2025-12-15
342.ゲームと賭博⑪:Free to Play(F2P)Sweepstake Casino④
Sweepstake Casinoは2019年から2022年迄年率89%の成長を遂げたと言われており、現在では巨大な市場に迄成長している(全世界の市場の91%は米国で如何に米国市民の人気を博したかが解る)。
市場の拡大に伴い、様々な問題が指摘されるようになる。
一般的に問題とされたのは、①一般市民の不審、誤解(違法なのか、合法なのか極めて分かりにくいこと)、②州政府規制環境の不備(殆どカジノと同様のゲームが規制環境外にあり、放置されてきたこと、単純な期限を区切る販売促進ではなく、永続的に提供されているプロモーションであること、顧客に対する92%のペイアウト率はカジノと類似的になること)、③納税回避行動(賭博行為に課される収税を回避する行動となっていること)、④未成年保護不徹底(厳格な本人確認手順をとらず、未成年が参加できる環境であること)、⑤賭博依存症への対応不足(依存に対する対応策が何らなされていないこと)、⑥既存の合法的事業者との不公正な競争(既存の合法的事業者の収益を奪っていること)等になる。
さすがにこうなると米国内でもこれはやはり賭博類似行為ではないのかとか、法のループホールではないか等その遵法性を懸念し、排除しようとする様々な動きが出てくるのは自然の流れかもしれない。
Sweepstakeを排除しようとする動きには三つのアプローチがある。
即ち、①新たな法制度を設け、Sweepstake Casinoの提供を明確な違法行為と定義し、その排除を図ること、②既存の法制度の解釈より、Sweepstake Casinoを違法と判断し、賭博関連規制機関ないしは州司法長官が州内で活動する当該事業者に対し、事業停止退出警告(Cease & Desist Letter)ないしは命令(Order)を発出し、州からの事業者の退出を迫ること、③市民等からの個人ないしは組織による個人ないしは集団訴訟としての民事訴訟を起こし、救済を求め当該事業者の退出・撤退を迫ることである。
内、①は既存の法制度に追加的に条文を加えたり、全く新たにSportsbookやiGaming制度を設ける場合に、追加的にSweepstake Casinoを禁止する条文を追加したりする。
但し、法案を議員が発議、審議、可決し、知事が著名するという手順をとるため時間も手続きもかなりかかってしまう。
②は規制機関や州司法省が既存の一般法体系の解釈から違法と判断し、事業停止退出警告(Cease & Desist Letter)を発出し、当該州からの事業者の撤退を迫る考えになる。
通常2週間の猶予を与え、警告に応じない場合には更なる法的手段をもいとわないというスタンスを取る。
この場合、事業者の協力者(例えばSNS等のプラットフォーム提供者、決済関連関与者等を含む)をも対象とすることもある。
③は若干奇異にも覚えるが、州によっては違法ネット賭博に参加し、損害を被ったとして顧客個人ないしは複数の顧客の集団訴訟として損害賠償請求訴訟を起こし、同時に州からの退出を迫る考えになる。
違法賭博に自ら参加しながら、損を被ったので賭け金を返せと主張しているわけで日本人的感覚からすればちょっと考えられないが、かかる手法も成立する。
もっともカリフォルニア州とフロリダ州では、賭博行為による損失は、救済の対象にならないという法規定が存在し、この手法は利用できない。
但し特定の個人の利害ではなく社会全体の観点から)違法賭博を放置することは公共の利益に反するとして、公的差し止め命令(Public Injunction Relief)を求める訴訟はどの州でも可能である。
2025年現在では、各州で100件以上の様々なSweepstake関連訴訟が生じており、この趨勢は止まりそうもない。
最近の事例を見てみよう。
カリフォルニアでは何と犬猿の仲であったカードルーム事業者と部族カジノ施設が組んで、Sweepstake Casino事業者を訴える訴訟が起こった。
規制と課税を逃れるグレーな市場で賭博行為を提供し、自分達の権益を侵害しているというわけだ。
マサチュセッツ州の集団訴訟案件で証拠として提示された書類には被告の親会社豪州VGW社が豪州のProspectusの中で堂々とSweepstake CasinoはInternet Cafeと同じビジネスモデルと豪語している。
これでは自ら違法行為を米国で行っていると宣言しているに近い。
2025年5月にはカリフォルニア州でStake.US(キプロス企業)、Pulz.Com(ジブラルタルを拠点とする英国免許取得企業)が違法事業者として個人により公的差し止め命令(Public Injunction Relief)を求めて起訴されている。
尚、集団訴訟を受け、和解金を支払い、その州から撤退した事業者もいる。
もっとも非を認めたわけではなく、係争に時間と金をかけたくないということだが、最終的にその州の事業をたたんだ結果に終わっている。
今後共、類似的な係争案件は全米各地で生じると想定され、Sweepstake Casinoも安定的、健全なビジネスであるとは言い難くなりつつある。
もっとも米国の司法環境では単純に事が解決するとは到底考えられず、グレーな状況は当面続きそうだ。
一部の州では明示的な禁止措置がとられた例があることは既に述べた通りだ。
また制度的措置はないのだが、規制機関や州司法省の言動等からSweepstake Casino事業者が近づかない州(アラバマ州、西バージニア州、モンタナ州、ケンタッキー州等)や事業者が自主的に撤退した州も増えつつある。
この課題をどう解決するのかという見通しは当面見えそうにもない。
事業者から見れば、制度も訴訟判決も州毎にバラバラでもあり、一つの州から撤退しても他の州で事業を活性化すればよいということなのであろう。
また問題を認知しない州も存在し、州際間での一貫性・整合性はない。
一方事業者の方も業界団体を組成し(Social Gaming Leadership Alliance、Social and Promotional Gaming Association)これは単なるゲームにすぎず規制の対象にすべきではないとして活発なロビーイング活動を実践している。
混乱は当面続きそうである。
(美原 融)