National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 368.イベント予測市場⑮:CFTC新ルーリング案

2026-06-22

368.イベント予測市場⑮:CFTC新ルーリング案

連邦商品先物取引委員会(CFTC)は6月10日にホワイトハウス行政管理予算局(OMB)の下部機関である情報規制問題局(OIRA)のレビューを受けたのちに予測市場に関する新たな規則案を公表した。
内容的にはCFTC規則40.11並びにPart 40 Appendix Fの追加ということなのだが、何と267ページもある。
主たる改定の趣旨は公益の判断基準の明確化で、公益に反するイベント予測市場契約の種類を特定し、取引の対象にさせないようにすること、同時に透明性を保持しつつ、組織を強化する手順を改定すること、制度上のGamingの定義を明らかにすること等にある。
ところが実態はやたらめったら長たらしい既存の制度の説明や現行制度の解釈から始まり、これまでのCFTCの法的主張を整理し、詳述化したものだ。
おそらく今後の法廷闘争にこの主張を詳細に展開する目的なのだろう。
読むだけでも誠に疲れる内容だ。
一方、廉潔性を保持するための新たな規制や公益に反する行為等の禁止等をも規定しているのだが、よく読んでみると、一部は明確に禁止の対象とされたが、曖昧なところは残り、スポーツブック自体はイベント予測契約の対象としては適切、公益に反するわけではないと主張しており、これじゃ何にも変わらないのでは?という印象を受ける。
尚、規則上公表後45日間のパブコメに付されており、今後様々な議論の対象にはなる。
但し、CFTCが公募意見を聞き、その主張を変えるとは到底思われない。

戦争、テロ、殺人等に係るイベント予測は公益になじまないとして禁止の対象として定義された。
でもこんなのはDott-Frank法改定に基づくCFTCの規則40.11に既に記載してあるではないか。
また意図的な操作の対象になりやすい類のスポーツイベント契約、例えば①選手の怪我・事故(Injury props),②審判の判定に関する賭け(Officiating calls)、③単一投球に関するマイクロベット(Single pitch micro-bets, 次の投球がストライクかボールか等の賭け)等も禁止の対象になるとしている。
より一般的には選手にとり裁量性のある行動(Discrete action), 乱闘等のトラブルに関する賭け(Altercation),高校生等の大学就学前の学生競技に関する賭け(Pre-collegiate events)等も禁止の対象になる。
もっともこれらも従前よりインサイダー取引を招きかねないとして問題となっていた種類の賭けになり、目新しいものではない。
当たり前の話でもあるのだ。
一方、スポーツの全体的な結果(Overall outcome)に基づく契約(勝敗・スコア・シーズン成績など)は、公益に反せず、原則許容されるとしている。
具体例として列挙されたのは最終スコア(final scores),点差(point differentials)、勝敗(win–loss results)、トーナメント進出(tournament advancement)、個人・チームの統計成績(individual or team statistical performance)シーズン全体の成績指標(season‑long performance metrics)等になる。
これらはすべて 試合全体の結果に基づく、客観的で操作が難しい指標で、①操作リスクが低い、②インサイダー情報の影響が限定的、③スポーツの公正性を損なわないと評価し、合法的な契約種と位置付けた!わけだ。
何のことはない。
これでは一部の限定的なスポーツブックの種類を除き、現状の過半のスポーツブックはイベント予測契約として許容されるといっているわけで、現状を新しい規則として追認しているようなものだ。
この意味では何も変わらないではないのか、単に予測事業者を擁護するためだけのルール改定案なのかという声も聞こえてきそうだ。

驚くべきことは、CFTCはGamingに関する新しい定義!を提唱し始めたことだ。
要は規則40.11に記載されているGamingの定義を変え、これが即賭博行為を意味しないと強弁することで自分たちの主張を押し通そうという戦法である。
Gamingとは①一人または複数の参加者が娯楽ないしは他人を楽しませるために行われ、②一定のルールの下になされ、③参加者による僥倖、技量ないしはスポーツ活動の結果に依存する測定可能な事象を対象とするものとある(規則40.11(a)の新たな解釈だ)。
また、賭け行為が存在することが即賭博ということではなく、賭博か否かの判断は当該契約が扱う対象(イベント)の性格により判断すべきという立場をとった。
ある行為がGamingに該当するか否かは、その活動に賭け行為が付随していても、単純にGamingとはみなさないということだ。
いやはや全く理解に苦しむが、完璧な僥倖に左右される事象であるルーレットや完璧な乱数発生装置により結果が決まるGamingは予測市場の対象にはなりえないが、ポーカーの様に技量と僥倖の両方の要素がある場合には、おそらく対象になりうるとしている。
これも?という感じがする。
またDott-Frank法に基づくCEA法改正に関しても、当時の立法府の意図につき新しい解釈をもちだしてきたのだが、果たしてどうこれが評価されるかだ。
ややこしいのは当時議論を主導した連邦上院委員会の委員長(Lincoln女史)は主張を180度変え、今や予測市場側の人間だ。
もっとも当時のオバマ政権下でのCFTC委員長(G.Gensler, 後にバイデン政権下でのSEC委員長)は当時の議論のGamingは賭博以外の何物でもなかったと第六連邦控訴審で意見書を提出し、かつこれをTV番組で解説している。
まるで混乱の極みといったところだが、これはこれで様々な反論や議論を呼び起こすことは間違いない。
米国ゲーミング協会(AGA)は直ちに声明を公表し、CFTCは連邦議会による立法府の意図を捻じ曲げており、米国41州の州司法長官はいずれもCFTCは州政府権限を干渉していると判断し、米国民の81が予測市場はスポーツブックの裏の窓口(バックドア)でしかないと認識していると、極めて手厳しい。

かかる議論が延々と続くことが今の米国なのだが、Kalshi等に訴えられた州政府は既に11州、逆にKalshi等を訴えた州政府は7州、CFTCが訴えた州政府は6州、部族政府がKalshi等を訴えたのは3州にのぼり、状況次第では、これは今後共確実に増えそうだ。
日本では考えられない世界がここにはある。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top