2026-05-11
362.イベント予測市場⑩:インサイダー取引摘発逮捕
米国政権内部でもさすがに昨今のイベント予測市場や原油先物取引市場におけるインサイダー取引疑惑は看過できないということになった様だ。
事は米国の重要な軍事機密情報の遺漏でもあるからだ。
4月23日連邦司法省(DOJ)及び連邦捜査局(FBI)はかのベネズエラ大統領拉致事案であるOperation Absolute Resolveの特別部隊の一員であるコマンド隊員1人(Ken Van Dyke)を検挙・逮捕した。
やっぱしねという印象だが、機密情報の私的利用、非公開情報の窃盗、商品取引法違反、連邦有線法違反、違法金融取引等が犯罪行為として列挙されている。
罪状自体は3つ、すべて連邦先物取引法違反行為となる。
いずれも罪状毎に10年、あるいは20年の禁固刑になり、これは重罪だ。
しかもやり方は巧妙で悪意に満ちている。
Polymarket Internationalはパナマから提供されている仮想通貨によるオンラインプラットフォーム予測事業者だ。
勿論米国人は法的には参加できないとはいえ、誰もがPVNからアクセスするという仕掛けになる。
この犯人はA/Cを開設したのは実際のオペレーションの準備に入っていた12月26日になる。
ベネズエラ大統領は1月末迄に引き下ろしされるのか、米国は1月末迄に同国に侵攻するのかというイベント予測に、13回も賭けている。
様子を見ながら、ばれないように少しずつテストし、最後に大賭けをしたのだろう。
作戦実施開始の直前に巨額の金額を賭け、計409,881米㌦(約6000万円)の不正利益を取得したという。
作戦終了後の1月6日には勝ち金を即刻外国に設定された仮想通貨金庫へと移し、その後トレーダーとして新たなオンラインブローカー勘定を開設し、ここに資金を送金した。
インサイダー取引ではという懸念が直ちに市場で噂されると予測市場A/C開設の際の電子メールアドレス等も巧妙な手段で解約・消去し、トーレスできなくなるようにしたという顛末だ。
軍隊の内部者なのだが、どうせバレないと思ったに違いない。
予測市場は取引量の変動やオッズの変化等の全ての情報が開示されるため、動きが緩慢な市場趨勢の中で突如大きな賭けをし、相場を大きく変えることは通常ありえず、大きな注目を集めてしまう。
確実にイベントが起こることを知っていた内部者の犯行ということになる。
これが立証されただけの話だ。
仮想通貨を使った取引でも、最初の取引や勘定開設時点、送金,再現金化等トーレスがどこかに残る。
これを緻密な捜査でフォローしていけば犯人を突き止められるということなのだろう。
尚、司法省・FBIによる被疑者逮捕に伴い規制機関である連邦商品先物取引委員会(CFTC)は4月23日(即ち司法省・FBI摘発と同日)この被疑者をニューヨーク南地区連邦地裁に提訴して、賭け金・勝ち金返還・没収と行政罰を賦課することを要請した。
根拠はもちろん先物商品取引法(CEA)にある。
もっともインサイダー取引に関しては、これは一体なんなのだという事案も生じている。
中間予備選挙において、候補者自身が自分が勝つか否かに賭けたわけだ。
資金さえあれば、ある程度選挙の推移を一定方向に寄せることは不可能ではない。
これにより州民の投票行動を変えることができる。
あるいは選挙に参加し、自分が負ける事に賭け、途中で意図的に脱落しかねない行為により、負けて大金のみ手にするという金儲けの手段もある。
市場に影響を与えかねない行為を意図的にすることにより、市場での価格変動を利用し、頻繁にトレードし、ここでも金を儲けることができる。
自分がコントロールできうる事象やパーフォーマンスに当事者が賭けることは必ずしも法的違反事項ではなく(そういう法規定はない)、予測市場事業者があらかじめ定めるルールブックの違反でしかない。
何とこれが明るみにでたのはKalshiによる情報公開で、Kalshiが調査の結果、三人の選挙候補が自らの選挙の賭けに参加し、ルール違反として制裁を加えたことを公表したためだ。
制裁を加えられたのはバージニア州独立系上院議員候補(Mark Moran)、ミネソタ州民主党予備選挙下院議員候補(Malt Klan)、テキサス州共和党予備選挙下院議員候補(Ezakiel Enrigiez)の3人だ。
もっとも内二人は金額はビビたるもので、こんなはした金では市場は動きようもないのだが、本人達は「興味本位でやっただけ」とか「衝動的に試しただけ」という弁明だ。
一方、これは悪質、インサイダー取引と認知されたのは一人のみになる。
罰金も、悪質なのは6229㌦だが、その他の二人は540㌦、784㌦と僅かなもので、全員5年間Kalshiの利用禁止措置を課せられたという次第だ。
ルールの不適切利用というだけなのだが、一種の注意喚起、見せつけであると共に、Kalshiとしては常時モニタリングツールで市場をモニタリングしていること、公平性にもとる不適切なルール違反はインサイダー取引に繋がりうるという主張を継続的にしていることを示したかっただけだろう。
もっともこれは氷山の一角かもしれず、かなり深い闇がありそうな気配もする。
本来規制監督機関であるCFTCは法の執行に関する規制権限は持っているはずだが、積極的な行動をとらず、あくまでも事業者による自主規制に委ねていることは果たして本当に健全な市場といえるのか懸念する向きも多い。
現状このインサイダー取引疑惑はCapitol Hillにおけるもっともホットな話題になりつつある。
ホワイトハウスは全職員に対し、政府の機密情報遺漏は違法なることを警鐘し、職員による予測市場等への関与を禁止するという内部通達を先月発出したところだ。
一方連邦上院は4月30日に上院議員並びに関連職員の予測市場参加を禁止する法案を満場一致で可決し、即日施行させた。
なんとも早、自分たちは潔白と主張するだけのもので、他の真面な法案を無視し、これだけを可決するとは全く本末転倒でしかない。
火がないところに煙が立つわけがない。
確実に内部情報取引は存在するのだ。
トランプ大統領は4月24日の記者会見で予測市場のインサイダー疑惑につき問われ、「残念ながら世界はカジノみたいになっている。
もともと予測市場には賛成していない(Never much in favor of)。
好きではない。
全くクレージだ」という発言があったのだが、状況を見た上でコロコロ意見が変わる大統領のことだ。
この発言を本気でとらえている向きは左程いない。
事実翌日には「ここには頭の良い奴がいる。
彼らはこういうのが好きなのだ」とトーンを変える有様だ。
この大統領にとり、金儲けやファミリーによる資産拡大は国よりも重要なのだ。
(美原 融)