National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 360.イベント予測市場⑧:新たな展開

2026-04-20

360.イベント予測市場⑧:新たな展開

4月2日イベント予測市場を巡る法廷闘争が全く異なる展開を示すことになった。
何と連邦司法省(DOJ)と連邦商品先物取引委員会(CFTC)が連名で連邦政府としてアリゾナ州、コネチカット州、イリノイ州の各々の州政府知事、州司法長官、州賭博規制機関を関連地区連邦地裁に同時に訴えたのだ。
予測市場(Prediction market)はCFTCの独占的な管轄権(Exclusive jurisdiction)の下にあり、州政府がこれを規制することは憲法違反として宣言的判決(Declaratory judgement、裁判所が当事者間の権利・義務・法的関係を宣言する判決で強制執行を伴わない予防的な救済)と差し止め救済(Injunctive relief、州政府による法執行を差し止める裁判所命令による救済)を求める訴訟になる。

CFTCの主張点は①連邦商品取引法(CEA)に基づき、予測市場の独占的管轄権を保持するのはCFTCのみだが、州政府はこれを違法とみなしたり、規制したりして、合法なイベント契約の取引活動を制限している。
州政府に金融取引としてのデリバテイブを規制する権限はない、②連邦議会はデリバテイブ商品市場の国家としての枠組みを取り決めており、州毎のパッチワーク的な州規制よりも好ましい。
バラバラな州政府による規制は消費者保護を脆弱にし、市場参加者に不確実性をもたらす、③州政府規制機関はイベント契約を賭け事と誤解し、金融デリバテイブ商品監督のための一貫した連邦政府の枠組みを危険に晒していること等になる。
CTFCは当初は独立的な規制者として州規制当局と予測事業者との法廷闘争に関してはハンズオフの姿勢を保っていたのだが、新たな委員長の采配により、段階的に州政府と予測関連事業者間の法廷訴訟への関与を強めてきた。
控訴審における意見書(Amicus Brief)の提出、積極的なルールメーキング等から、ついには、自らが州政府を直接提訴するという一歩を踏み出したことになる。
ここでの争点は、①連邦政府と州政府の管轄権限(連邦法の独占管轄規定を州政府は規制できるのか、州賭博規制法に連邦政府は関与できるのか)、②金融商品と賭博との境界線(イベント契約は金融商品か賭博か、境界はどこにあるのか、誰が何をどう規制するのか)、③連邦政府機関の裁量権(国の機関が過剰な規制権限や裁量権を持つことは認められるのか)、④連邦法が州法より優越するという法理(法的根拠の明確性、関連法制定時の連邦議会の意図)等になり、連邦政府と州政府とのガチンコ勝負になり、極めて挑戦的な法的チャレンジでもある。

これにより、単なる州政府と民間事業者による様々な係争と連邦政府と州政府との連邦法と連邦政府機関の所轄権限に関する係争との二つが平行して走ることになってしまった。
尚、これら3州はいずれも州政府と予測市場事業者との法廷闘争を抱えているが、まだ判決がでた州ではない。
かつこの3州は州知事、州地方長官はいずれも民主党といういわば民主党地盤のBlue Stateだ。
こうなるとトランプ連邦政権・共和党対民主党という党派争いが背景にあるとみられても仕方がないかもしれない。
中間選挙の結果次第では、トランプ政権はレームダック化しかねず、早めに法的な決着をつけたいということなのであろうか。

考えてみればバイデン政権時の2023年にはCFTCは選挙に関するイベント契約は公益に反するとし、Kalshiに事業停止を要請していたという風に全く逆のポジションをとっていた。
2024年にKalshiはCFTCを提訴し、何と9月にはKalshiが勝訴、CFTCが控訴していたのだが、CFTCはトランプ政権になりとたんに方針を180度変えてしまい、2025年5月には控訴を取り下げ、和解に至っている。
トランプJrはKalshi, Polymarket両社のアドバイザーだ。
政権自体が予測事業者側にたったため、方針転換をしたということなのだろう。

4月になり一方では訴訟事案で更なる進展があった。
ネバダ州で初めてKalshiによる州民へのスポーツイベント契約の提供を禁止する行政令が執行されたのだが、その72時間後の4月6日に今度は連邦第三控訴裁判所で控訴されていたニュージャージー州対Kalshiの事案にて、連邦地裁の判決を踏襲し、Kalshiが2 対1の評決で勝訴したのだ。
連邦控訴審での判決はこれが初めてになる。
多数意見となった判決理由は、連邦商品取引法(CEA)は州政府賭博法に優越し、スポーツイベント契約は法令上のスワップとみなすことができるという連邦法の曖昧さを広く把握する見解で、極めて分かりづらい。
一方、公開された少数意見はより現実的な論調で明確にこれは賭博以外の何物でもないし、連邦法の優越性も適用不可とする見解だ。
少数意見の方が説得力のある主張に思えたのは、その他の連邦地裁の判決理由と同じだからだ。
勿論、この判決は予備的差し止め(Preliminary Injunction)に対する暫時的判決でもあり、本審ではない。
かつ、第三控訴裁判所に全裁判官14名参加の下での再口頭弁論(en banc rehearing)を求めることもでき、連邦最高裁への上告をすることも可能で、これが終わりではない。
控訴審の判決は前例になってしまうのだが、4月には連邦第九巡回控訴裁判所でKalshiによる対ネバダ州控訴案件の口頭弁論が始まる。
こちらは連邦地裁レベルでは州が勝訴しており、控訴審でも州が有利になるという逆の結果になる公算が強い。
いやはやとんでもないケーオス的な状況での法廷バトルが始まっている。
こうなると複数の連邦地裁や連邦控訴裁判所で、連邦法・州法の適用やその解釈につき判決が異なってしまうというCircuit Splitの状況が生じかねない。
この場合、最終的な法的判断は連邦最高裁しかなくなる。
ここへと繋がる道がより早くなるかもしれないということだ。
これではどちらが勝つにしても、スポーツブックやイベント予測契約、賭博業界には大きな地殻変動が不可避になることを示唆している。
これも政治かと達観してしまうのは早すぎるかもしれないが。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top