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2026-02-16

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351.イベント予測契約:インサイダー取引疑惑

イベント予測契約でのインサイダー取引疑惑はさすがに大きくなりつつあり、業界最大手のKalshiのCEO自身が明確な対応策を考えざるを得ない状況に陥っている。
かかることが頻繁に行われれば信頼を損ない、顧客間の不公平感が高まるとともに、取引量が減り、市場の流動性(Liquidity)も減り、市場自体が成立しにくくなってしまう。
また現状のまま何もしなければ、悪意をもって行動する個人におかしなインセンテイブを与えてしまうことにもなりかねない。
もっとも2025年の1年間の様々なイベント予測契約の実践でKalshi自身が、おかしな取引としてインサイダー疑惑を認知し、調査したのは200件以上あるという。
この場合、顧客勘定を凍結したり、規制当局に報告したりするとともに、司法当局による訴追等に至った事案もある模様だ。
これら詳細情報は必ずしも明らかにされていない。
もっとも何処までKalshiが真面目に違法行為を特定し、摘発したかは解からない。
Kalshiは今問題となっているのはオフショアから(米国の規制対象外として)サービスを提供しているPolymarketで、米国CFTCの監督下にあるKalshiではないとしているのだが、米国民がオフショアのサイトにアクセスし、問題を起こしている以上、イベント予測契約の在り方が問題視されるのは当たり前の話だ。
イベント予測契約とは情報の非対称性を商品化しているわけで、事実を知る内部者にとってみれば、リスクなし、Yes or Noの対応のみで100%の利益を取得できる。
いわば構造的にインサイダー取引を発生しやすい仕組みともいえる。
目立たない様にやればばれることはないが、悪事をする者は$10や$25等の小銭は絶対使わない。
一方向に大口のポジションのイベント予測契約を高額で買う。
こうなるとマッチする相手は市場には存在しない故、Market Makerが流動性を担保し、買い支えることになるため、直ちにこの情報は監視網に引っ掛かり、疑わしい取引として認知されてしまう。

市場の不安動向を察し、Kalshi CEOは、以後Kalshiとしても内部情報取引に関し、積極的な対応策をとることを公言した。
これは①Kalshiから独立した監視委員会を設ける。
監視委員会は市場のモニター、内部情報取引の特定、調査を担う。
②市場のモニター、疑わしい取引を特定するために外部専門企業(Solidus Labs並びにWharton Forensic Analytic Lab)と協力体制をとる。
③KalshiとしてのEnforcementの体制をとるため専門的な幹部を雇用するという三つの施策になる。
内、Solidus Labsは証券市場の監視を担う専門企業で、疑わしい取引の特定、調査等を担うプラットフォームがあり、これを利用するようだ。
イベント予測市場も既に数千以上の市場が存在し、政治、ファイナンス、スポーツ試合等その対象は多岐に亘る。
独立した監査委員会と専門的な調査協力企業パートナー、自社の法遵守体制の強化という三本柱で対処するというものだ。
疑わしい取引の特定はリアルタイムで疑いのある取引パターンを特定するパターン認識モデルを用いる。
インサイダー取引は必ず高額取引で、通常とは異なるパターンを示すため、これを特定するわけだ。
案件を特定すると、市場調査チームが動き、KYCデータ、資金ソース、過去の取引履歴、取引自体の合理性等を検証・調査する。
明らかにうたがわしい場合には、連邦機関であるCFTCに報告、その後必要な場合には民事ないしは刑事訴追という手順になるという立て付けになる。
外部独立監査委員会は四半期毎に外部弁護士に活動報告、統計データ、調査データの公表、問題があった事案等の公表をするとのことである。
もちろんこれは一企業による対応でしかすぎず、一種の自主規制でしかなく、強制力もなければ法的義務もない。
どこまで実施するのか、効果があるのか、これで十分なのかに関しては外部からはまず理解できない。

本来なら連邦商品先物取引法(CEA)を改正し、証券市場と同様のインサイダー取引規制を設けるべきであろう。
規制主体となる連邦商品先物取引委員会(CFTC)がこれに基づき、一定の規制なり、ガイドラインを設け、業全体、全ての予測市場参加企業に同一の規律を設け、それを順守せしめることがあるべき姿になる。
そもそも現状のCFTC自体に市場を監視し、内部情報を摘発する能力もなければ、その体制もない。
考慮すべき規制とは、①株式と同様のインサイダー取引規制をイベント予測契約にも適用すること、②市場に参加できる主体を規制すること(公務員、軍、規制関係者等機微な秘匿情報に接しうる主体の市場への参加を禁止する)、③イベント上場基準を設定すること(公益に反するイベントや内部情報が利用されやすいイベントを上場禁止とすること)、④取引監視システム・体制の精緻化・高度化、⑤規制機関による監視・制裁体制の整備と強化、⑤違法行為への制裁・法執行規定の明確化等になる。
一方、これに呼応し、事業者側も、①本人確認や資金ソースのチェック(KYC)、②VPN(Virtual Private Network)やオフショア経由によるアクセスの制限、③取引ポジションの上限額設定やレバレッジ取引の制限(これによりインサイダー取引をする誘因を減らすことができる)④異常を検知する事業者としての監視システムの精緻化、⑤規制当局や法執行当局との緊密な協力・連携等の体制具備等が必要になってくる。
何を何処までルール化できるかは今後の課題だ。

2025年末現在イベント予測契約市場は既に月間100億㌦規模の取引量となる市場として存在する。
取引量が増えれば、内部情報を持つ者が利益を取得するというインセンテイブが強く働いてしまうのが実態だ。
イベント予測市場は、政治や軍事イベント等の情報の扱いに関してはどうしてもグレーゾーンが生まれてしまい、インサイダー取引も生じやすい。
制度も規制も未整備のまま、市場自体が膨れ上がりつつある。
早晩何らかの対応策が求められるようになるのだろう。

(美原 融)

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