2025-09-08
328.オフショア・オンライン・カジノ①:類型と特異性
サイバー世界の特色を利用して、自国外の市場に向けてオンライン賭博を提供する免許を付与する国にも様々なタイプがあり、必ずしも同一ではない。
一国内のみを市場とする制度であれば、事業者の廉潔性を検証し、サーバーを自国に設置させ、ソフトウエアやログデータ、顧客データを規制・監視・監督下におけば、まずおかしなことは起こらないし、相応の規制の効果はある。
一方これがインターネットを通じ、自国外の市場に賭博サービスを提供する免許である場合、免許を付与する目的が単純に免許料や税収の徴収になり、規制の内容そのものが甘くなる傾向がある。
自国の国民を賭博が与えうる危害から守るという概念そのものが欠如し、考慮する必要もなくなるからだ。
ここでは事業者の廉潔性を検証する必要性もない。
国際機関であるFATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)や国連等の国際的な機関は制度の緩いオフショアを市場対象とするオンライン賭博の提供は不透明、不正や詐欺、マネーロンダリングの温床になっているという厳しい見方をとっている。
規制が緩ければ、犯罪組織や廉潔性がない主体がこの世界に介在してくる可能性を否定できない。
オフショアオンライン賭博とは一般的にはこのように世界で見られていることを理解する必要がある。
EU加盟国の中で自国外のサイバー世界にオンラインで賭博サービスを提供する免許を付与しているのはまともな国では英国とマルタだけになる。
これ以外には英国の海外領土となるジブラルタル、英国王室の属領となるマン島等なり、極めて例外的だ。
EUの正式なメンバーとは言えないが、周辺にくっついている国ともいえない地域になり、規制も緩く、EUをも市場として包摂できる立ち位置を狙ったともいえる。
英国でも類似免許は取得できうるが、税率も高く、免許取得にも一定の規律や規範が要求されるため、事業者の人気は低い。
但し、英国での免許保持はそれなりに信用度が高く、箔がつくというメリットもある。
一方マルタは地中海の小国で自国市場は無きに等しく、EUを含めたサイバー世界全体を市場とする免許になる。
EUの加盟国でEU内部での自由な活動を保証されるというメリットがあり、税率は5%と安く、規制・規律も他のEU諸国と比較すると極めて甘い。
マルタ事業者の廉潔性や行動はEU各国との軋轢をもたらしており、必ずしも好感度をもって市場から見られているわけではない。
オーストラリアも自国民に対してはオンライン賭博提供は禁止なのだが、外国市場向けにオンラインで賭博提供することが可能な仕組みの免許を提供している。
これも先進国によるオフショア免許付与なのだが、オーストラリア国民に基本的に危害をもたらすわけではなく、規律自体も甘い。
米国市場では違法行為として係争事由をもたらしている豪州事業者もいる。
中南米のカリブ海の小国群はインターネットによる決済の仕組みが市場で確立した早い段階で、主に隣接する巨大な米国市場を対象にオンラインで賭博行為を提供する免許を付与する仕組みで様々な事業者を引き寄せる政策をとった。
例えばアンテイグワバブーダ、パナマ、コスタリカ、オランダ領キュラソー等だ。
このほかインド洋コモロ連合のアジュアン島等もこの範疇に入る。
これらの小国はオンライン賭博の免許を廉潔性の検証もされていない事業者に、詳細な規制もないままに提供している国とみなすことが適切かもしれない。
カナダではオンライン賭博の許諾は州ごとに、いまだ一部の州内でしか認められていないが、オンタリオ州の原住民部族であるカナワケ族は1999年以降州法・連邦法の独自の解釈により部族免許として(連邦・州の許諾無しに)サイバー世界に対する賭博免許提供を始めた主体だ。
特権的な原住民部族の立場を利用し、かかる免許提供ビジネスを始めたわけである。
なんと40の事業者に210のプラットフォームを提供しており、税金はなく申請料・年免許料のみで世界に向けて提供できる。
一方アジアでは、フィリッピンが2003年頃から経済特区の枠組みでオフショア(外国)向けのオンライン賭博免許を正式な免許としてかかる事業を認めた唯一の国になる。
税率は安く、規制も緩かったため最盛期には300以上の事業者を集め、日本の反社組織と組んで日本人向けに違法なライブストリーミング等を提供してきたことでも知られている。
その後国の規制機関であるPAGCORもオフショア向けのオンライン賭博事業者免許を制度的に認めるに至り、中国系事業者が中国市場を顧客対象にするオフショアビジネスモデルが成立し、大きな市場を構成した。
中国市場は巨大な市場だが、問題は賭博行為が認められていない中国市場に対し、海外から賭博行為を提供する行為で当然決済は地下銀行や闇決済、マネーロンダリングが前提となり、とんでもない違法行為の横行になる。
事は中国~フィリッピンの外交問題にまで発展し、フィリッピン国内でも様々な違法行為が露呈するに至り、2024年の大統領令でこれらオフショア向けの賭博免許は全て廃止ということになった。
もっともこれだけでは終わらず、中国系犯罪組織はカンボジア、ミャンマー、ラオス等に拠点を移し、反政府勢力や軍部と協力し、ネットを利用したオンラインカジノや様々な詐欺行為、マネーロンダリング等を実践し、国際的な批判を浴びているのが現実である。
オフショアから賭博行為を提供する主体はこのように、合法な免許を保持した事業者等と誇張しているが、実態は名目的なものでしかない。
一見合法的に見えるが、他国の賭博規制等無視し、違法に賭博行為を提供する主体でしかないことが多い。
反社会的な勢力が裏にいることも多く、彼らには倫理的慣行も遵法意識もない。
まともな主体と判断しては絶対ダメだ。
断固として彼らの市場参入を食い止め、排除することが本来あるべき一国の施策にもなる。
(美原 融)