2026-01-05
NEW345.金持ちエリートと賭博勝ち分課税
米国の格差社会は益々広がるばかりだ。
僅か1%の富裕層が国の富の40%を保持している。
この格差はトランプ政権の中で更に増大している。
トランプ支持者のかなりの部分は格差社会の中で取り残された低所得層者たちだ。
サブプライム問題でも高額富裕層の銀行経営者は誰一人責任を問われていないが、多くの労働者たちは担保であった家屋資産没収の目にあっている。
著名大学卒、政財界のエリート、民主党支持層というのが典型的な批判の的、イスタブリッシュメントになってしまっている。
これら富裕層エリートの中には賭博遊興を楽しむ御仁もかなりいる模様だ。
使い道に困る金を所持しているわけで勿論彼らがお金をばらまき遊ぶことを否定することはできない。
昨年巷の話題になったのはイリノイ州知事のJB Pritzkerだろう。
民主党の強い地盤故、勿論彼はバリバリの民主党員で、イリノイ州の民主党指導者のひとりだ。
かつハイアットホテルグループを持つビジネスファミリーの一員、即ち大金持ちの御曹司である。
保持するネットワースは390億㌦で、知事就任に際し、自分の資産は受益者にその使途を教えないBlind Trustに全額信託し、利害相反を避けている。
当然のことながら知事給与等は辞退し、もらっていない。
お金等腐るほどあるのだ。
2024年申告所得は1070万㌦だが、ほとんどが信託からの配当金になる。
この知事が税務申告で140万㌦の賭博の勝ち分があることを申告したという事実を昨年10月に公表したため一大ニュースとなった。
彼は著名な政治家知事で現在二期目である。
2026年には三期目にもチャレンジするとのことだが、大統領選への出馬?も噂されるくらいの御仁だ。
ラスベガスに家族と友達と一回だけバカンスに行った際、ブラックジャックで、「たまたまラッキーであっただけ」という本人の説明になる。
一回の訪問で年収の1割以上を稼いだことになる。
何日間滞在したのか、何時間遊んだのか等は不明。
勿論一回ごとの賭け金単価も不明。
但し、ブラックジャックで1070万㌦の勝ち分というのは生半可な数値ではない。
ブラックジャック歴は20年以上、ラスベガスでは著名なWhales(大金持ちの上客)として知られている。
どう遊んだのかは不明だが、ラスベガスだとSingle Bet(一回の賭け金単価)で2万5000㌦は可能だし、ハイローラーとなると10万㌦ということもありうる。
さすがに朝から晩まで賭博にふけるという御仁ではなさそうなので、この知事の賭け事は、賭け金単価がかなり高額のブラックジャックであったことが想定できる。
ま、大金持ちのお遊びということなのだろうがどう考えても常識を超える。
賭博の勝ちは全てチャリテイーに寄付するという知事の説明だが、どこに寄付するのかの開示は全くない。
別に自分の金故、何に使ってもいいのだが、賭博の勝ち金、しかも巨額の勝ち金となると、立場上嫉みや嫌味も出てきてしまうかもしれないと思ったのかもしれない。
著名人がカジノで大金をすっても、本人が語らなければ誰もわからないし、ニュースにもならない。
一方逆に著名人がカジノで大儲けしたり、一般人でも大儲けしたりする場合にはニュース価値があり、ニュースになる。
但し、相手が著名な政治家や州知事である場合には、米国民はどう思うのであろうか。
ところで米国では、賭博行為で得た勝ち分は、プロの賭博師以外の普通のプレーヤーの場合は、全額連邦所得課税の対象となり、書式1040(Individual Income Tax Return)のスケジュール1(Other Income)により申告課税の対象となる。
申告上、項目別控除(Itemized Deduction)を選択すると、賭博での損失額を課税所得から控除できるのだが、知事はこんなせこいことはしないだろう。
税率は全体所得の額次第だ。
一方ややこしいことに賭け事の中でも特定の賭け事、即ちビンゴ、スロットマシーン($1200以上の勝ち)、ケノ($1500以上の勝ち)、ポーカートーナメント($5000以上の勝ち)、上記以外(例えば競馬、犬競争、ジャィアライ、賭け金プール、ロッテリー等では$600以上かつ賭け金の300倍以上の勝ち)に関しては。
税率24%で連邦源泉課税が課され、胴元(ハウス)が徴収し、顧客と内国歳入庁に対し書式W2G書式を発行する。
上記の内、スロットマシーンの高額勝ち分(Jackpot)のIRSに対する胴元による報告義務、源泉徴収の対象となる最低勝ち金額はトランプのOBBBA(一つの大きく、きれいな予算法案)Sec 70433 により2026年1月1日より$2000に引き上げられた。
かつこれは今後毎年インフレに基づき調整、増額されることになる(12月8日付IRSガイダンス)。
さてこのカジノにおける勝ち分に対する連邦所得課税だが、ひょっとするとこれがなくなる可能性がでてきて若干の騒ぎになっている。
事の発端はあいもかわらずトランプ大統領で
2025年12月11日移動中のエアーフォースワン(大統領専用機)の中で記者団の取材に応じ、「カジノの勝ち金に対する課税」につき、意見を問われた際、「チップは課税されてない、社会保障にも税はない、残業労働時間賃金も課税されていないではないか」とし、笑いながら、「顧客の勝ち分への課税?考えてみる」という発言だ。
やるという確約でもなく、いつ実行するのかの発言もないのだが、昨年デイーラーやレストラン従事者等へのチップや残業時間賃金への所得非課税を選挙途上で公言し、これを実現したトランプのことだ。
すわカジノの勝ち金は無税となる!と市場の一部では大騒ぎとなった。
トランプは何をするか予測もつかないのだ。
市場ではこれは賭博顧客勝ち分に対し、連邦所得税を課さないとする布石ではないかと勘繰られている。
こうなると今まで事業者の義務であった内国歳入庁(IRS)に対する報告義務や源泉税徴収義務が無くなることを意味する。
一般顧客にとり書式W2Gもなくなり、損益通算もなくなるわけだ。
IRSはカジノ行為からできる限り税金を取り立てることに長年来執着してきた経緯があり、これではIRSによる賭博行為に関する課税の基本スタンスを変えざるを得なくなる。
でもこれは本当に実現するだろうか。
通常のプレーヤーは手順が簡素化され、勝てば元手も増えるわけで喜ぶはずだ。
一方カジノでの損益を通算し、申告していたプレーヤーにはリスクは増えるかもしれない。
(美原 融)