪意をもってすればなんでもできるということだ。
果たしてこの状態で何処まで抑止できるか、規制できるかは今後の課題となるのかもしれない。
尚、金融庁は警察庁と共に5月14日にオンラインカジノに係る賭博事犯防止/詐欺被害防止のための対応について、全国銀行業界等の金融業界団体、日本資金決済協会、日本暗号資産等取引協会等に対し、オンラインカジノは犯罪であることの利用者への注意喚起、法令違反となる決済行為は禁止されていることを利用規約等で明らかにすること、利用者がオンラインカジノで決済を行うことを把握した場合、当該決済を停止すること等を傘下の金融事業者等に行きわたるよう要請している。
あくまでも「要請」であって行政命令ではない。
これも抑止効果はあるだろうが、金融事業者は不特定多数の利用者の行動を事前に把握できるわけではないし、自ら顧客行動をチェックする義務もない。
また利用者が預金口座から電子マネーや暗号資産に転換するステップを複数回行えば、まずこれもトレースできなくなる。
もっとも上記通達後、スマフォによる銀行口座個人勘定のサイトにアクセスすると毎回まず画面にオンラインカジノ決済はできませんとのメッセージが表れるようになった!これ等は確かに効果はあるかもしれない。
尚、クレジット会社に対しても同様の行動をとるべきなのだが、これは経済産業省の管轄で金融庁ではない。
クレジットカードは一種の与信行為であり、安易な形でオンライン賭博の決済に利用されるべきではなく、諸外国ではクレジットカードの利用禁止を法的に措置した国も多いのだが、我が国ではクレジットカード会社の内規に基づく自主規制で処理しており、これにも抜け道はある。
(美原 融)