2026-05-18
363.イベント予測市場⑪:更なる展開?
予測市場を巡るインサイダー疑惑の追及は流石に収束する術がなさそうだ。
厳格に規制すべきという声は日ましに強くなっている。
5月4日シューマー上院院内総務(民主)は、国家機密漏洩防止、民主主義の危機として予測市場契約を全面的に禁止する法案策定を呼びかけ、これには一部共和党議員も同調している。
規制ないしは禁止を求める声は連邦議会の中では日ましに強くなっている(もっとも連邦商品取引法並びにCFTC規則180.1によりインサイダー取引はそもそも違法なのだが、対象及び規律自体が曖昧かつ施行できにくい仕組みになっている)。
5月20日には上院商業委員会が(予測市場を含む)スポーツブックの廉潔性・インサイダー取引疑惑につき、公聴会を設けることを公表した。
ニューヨーク州知事は、カリフォルニア州と同様に、州政府職員が非公開政府情報を用いて、イベント予測契約に参加することを禁止する命令を出した。
国がやらないならば自分の権限の範囲内で州政府職員に参加を禁じるというアプローチになる。
こういう事象が続くと連邦議会内部のプレッシャーは確実に高まる。
連邦議会が新たな制度的枠組みを取り決める立法措置をとれば、現在の混乱も、法的係争も落ち着く可能性もある。
この可能性はゼロではない。
もう一つの解決の方向性は3月に連邦先物商品取引委員会(CFTC)が言明したルール策定事前通告(ANPRM)による予測市場の新たなルールメーキングだ。
予測市場に関するより明確なルールを設けることで、現状の混乱を解決しようとする規制機関の動きになる。
これに関する一般からの意見公募は4月30日に終了したが、何と1500以上の意見が提出された。
もっとも意見は予測市場賛成派と反対派の二つに分かれ、その大半は、ほぼ同じ文面で、コピー&ペーストで同じ内容を大量に送りつけるという手法で、その指示文書迄が公開されてしまい、誰かが、金を使い人を動かしたことは確実だ。
この現象は全く日本と同じである。
意見は多ければ良いというものではあるまい。
内、注目すべきは41州の州政府司法長官が連名で意見書を出したことだ。
スポーツブックの規制・管轄権は歴史的に州政府にあり、予測市場契約は規制の対象になっていないスポーツベッテイング以外の何物でもなく、スポーツブック関連予測市場は禁止すべきという各州司法省の統一見解だ。
一方業界団体であるCoalition for Prediction Marketが提出した意見やKalshiの二人の創設者がSNSを通じて発言し始めたのは予測市場の範囲に、許容できないものに一定の線引きをするという面白い考えだ。
戦争、テロ、殺人、カジノスタイルのゲームは好ましくない対象として線引きをして排除するという。
「カジノスタイルのゲーム?」とはよく言ったものだが、要はCFTC規則40.11に記載してあるゲーミングの定義を極めて狭いカジノスタイルのゲームとしてとらえ、スポーツ関連イベント予測は単なる将来のリアルイベントの予測でしかないとして、連邦商品取引法(CEA)の枠組みとして認知させるということなのだろう。
その他Props Betも好ましくない対象にすべきという意見もKalshi創業者からでてきた。
各プロスポーツリーグも意見書を提出したが、これは賛成にも反対にもくみしない中立的な立場をとった。
彼らの主張は①21歳以下の参加禁止、②操作されやすい予測市場案件の禁止、③責任ある賭博に関するツールの導入、④リーグの公式データ利用に関する権利の規定等になる。
これら様々な主張の内、いくつかは採用されることになるのだろう。
時間の問題でCFTCは新たなルールを決める模様だ。
勿論単純にこれで終わるわけがなく、必ず法的チャレンジの対象になるのだろうが、一定期間このルールが市場を規制するのかもしれない。
一方、法廷における闘争は混乱を増すばかりで、こちらの方は解決にはまだ時間がかかりそうだ。
CFTCはアリゾナ州、コネチカット州、イリノイ州に加え、4月末にはミネソタ州、ニューヨーク州、ウイスカンスン州(これら全て民主党知事の州!)をも連邦地裁に提訴した。
全く時間と金の無駄遣いにしか思えないが、ローラーコースターの様にあちこちで勝ち負けが続いている。
マサチュセッツ連邦地裁はKalshiによる州裁判所からの移管を棄却、差戻しになり、5月4日の州高等裁判所での口頭弁論では7人の裁判官全員がKalshi主張への懸念を表明する有様だ。
これでは州政府に軍配が上がる。
ニュージャージ州、アリゾナ州ではKalshi, オハイオ州、ネバダ州では州政府が勝っている。
5月5日の第四巡回控訴裁判所(CA4)でのメリーランド州控訴案件での口頭弁論では、予測市場は賭博ではないのかと懸念する意見と連邦法の文面解釈では予測市場に理があるという意見が裁判官よりあり、全くどっちに転ぶかは検討もつかない。
ミネソタ州では全米で初めての事例になるが、何と州内でのイベント予測契約を禁止する予測市場契約禁止法案が州上院で、56対0で可決し、通りそうな様相にある。
但し、これなどは直ちにCFTCが連邦法違反として提訴することになるため、規範として機能しなくなる。
全くの時間の無駄、混乱を助長するだけの様に思える。
予測市場自体は益々隆盛になりつつあり、4月にはKalshiの週単位での取引総量は何と40億㌦をこえる状況で最高記録を更新した。
もっともWSJ紙の調査結果によると、Kalshiの賭けで儲けたのは参加者の内、僅か0.1%で、これらが67%の利益を独占し、普通のCasual Traderは殆ど儲かっていないというデータもある。
情報収集力を持ち、分析できる能力のあるトレーダーを含むプロ集団・企業が圧倒的に強く、一般大衆ではなかなか太刀打ちできないのだ。
ところで予測市場がどうなるかは、11月の中間選挙でどちらが勝つか次第では、大きく情勢が変わってしまう様相にある。
連邦議会で民主党が上下院を制すれば、一挙に反トランプ施策が趨勢になるのは確実だ。
因みに「本年11月の中間選挙で勝つのは民主党か共和党か」というKalshiのイベント予測の現状は、共和党が勝つという選択は52%’(Yes 55㌣、No46㌣)、民主党が勝つとするのは48%で(Yes 48㌣、No 53㌣)でほぼ拮抗している。
流石にこれはどっちに転ぶか解からないといった現状で実態を反映しているのかもしれない。
(美原 融)