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2025-07-21

321.オンラインギャンブル規制④:インターネットサイト・ブロッキングの法制?②

総務省のオンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会は7月8日に中間論点整理を公表した。
予想通り、断定的な結論はなく、今後の検討の方向性を示した内容になる。
委員会の意図と指摘は的確と判断するのだが、ブロッキングの法的制約事項や技術的なブロッキング手法の可否等に議論が集中し、何か欠けていると思ってしまうのだがどうだろうか。
このままいくと何らかの法的規範を設け、違法なサイトをブロッキングすることを可能とし、これを実施する主体としてISPを想定し、ISPに対し何等かの義務や規範を設ければいいと考えているだけではないかと勘繰られる。
サイバー世界ではISPはプロバイダーとして善意の第三者のごとき存在でもあり、彼らに過剰な義務や責務を制度として課すことは間違っている。
ISPがネット社会を監視したり、自らの判断で調査し、違法サイトを特定し、ブロッキングしたりする義務を負うという制度的枠組みや慣行は世界のどこにも存在しない。
そもそもオンラインギャンブルはなぜ違法でサイトをブロックする法的根拠はどうあるべきか、誰がどういう手順で何をするのか、関係する主体は如何なる責務や義務を担うのかという議論が抜け落ちており、全体像が見えにくい。
これでは制度として何を創出しようとしているのか、あるいはややこしい制度はできれば作らず、ISPによる自主規制や業界規制でごまかそうとしているのかどちらの方向性にあるのかがよく見えない。
何らかの制度的措置が必要というのは総論であって、各論的には様々な制約要因(憲法上の通信の秘密に関する課題、プライバシーの侵害、検閲に対する懸念、情報遺漏リスク、オーバーブロッキング/アンダーブロッキング、他の手法と比較しブロッキングの有効性・効果性等)が存在し、確かに単純には解決できにくい側面が多い。
特に我が国では刑法では正当行為ではない賭博は違法とし、今次国会で成立したギャンブル等依存症対策基本法改正により、オンライン賭博の施行、これを幇助する行為等もすべて違法ということにはなっている。
但し、罰則もなければ、誰がどのようにこの法律の監視・執行を担うかの規定はない。
警察当局とて、違法、違法とはいっても自らが積極的に市場の監視や法の執行を担う余裕があるとは到底思えない。
オンライン賭博は犯罪としてあらゆる周知徹底・啓発により国民を委縮させ、できる限り違法行為を抑止できればいいというのが本音なのだろう。
総務省のみでは全体の法的枠組みは構築できず、議会や他省庁の動向等に配慮しつつ、受動的に対応していくというスタンスの様に思える。

免許を付与することによりオンライン賭博を限定的に特定事業者に認めている先進諸外国では、免許を得ず国民にオンライン賭博を提供する国内外の事業者を法的に明確な形で、その行為を違法と定義し、その排除のための様々な措置を構築している。
自国の法的管轄外であるオフショアからのオンライン賭博の提供やこれに関わるあらゆる報道媒体による誘導・宣伝広告、サイトへの誘導や顧客サービスの提供・決済への関与やその代行等もその判断基準を含めて法的に明確にその違法性や排除の在り方を定義することが可能になる。
認めているオンライン賭博行為がある以上、認められていないオフショアからのオンライン賭博に対してはあらゆる法的な排除や抑止の手段が取れるわけだ。
諸外国では市場を監視し、事実と証拠により違法サイトを特定する主体は単なる許認可官庁ではなく、このオンライン賭博免許を付与する賭博規制主体になる。
違法サイトの排除並びにサイトアクセスブロック判断の義務と責任はあくまでも賭博規制主体ないしは裁判所にあり、ISPは飽く迄もブロック命令を粛々と実施する義務のみを担う。
ISPの責任範囲は限定され、訴訟リスクも限定されるはずだ。

もっともこの実践の在り方は国によっても大きく異なる。
年に二けたしかサイトをブロックしていない国があるが、これは裁判所の判断を待たねばならばならないため、時間がかかりすぎるだけの話だ。
但し、これでは違法事業者はループホールを見つけ、逃げるだけに終わり、ブロックの効果は低い。
一方年に1000件以上のサイトをブロックしている国もあるのだが、これは効果の程は疑問だがサイト特定のためのソフトウエアを用い、専任部隊を起用しサイトの特定を行い、連日違法事業者といたちごっこをしている国の場合である。
ブロックの対象となったサイトはブラックリストとして公表する慣例が行われ、違法サイトとしてアクセスしないよう告知しているのだが、極めてアナログ的でこれも効果は疑わしい。
果たしてかかる現状ではサイトブロッキングは有効な手段といえるのか、実効性はあるのかという懸念が生じる。
但し、一般的な理解としては、①ブロッキング等の対策を進めれば、アドホークで違法オンラインサイトへアクセスするユーザーや若年層は確実に減少しうる、②但し、悪意をもったオフショア事業者や国内ユーザーに対しては対抗できにくい、③やはり、アクセスブロック、幇助サイト等のブロック、支払いブロック等複数の対策を同時平行的に措置することで、あらゆる角度から締め付けと抑制を行い、全体の弊害を縮小化することが、違法サイトを締め出すことに繋がるということになる。
この意味ではサイトアクセスブロッキングを否定的にとらえるべきではない。
現状完璧な手段ではないが、一定の効果はあり、今後技術の発展等により他の効果的な手法と併用することで、さらなる効果をもたあす余地も将来的にはあるといえる。

尚、違法性の特定と判断を裁判所に委ねる考え(例えばデンマーク、ドイツ等)は公正さという観点からは好ましいが、実務的には知識、経験、事実と証拠の認定等の問題もある。
国によっては規制機関によるおとり捜査により、確実に賭博行為を提供しているという証拠を固める場合もある。
果たしてそこまで慎重なステップをとらなくとも事実認定はできるのではないかとも思う。
先進諸外国の趨勢は、裁判所ではなく国の規制機関に権限を委ね、サイトの特定から、摘発、サイトブロック迄の時間をできる限り短くする方向性にある(例えばフランス、スエーデン、ノルウエー、ベルギー等)。

(美原 融)

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