National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 346.巨大都市ニューヨーク IR騒動

2026-01-12

NEW

346.巨大都市ニューヨーク IR騒動

法律ができてから何と10年、ようやく全米最大都市ニューヨークでのIRが実現に向かい動き始めた。
全米のカジノ事業者の注目を集めたこのニューヨーク市・近郊IRの枠は3つ。
当初は100社以上が興味を示したのだが、地点の選定や土地の確保、地元同意取得、複雑な認可手続き、傾注する費用と時間等ハードルは極めて高く、最終的に計画を提出したのは11社のみとなった。
この内大手のSands社、Wynn社は巨額な開発費用を支出したにも拘らず地域社会との合意形成の難しさや反対運動や費用と時間がかかりすぎることに辟易し、2025年春の段階で本件より撤退するという有様だ。
残った9社だが、提案として受け付ける前提として市によるゾーニング規制の対象となる場合には申請の上変更認可を取得すること、また州・市・議会議員・地域代表からなる地域諮問委員会(CAC)による審査・評価を得て過半数の同意を得る必要がある。
よって競争に参加できるまでのハードルは極めて高い仕組みだ。

マンハッタン島で提案した3事業者、ブルックリン区コニーアイランド島を提案した事業者はいずれも地域諮問委員会(CAC)の賛同を得られず、実質的な失格だ。
評決は州知事・市長が送り込んだ2人は全ての案件に賛同したのだが、残りの地域代表は全員反対を表明した。
それだけ地域住民の反対は激しかったことになる。
9月末時点で事前の認可を得て、残ったのは4社(ブロンクス区を提案したBally’s、クインズ区提案のHard Rock/S.Cohen、やはりクインズ区を提案したGenting、ランカスター郡提案のMGM)でこの4社の提案が受理され、州のゲーミング施設地域選定委員会(GFLB)による審査・評価の対象になった。
ところが最終修正提案提出日に本命とみられていたMGM社が何と撤退を表明!撤退の理由は、MGM以外はいずれもNY市内、郊外立地では競争上不利で、投資に対し期待収益が見合わないということだ。
最後の段階での撤退は裏切りとして地域社会の猛反発を食らうことになった。
結果、3つの枠に3社が残るという、競争もへったくれもない事態である。
12月1日に公開の場で州ゲーミング施設地域選定委員会の最終会合が開かれたが、満場一致で3社が選定され、州ゲーミング委員会(NYSGC)に推奨されることに。
もっともこの会合は事前準備した原稿を読み上げるだけの形式的委員会で、決定と同時に反対派が一斉に「恥を知れ」のコールが1分続く等寸劇を見ているようなものだった。
州政府や市当局にとり、税収増をもたらす三つのIRは是非とも実現したい案件になる。
なにしろ免許付与と同時に州政府には総額15億㌦の免許料収入が得られるのだ。

満場一致で推薦に至ったのだが、後刻公表されたゲーミング施設地域選定委員会の報告書はよく見ると一筋縄ではいかない様々な課題を抱えていることが明白になった。
この案件は免許料も税率も最低レベルは示唆があるが、基本的には自由提案だ。
この結果、3社いずれも異なる税率を提案し、至近距離で競合する事業者毎に税率が異なるという奇妙な仕組みになってしまった。
おまけにGentingは最終修正提案の中で従来以上に税率を上乗せするという提案をしたが、もし至近距離に競合する事業者に免許が付与される場合、同等な競争条件を維持するため、税率を下げられることを条件付けた。
地域選定委員会は提案した税率をもとに経済効果や税収効果を評価しており、この前提を崩すべきではないと問答無用のコメントを付した。
Hard Rock/Cohenの提案は地域諮問委員会(CAC)との様々な地域貢献のコミットメントが最終提案に含まれていないことを指摘され、審査の前提条件が確実に履行されることは絶対要件と手厳しい。
各社の開業時期提案もかなり野心的で、施設整備に必要な諸手続きを考えても、遅れるのではないかとする指摘もある。
本格施設の開業は3つとも2030年前半とされているが、Genting社のみは2026年6月には一部開業、残りは段階的に実現としている。
これは既存のホテル施設の一部を改修し、ここで他社より4年も早く一部開業を実現し、尚かつここで得た収益を新規施設整備に振り当てるというものだ。
いかにもGentingらしいが、不足分は親会社が保証するとはいっても、資金調達の不安定性を指摘された。
とにかく既存のホテルをカジノ施設化し、ここでまず儲けて、自転車操業的にこれを追加投資に充てるわけで、これは健全といえるのかという課題になる。
Bally’sの提案はトランプが所有するゴルフ場のリース権を得て、これに併設するIRとなるのだが、市に対するゾーニング変更申請で関連委員会により否決され、本件これで終わりかと思われた案件だ。
ところがEric Adams NY市長が二度に亘り拒否権を発動し、無理やり認めている。
このリース契約はカジノ免許取得と同時に1.15億㌦の褒賞金をトランプに支払う約定付で、大統領家族に金が入る(この約定を著名したのは何とトランプJrだ)。
もっともこのNY市長は賄賂疑惑により連邦地裁より訴追され、刑務所行きかと思われていたのだが、大統領の指示により訴追は棄却され、某国大使への栄転という話もあったくらいの御仁故、裏でなにかがあったのかもしれない。

12月15日に公開の場で実施された州ゲーミング委員会の最終会合では、ゲーミング施設地域選定委員会の推奨を全て認め、条件付免許付与ということになった。
この条件とは①委員会の認証を得た独立したモニタリング主体が事業者の法・規則・募集要項・提案等の確約を確実に履行することをモニタリングすること、②関係者でモニタリング契約を締結すること、③地域との確約に関しては5年間に亘り、その履行をモニタリングし、四半期毎にその進捗は州ゲーミング委員会に報告されること、④確約が履行されない場合には。
例え建設途上であっても州ゲーミング委員会は免許を剥奪しうること等になる。
結構厳格なモニタリングになりそうだが、一端提案し、コミットした以上、確実にこれを履行しろということだ。
最低基準は公が決めたが、税率も含め全てが事業者の提案次第、税率も事業者負担も事業者毎に異なるという珍しい税度が実践される。
とはいえ前途は多難だ。
尚、この州ゲーミング委員会ではなぜかHard Rock/Cohenの採決の時に飲み、反対派が「恥をしれ!億万長者が貧乏人から金を取り立てて何をするのだ!」というヤジがあったのだが、これもプロトコールみたいなもので最初から織り込み済みなのかもしれない。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top