2026-03-09
NEW354.米国スポーツイベント予測市場の動向②
1月末以降、米国商品先物市場取引委員会のSelig委員長は過激、かつ挑戦的な発言を繰り返している。
2月16日にはWall Street Journalに寄稿文をのせ「CFTCの優越権限を損ねさせる過剰なジェラシーをもった州政府に対し、最早座視するわけにはいかない」という主張をしたり、Bloombergのブログ 、Fox Business、NBCの番組にも積極的に出演し, スポーツイベント契約は飽く迄もデリバテイブ商品、これはCFTCの専権であり、この権威は守ると発言したり、Xにも画像のリンクや主張を投稿し、CFTCに挑戦する州政府に対し、See You in Courtという挑戦的な発言をする有様だ。
2月17日には連邦第9巡回控訴裁判所に対し、Kalshiの立場を擁護するAmicus Curiae(第三者による裁判所への意見提出)を提出、本格的に法廷係争へ介入する姿勢を明らかにした。
CFTCは連邦政府機関である以上、トランプ政権は本格的に予測市場事業者の立場を支援するということだろう。
尚、CFTC委員長の1月29日のイベントでの発言を巡り、連邦上院議員23名が連著し、2月13日付の公開書簡にて異例の反論をし、緊張が高まっている。
公開イベントでの新委員長の発言は、僅か二か月前の上院による委員長指名の為の公聴会における弁明とは大きく異なるではないかという指摘だ。
公聴会では中立的な立場をとり、「スポーツイベント契約は係争中でもあり、明確なポジションをとらない」とか「連邦議会や裁判所の判断に委ねる」という慎重な意見でもあった。
このCFTC委員長の変節を踏まえ、連邦上院議員はCFTCに対し、二つの行動を即刻とることを書面で要求した。
即ち、①連邦上院農業委員会で証言した通り、現在進行中のイベント予測契約関連係争事案でスポーツ、戦争、その他の禁止イベント等に係る法廷係争案件に安易に連邦機関としてのCFTCが関与することは慎むべき、②CFTCとしてイベント予測契約に関し、新たな規則を制定する場合、トッドフランク法制定時に策定した規則40.11の禁止項目の趣旨を堅持すること。
連邦商品先物取引法の議会の意図とは公益に反する項目はイベント契約の対象として上場し、売買取引の対象にすべきではないという内容だ。
これは連邦議会上院の中で、明確に新任CFTC委員長に対する反発が出てきたことを意味する。
もっともCFTC委員長が素直にかかる議員の見解に従うことなどはありえない。
この他、ユタ州知事、カリフォルニア州知事、その他の与野党の一部連邦議員もこれに同調する意見をSNSで投稿し始めている。
連邦議会でも動きが始まった。
下院のDina Titus議員(民主党・ネバダ州)は2月10日に議案HR7477(Fair Market & Sports Integrity Act 公正市場並びにスポーツ廉潔性法案)を連邦上院農業委員会上程した。
これは連邦商品先物取引法(CEA)を改正し、スポーツ試合に関連するイベント予測契約並びにカジノスタイルのゲームコンテンツの上場を禁止するものだ。
連邦最高裁によるPASPA(プロアマスポーツ保護法)違法判決以降、ゲームに関する管轄権は州政府にあり、連邦政府による所管対象ではなく、スポーツ関連試合をデリバテイブ取引の対象とすべきではないとし、デリバテイブ取引規制と州政府のゲーミング法規制の間に線を引き、明確に峻別しようとする内容でもある。
尚同様の法案をBlumenthal議員(民主党・コネチカット州)が上院に上程するとのことだ。
勿論、米国では議員立法を出したところで成立に至るのはごく僅かでしかなく、これが成立するか否かはわからない。
かつこれは上院民主党を主体にした動きで党派的な匂いもある。
大統領、ホワイトハウス並びにMEGA共和党員は確実にCFTC側につくだろうし、例え上下両院で法案が可決されても、大統領が拒否権を行使すればそれまでの話になりかねない。
利害関係が複雑になると、法案上程は花火の打ち上げみたいなもので、勢いはいいのだが、不発に終わることも数多い。
一方、州議会レベルでもスポーツイベント予測契約を規制したり、禁止したりする制度構築を図る動きもある。
ニューヨーク州では予測市場契約の一部を禁止し、その他は規制監督下におこうとする法案を2025年11月7日に上程した(AB A9251)。
個別のスポーツ試合の結果、試合中のイベント予測、自然災害等の事象予測、政治事象予測等は禁止の対象だが、トーナメントのスポーツ試合は認め、既に認められているスポーツブック免許と同等の規則(年齢制限21歳以上、自己排除規定の実施、預託金・消費額・消費時間の上限設定、与信禁止、広告規制等)を適用することで、免許の対象とし、規制下におくという考え方だ。
合法領域と違法領域の線引きをするという考え方になる。
一方イリノイ州では2026年2月3日にイベント予測契約を全面的に禁止する法案を上程した(HB5059)。
スポーツ、政治、自然災害、個人の死亡、証券・金融関連のイベント予測市場を全面的に禁止するという内容だ。
ハワイ州でもイベント予測契約は違法とする法案(HB2198)が審議されている。
これはスポーツ試合の結果、政治事象と政府行動、自然災害、戦争、テロ、個人の行動や死亡等の事象等を対象にするイベント予測契約全てを禁止するという内容になる。
ニュージャージ州でも同様な動きがある。
これら州法が成立するか否かに関しては、楽観的な見通しはない。
もっともこれら州政府主導による州法によるイベント市場契約の禁止法案や規制法案等は、現在の州政府規制当局・部族当局とイベント契約事業者との連邦レベルでの係争事案が解決されなければ、全く意味がない。
係争事由が上告となり、連邦最高裁の判断ということになれば、この判決次第では州法で禁止したところで、最高裁で否定されればそれまでの話だ。
これが何時実現するのか、どうなるのかは現状判断できにくい。
よってイベント予測契約は賭博、違法として禁止のための立法措置迄進む州が少ないのは、果たして今実行することに意味があるのか否かを判断できないからでもある。
要は模様眺めの州や州規制当局が多いのだ。
もっとも州法上違法と断定することのアナウンスメント効果はありそうだ。
(美原 融)