National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 316.金融デリバテイブと賭博⑤:Sport Event Future Contract

2025-06-16

316.金融デリバテイブと賭博⑤:Sport Event Future Contract

誠に解り難い事象が次々とでてくる案件となってしまったが、Kalshiと州規制機関双方の主張を裁判所に提示された書類から再度整理してみよう。
下記の様になる。

Kalshi主張:

  • → スポーツイベント契約は連邦商品取引法(CEA)による規制の対象となる金融派生商品であり、州法による規制の対象にはならない。
    1974年連邦商品取引法(CEA)改正により連邦商品先物取引委員会(CFTC)は指定契約市場(DCM)に関する独占的な管轄権(Exclusive Jurisdiction)を与えられており、KalshiはDCMとしてCFTCの規制下にある。
    かつ金融派生商品である以上、CEA規則40.11の対象外。
    連邦法の規定はこの分野では州法を優越する。
  • → 連邦有線法(Wire Act)は州際間でのスポーツ関連賭博情報を有線等の手段を用いて伝達することを禁止し、これが州を跨る賭博行為を禁止する連邦根拠法になる。
    一方、金融派生商品は有線法の明示的な対象ではなく、その適用対象外になる。
    よって、連邦法規間での矛盾はない。
    また連邦商品取引法(CEA)は国全体に跨る連邦法でその対象領域は全50州になる。

州規制機関主張:

  • → 賭博行為は伝統的に州法による許諾と規制が原則であり、2018年最高裁判例でスポーツブッキングに関してもこれが確認されている。
    連邦有線法、連邦原住民ゲーミング規制法(IGRA)にGamingの記述があるが、いずれも賭博の意味であることは明らか。
    かつCEA規則40.11はGamingを公益に反する行為としてこれを指定契約市場(DCM)の対象とすることを禁止している。
    スポーツイベント契約はこれら連邦法からも逸脱し、賭博と同一で法のループホールとなっており、違法な行為を裏で認めているにすぎない。
    明らかに州の管轄権を損ね、州政府の主権に対する侵害になる。
    同じスポーツブックが連邦と州の二つの制度により併存している状態は消費者の混乱を招いている。
  • → 賭博であるに拘らず、事業者の背面調査、州税・免許料の負担、消費者保護のための様々な規制、責任ある賭博への対応、違反行為への罰則等を全て無視してしまう仕組みが併存していることは、州法の許可を得たスポーツブック事業者にとり極めて不公平となる市場環境をもたらしている。
    廉潔性を担保する仕組みや弱者・消費者保護のための仕組みは金融商品では存在しない。
    連邦商品先物取引委員会(CFTC)は専ら金融市場の規制者に過ぎず、賭博行為の規制の知見も経験もない。
    尚、賭博と同等の規制をスポーツイベント契約に適用することは時間・費用の無駄、そもそもこれでは矛盾するリダンダントな制度になってしまう。

詰まるところ、Kalshiの主張の要点はスポーツイベント契約は連邦法に基づく金融派生商品で、規制機関であるCFTCは連邦法に基づく優先管轄権を持っており、州法規制は関係ないとするものだ。
Gaming、Gambling、Financial Derivativeの実質的同一性が認められるか、あるいは連邦法の管轄優位性(Exclusivity)が崩れればKalshiの主張は全て崩れる。
実は単純な構図なのだが、これを崩す理論構築のハードルはかなり高い。
一方州政府・州賭博規制機関の主張のポイントは連邦法の優位性(Supremacy)とこれに伴う管轄独占性(Exclusivity)を崩せるか否かという点にある。
これも単純ではないが、州にとっては、これは死活問題になる。
一審では訴状の緊急一時救済の適格性のみを判断したのみで、中身の審議はしていない。
事が連邦最高裁迄いった場合、どういう風に判決が分かれるかは微妙だ。
保守・リベラルではなく、事は連邦政府の権限を尊重し、拡大すべきという意見と州政府の権限を尊重し、連邦政府の関与を限定すべきという意見の相違で票が分かれるからだ。
今迄の連邦最高裁は歴史的な判例としては州政府により大きな権限を付与すべしとする意見が多数派でもあった。
通常ならそうなるが、これは賭博か金融商品かという問題も含み、こうなるとどっちに転ぶかわからない最高裁判事がいる。
要はこれでは最後までわからないということだ。
時間がかかりそうだが問題の余波がかなり大きいため、ひょっとすると1年以内に最高裁が案件を取り上げるという可能性もある。

規制当局とKalshiとの裁判がどうなるかは未だ見えてこないが、どちらに転んでも大きな混乱を招くことは必須になってしまう。
類似的な行為を異なる類型として連邦法と州法間で矛盾無く、共存させること等はありえない。
今後状況次第では複数の州政府機関が合同でCFTCを相手として別の連邦訴訟を起こす可能性もある。
勿論裁判所ではなく、連邦議会がこれを取り上げ、新たな立法措置により賭博と金融派生商品との境界を明確にし、矛盾を解決するという方策もあるが、ここまで議論が熟しているわけではない。
尚、連邦商品取引先物委員会(CFTC)は委員5人から構成されるが、6月時点で4名が辞任、現状の委員長代理は新任の委員長が連邦上院で認証されれば辞任すると公言しているため、1名だけになる。
CEA法に委員会の定足数の規定はないため、これでも委員会たりうる。
委員長に指名されたB.Quintenzの上院承認公聴会は6月10日で、問題無く認証されるのだろう。
彼はCFTCとの間で倫理契約を締結したことを公表、現状Kalshiの役員だがこれを辞任し、同社の保有株式・オプション権は上院承認後90日以内に処分すること、指名決定後Kalshiが一方の当事者となる課題についてはその行為が認められない限り議論に参加しないことを取り決めたとある。
この体制では何も決められず、何も進まない可能性が高い。
曖昧な現状と法廷闘争が継続し、Kalshiのやりたい放題になってしまうということにもなりかねない。
この混乱は当面終息の気配がない。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top