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2026-07-06

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370.イベント予測市場⑯:終わりなき闘争?

いやはやとんでもないことが起こるものだ。
6月18日シカゴ商品取引所(CME)は連邦先物商品取引委員会(CFTC)並びにその委員長M.Seligを連邦Dodd-Frank法違反としてワシントンDCの連邦地裁に提訴した。
シカゴ商品取引所は米国を代表する金融派生商品の取引所で、物価変動先物、為替先物、商品先物、オプション等を手掛ける自主規制権限を持つ機関だ。
CFTCは連邦CEA法に基づきCMEに認可を与えているのだが、何と身内の取引所が規制機関を訴えるという極めて異例、かつ奇妙な構図になる。
事の発端はCFTCが5月29日にKalshi並びにCoinbaseから提案があったBit CoinによるPerpetual Futures(Perps、日本語では無期限先物ないしは永久先物)という予測市場商品の販売を許可したことにある。
通常の先物(Futures)は何月何日に決済するという期限があるが、これには満期・決済期限がない、継続的に取引される先物型の予測市場商品のことで、期限なしにポジションを持ち、継続的に変化する事象につき取引できるのが特徴だ。

CMEが問題としたのは①商品の法的定義で、名前は先物だが、満期日のない商品は先物(Futures)とはいえず、実態は価格差・金利差・指標差などに基づくキャッシュフローを交換する契約であってSwapとして扱うべきであり、法律の誤用ではないのかという点と、②CMEは暗号資産デリバテイブの基準となる主要価格指標の独占ライセンスを保持しており、このPerpsが先物とされると、CMEの個人顧客が奪われ、自社の独占的なビジネスの侵害になるということだ。
一般論としてはDodd-Frank法に基づき、Swapは先物(Futures)より、厳格な規制の対象になり、規制の在り方も異なり、このまま放置すると現場では大きな混乱が生じかねない。
もっともこんな問題で裁判所に提訴?そこまでやるのかねという疑念もあるが、法の解釈やその実践の在り方の明確化を裁判で明らかにさせるという手法は実は米国では至極当たり前の話になる。
CMEの主張は市場のルールを正しく適用すべきで、さもないと市場が不安定になるということだが、その本音は、新興の仮想通貨プラットフォームに自らの市場シェアやライセンスビジネスを侵食されたくないという市場での競争が背景にある模様だ。
さてCFTCはこの身内の反乱をどう決着させるのか見物だ。

一方2026年FIFAワールドカップ開催と共に、予測市場の取引量は日々膨れ上がり、開催1週間後の時点で50億㌦を越えるという有様だ。
もっともPolymarketにはおかしな取引もある模様だ。
600万㌦を賭けて、1360万㌦を儲けたり、900万㌦かけて全損したりするケース等もあり、尋常な取引とも思えない。
試合の帰趨や結果を楽しみながら、賭けをも楽しむという普通の顧客ではなく、巨額のおかしな資金が介在し、ニッチな取引に着目し、金儲けのために市場を極大化しているという証左だ。
Polymarketでは本人確認も求められず、同一人が複数勘定を持つことも可能だ。
個別の取引は公表されるから大きな動きは誰でも捕捉できる(もっとも全員が偽名だからバレにくい)。
伝統的なスポーツブック事業者も売り上げを伸ばしているのだが、大手のDraft KingやFanDuelも極めて挑戦的に予測市場に参入しており、BettingとTradingを統合し、同一のプラットフォームでできるサイト!等と宣伝する始末だ。
法的な闘争はどっちにころぶかは全く不明だが、成長市場にはとにかく参入し、地場を築くという戦略なのだろうが、一般顧客からすれば、全く解かり難い世界になりつつあるということでしかない。
もっとも色々な遊び方や賭け方の選択肢が増えることは、顧客からすれば単純に好ましいという考え方もある。
大手事業者Kalshiは金融・資本市場から巨額の資金調達を可能にしている。
巨額な企業価値が実現しているのだが、もし法廷闘争でKalshiが負ければ、過半のビジネスと企業価値が瞬時に消えかねないリスクを抱えている。
金融・資本市場はこのリスクを織り込んでいるのだろうか。

2026年FIFAワールドカップは予想通り、巨額の資金を予測市場とスポーツブックに呼び込む結果となった。
この試合開始の直前、に欧州諸国の9つの賭博規制機関(ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スイス)が共同声明を発表、許可を取得せずに違法にスポーツブックを提供している予測市場を協調しながら摘発、締め出すこととし、国境を越えた協力活動を行うことに合意したとある。
主要欧州諸国ではイベント予測市場は金融商品ではなく、単なる賭博行為という見方が定着しつつある様に思える。
欧州EUでは賭博行為は各国が独自に規制、制度、税制を設ける仕組みで、統一的な規範はないのだが、一つの賭博種に関し、各国が協調して行動を起こすというのは極めて異例な在り方だ。
第三国からサイバー世界のプラットフォームとして提供される違法賭博を規制したり、禁止できたりする制度的枠組み等は存在しないわけで、各国の協力や協調がなければ対応できないということだろう。
もっとも当面は違法行為に係る情報交換や、広告規制、監視強化、一般公衆への注意喚起等を協調しながら実施することから始める模様だ。
これら欧州諸国は、あらゆる賭博種は各国規制当局の法的な許諾が必要とし、これがない場合は違法な賭博行為とみなし、予測市場契約には、消費者保護も、廉潔性の担保もなく、賭け金上限規制、本人確認も、クーリング・オフの規定もないとして、摘発し、排除されるべき対象と判断している。
国境を超える違法なサイバー世界のプラットフォームに対しては、国境を超える規制機関の連携と協力があれば一定の対応や対策は可能とする考えは本来適切であろう。
各国がバラバラに対応するよりも、統一的な規範や考え方に基づき、規律ある排除手法を慣行として実践することができうれば、EU域内からの効果的な排除はある程度の効果があるに違いない。

(美原 融)

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