2026-05-04
361.イベント予測市場⑨:4月~熱い議論の始まり
米国議会の常任委員会による閣僚や政府機関トップを召喚する公聴会はネット上で全てが公開されているが、一種の政治ショーみたいなものだ。
冒頭陳述はメモの棒読み、議員の発言時間は一人5分、自分の番が終わるとすぐいなくなるし、最初から最後までいる議員は与党の委員長(Chair)や野党の最古参議員(Ranking Member)位のものだ。
4月16日連邦下院農業委員会は連邦商品先物取引委員会(CFTC)の新委員長Mike Seligを就任後初めて召喚した。
商品先物取引は農産物の先物市場から始まったため、農業委員会管轄となる。
本来地味な分野、目立たない国の機関なのだが、金融派生商品も先物の対象に含まれるようになり、注目を集めるようになってきたわけだ。
さてこの公聴会の内容だが結構面白い質疑応答等もあったのだが、所詮一人5分となると、自分の主張を展開しつつ、質問でうまく答えを得るというのはかなり難しい。
全く回答にもならない回答ではぐらかされてしまうことが多くなるからだ。
こうなるとお互いがお互いの主張を一方的に述べるだけで議論にはならなくなる。
米国人はかかる弁論に関しては、日本人と比較し、抜群にうまい。
CFTCは本来委員5人で構成され、党派が偏らない人選をすることが本来の在り方なのだが、相も変わらず、他の委員の人選はされず、委員長一人のみ、人員は30%も削減されており、これで様々な課題に対処できる能力・体制なのかということが一つの課題となった。
議論も無しに1人の判断でルールメーキングをしてもいいものか、本来超党派の構成で委員会を運営すべきなのにという質問には、人事は大統領の専権、誰であっても任命されれば協力して運営にあたるというそっけない返事だ。
最大の問題になったのはやはりインサイダー取引疑惑になる。
トランプによるSocial Truthの停戦発言の4分前に巨額の原油先物取引がなされたり、予測市場の様々なイラン戦争に係る疑わしい取引がなされたりしたことは、全て政権内で正確な内部情報を持っていない限り、実現すること等万が一にもあり得ないからだ。
トランプファミリーが金儲けをしているだけではないのか、トランプとそのJrは深く予測市場に関わりすぎており、明確な利害相反以外の何物ではないのではという指摘があった。
CFTCとしてはインサイダー取引に関してはZero Tolerance、 厳格に規制し、今後も規制するという返事だけなのだが、これでは、何もやっていないといっているに過ぎない。
ま、司法省もFBIも大統領に係ることにはだんまりを決め込んでいるのが今の政権だ。
そもそもCFTCは違法調査等何件位実施しているのかに関しては毎日沢山ある、詳細の数字は知らないというのだが、CFTCには実質的に違法行為を摘発できる体制もスタッフもいない。
規制機関といってもルールブックと事業者による自己規制があるのみで、DCM(指定契約市場)は事業者が自らルールブックに準拠していると自己認証すれば、なんでも実現できる仕組みなのだ。
勿論CFTCとして事後に規則違反を指摘し、一定の取引をやめさせることはできる。
但し、規制機関としてのCFTCは市場を守ることが本来の目的で、そもそも規則違反や違法行為を積極的に監視し、摘発できるような体制ではない。
スポーツイベント契約と賭博とはどこが違うのか、全く類似的ではないかという質問やDodd Frank 法規則における公益に反する行為の例外禁止規定との関係性等は説得力がある質問だったが、CFTCは連邦商品取引法(CEA)に基づく金融派生商品の独占的管轄権はCFTCにあるとし、機微な質問に関しては政治的判断を持ち込むべきではないとし、全くすれ違いの議論となる有様だ。
一方連邦第九巡回控訴裁判所(CA9)においては3つの控訴案件(Kalshi Inc, Crypto.com, Robihhood Market Inc)につき、バラバラの事案だが口頭弁論に関しては3つを纏めて、かつ規制機関であるCFTCも含めて4月16日に行われた。
2時間にわたる結構中身のある熱い法的な議論である。
大きな問題となったのはDodd Frank法にて定められた規則40.11の解釈だ。
事業者側は、これは全面的な禁止条項ではなく、CFTCがケースバイケースで二段階の判断基準(①Gamingを含むか否か、②含むとすれば公益に反するか否か)で判断するものとし、規則が不適切というならこれはCFTCの問題で州政府が関与すべきではないとした。
Nelson裁判官は真面目な議論ではないとこれを一蹴。
そもそも自己認証方式なのだから何でもできるはずで、事業者が適切か否かをCFTCに申請し、規則に基づき90日以内に結論を得て、不満なれば係争すればいいだけの話で、事業者は何もしていないではないのかという指摘だ。
この他、連邦と州法間の優越性の問題、SwapsはCFTCの独占的管轄権限といっても、GamingはSwapといえるのか等に関しての議論がなされたが、この控訴審の裁判官3人はいずれも連邦第三巡回控訴裁判所(CA3)の判決とは異なり、州政府寄りのスタンスを崩さず、Kalshi主張には懐疑的な質問を投げかけたことが明らかになった。
CA3では口頭弁論から判決迄7ケ月を要している。
CA9はできる限り早く控訴審としての見解を出すことを明言したのだが、さてどうなるかだ。
勿論判決はまだ先なのだが、第三巡回控訴裁判所(CA3)ではKalshiに軍配が上がり、第九巡回控訴裁判所(CA9)では州政府側が明らかに有利ということになり、市場ではすわこれはCircuit Split(異なる地区控訴審で相反する判決になること)になるという話でもちきりだ。
これを裁定できるのは連邦最高裁判所(SCOTUS)以外存在しない。
連邦第六巡回控訴裁判所(CA6)ではKalshiがオハイオ州の法執行を止めるべく緊急予備的差し止め要請を上訴したが、何と却下された。
本審はこれからだが、命令文を見ると明らかに州政府が有利となるスタンスを裁判官はとっている!一方、コロラド州では連邦地裁レベルで刑事訴訟に関し、Kalshiによる予備的差し止め要請(PI)が認められ、Kalshiの勝訴だ。
モンタナ州も新たにTRO/PIを求めてKalshiを提訴した。
オハイオ州は何とKalshiに対し、免許無しに賭博行為を提供したとして500万㌦の行政罰金を賦課するという新しい戦術をとった。
4月24日にはCFTCがニューヨーク州を州政府の行動を権限逸脱として宣言的救済を求め、提訴する有様だ。
全く毎日が魑魅魍魎の世界になってしまったのだが、連邦地裁レベルや連邦巡回控訴審レベルでの異なる判決は今後も続くかもしれない。
(美原 融)