2026-04-13
NEW359.イベント予測市場:ワシントンの騒めき
イベント予測市場を巡り、何やら騒めきがワシントンDCでは生じつつある。
問題の発端はやはりインサイダー疑惑取引だ。
政治的イベントや政府施策、大統領の発言等イベント予測の対象には限りがないのだが、大統領発言15分前とか重要な政策発言の30分前にイベント契約の取引量が突然大きな変化をしめしたり、原油価格や株式市場を確実に変えさせる大統領の発言の直前に市場価格が大きく特定方向に変動したりすることが現実に生じている。
確実にこうなるという情報を事前に把握している者のインサイダー取引以外考えられない。
ホワイトハウス(大統領自身?)、大統領の家族、ホワイトハウス職員、政府重要政策に関与する職員、及びこれらと関係する第三者の全てが対象だが、誰もが知りえない市場が確実に動く情報を保持しているのはこれら以外にはない。
勿論これは様々な連邦インサイダー規制に引っ掛かる違法行為なのだが、政権の幹部やその関係者が絡んでいるとすれば、誰もが動こうとしないのは下手に動くとあちこちに問題が飛び火し、政治問題にもなりかねないからだ。
予測市場は大統領自身とその息子Jrにとっても積極的な現実のビジネスだ。
人を動かして一儲けすることなどいとも簡単にできる。
違法として訴追されても大統領の恩赦を期待できるため、誰もが違法行為等気にもしていない。
これが閣僚を含めたホワイトハウス関連の様々な贈収賄スキャンダルの背景にあることも確実のようだ。
もっとも金融犯罪を手掛けるニューヨーク南部地区連邦検事局(SDNY)は予測市場に関する政府職員によるインサイダー取引に関し、Polymarketに聞き取り調査を開始し、一部捜査を開始したという報道もある。
「いい加減にしてほしい(Enough is Enough!)」として、大声でこれを問題視し始めたのは、与野党を含む連邦上院・下院の議員達だ。
3月末には連邦議員40名が連名で商品先物取引委員会(CFTC)並びに政府倫理局(OGE)に対し、公開質問状を発出し、連邦政府職員による予測市場におけるインサイダー取引疑惑を調査し、違法行為を喚起するガイダンスを出すことと共に、厳格な調査開始を要求した。
もっとも40名全員が民主党員(!)故、何やら党派的な匂いがしないわけでもない。
野党民主党議員は現CFTC委員長の承認に際しては全員が反対投票をしており、そもそもトランプ寄りの政策には反対する風潮があるからだ。
イベント予測事業者にとってもインサイダー疑惑は致命的な問題になりかねない側面もある。
業界大手Kalshiは制度上も規約上もインサイダー取引は違法、Kalshi自身は厳格に廉潔性を管理しているという一大PR戦略をとり始めた。
CFTC監督下にあるKalshiの廉潔性は高く、悪いのはKalshiではなく、オフショア子会社による暗号資産プラットフォームである競合相手のPolymarketと暗に主張し始める始末で、何と業界内部で責任の擦り付け合いがヒートアップしている。
尚、イベント予測市場を禁止すべき、あるいは規制すべきとする法案がこの3月から4月上旬にかけてだけで何と14も連邦議会に上程される有様だ(審議を早める目的があるCompanion Billとして上下両院で出された同じ法案を含む。
一部は超党派による発案だ)。
内、4つの法案は、予測市場は賭博行為としてスポーツイベント予測契約を原則禁止の対象とするものになり、その他は連邦政府職員等による参加禁止規定やインサイダー取引規制、連邦先物商品取引法(CEA)を改正し、より厳格な規制の対象にする等の内容になる。
勿論これら全てが関連委員会で採択される術もなく、審議の対象にもならないものも多くでてくるはずだ(米国ではこういう類の法案をMessage Bill~単にメッセージを発するためだけの法案~と呼称する)。
一方、著名な議員によるSNSやオールドメデイアによる情報発信や疑惑指摘も出てきており、これは確実に影響力はある。
これら議員を後ろでサポートしているのは強力なロビー活動だ。
カジノ業界や部族カジノ業界は規制・禁止法案を通そうとしており、つぶそうと動いているのはKalshiをはじめとする予測市場事業者でどちらもロビー予算は潤沢にある。
では予測市場・イベント契約を規制・禁止する連邦法案が成立する可能性はあるのかに関しては極めて疑わしい。
ホワイトハウスと共和党は強固な推進派だ。
例え法案が可決されても、大統領が拒否権を発動し、著名を拒否するのは確実と思える。
では何が実現するのだろうか。
明らかにCFTCによるガイダンスや規則改定は実現する。
但しその基本は市場モニタリング・監視とチェックで、基本は事業者による自主規制に委ねるはずで、トランプ政権が継続する限り、これしかできないと思われる。
予測市場・イベント予測契約においてインサイダー取引を規制するためには、連邦政府による厳格な規制と監視の体制が不可避なのだが、今ある制度と体制では十分とはいえない。
州レベルでの独自の動きもでてきている。
カリフォルニア州のニューマン知事は3月27日に知事による行政令(Executive Order)を発出し、州政府職員が政府の非公開情報を利用し、何等かの便益・利益を取得することを禁止した。
いうまでもなく、これは予測市場・イベント予測契約に州政府職員が関与することを禁止する内容でもある。
連邦議会は何もやらず、連邦法では何も効果的な規制ができないならば、自分の権限が及ぶ州の公的職員には不正はさせないという政治的意思表示なのだろう。
市場を更に複雑化しかねないのは金融市場関係者による予測市場・イベント契約への極めて強いインタレストと参入意欲だ。
米国最大の金融機関であるJP Morgan ChaseのCEAは特定のイベントの将来予測の結果につき、消費者が取引できることは極めて合理的と将来自らも参入する意欲を示唆している。
もっともスポーツイベント予測と政治イベント予測はやらないと、一線を画している点は良識ある金融機関といえる。
但し、金融業界自体がこの予測市場に極めて強い関心を持ち始めていることは明らかだ。
これが事実とすれば市場は更に拡大する可能性が高い。
(美原 融)