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2022-10-31

181.スポーツブッキング ⑮オッズは誰がどう作るのか?(1)

スポーツブッキングのオッズとは、胴元が可能性として試合の結果を予想すると共に、その結果に対する顧客の賭けに対する払い戻しを表す数値である。
オッズの表示の仕方には3種類あり、国によりどれを採用するかが異なる。
アメリカ式はMoney Line Oddsともいわれるが、プラス・マイナスの3桁の数字で二つの組み合わせとして払い戻し(Payouts)を提示する。
例えば「阪神+130 巨人―150 」はプラスが負けると予想されるチーム(Underdog)、マイナスが勝つと予想されるチーム(Favorite)で、いずれも$100を単位として、いくら賭ければ、いくら勝ち分をとれるかを表している。
プラスの表示は$100をかけると勝ち分(Win)はいくらかを示し、+130なら勝ち金(Win)は$130で元金を含め$230が戻る。
マイナスの場合は、$100を勝ち金として得るためにはいくら賭ける必要があるかを示し、-150は$150を賭ける必要があることを指す。
この場合には払い戻しは$250だ。
分数方式(Fraction)とは英国等で用いられており、一対の分数でオッズを表す方式だ。
例えば「阪神 5/1 巨人1/5」とは、二番目の数字が分母で賭け金を表し、一番目の数字が勝ち金(Win-Yields)になり、阪神5/1とは、$100をかけるとWinは$500、巨人1/5とは、$100をかけるとWinは$20になる。
全くややこしいが、日本人にとり分かりやすいのは少数点方式(Decimal)でこれは単純に、1ユニットの賭け金に対し元金を含めていくら戻るかを示す。
例えば「巨人1.40 阪神2.10」だとすると、巨人に$100かければ$140が払い戻しとなり、阪神に$100賭ければ払い戻しは$210だ(数値は2.0以上だとUnderdog, 2.0以下の場合にはFavoriteになる)。
表示方式は慣れの問題だろうが、現在のスマホ、オンラインのアプリでは、初心者にも解りやすいように、賭け金額をインプットすれば、表示方式には関係なく、勝った場合の払い戻しが金額でいくらになるかを自動的に計算してくれるように設定されている。

上記で見た通りオッズとは、一定の幅を持つラインを引き、この両側に異なるチームに対する一対のオッズを胴元がハンデイをつけて提供している。
当然のことながら、勝ちそうなチームの払い戻しは低いし、負けそうなチームの払い戻しは高くなる。
どちらが勝つか統計的にもイーブンな場合には両方が同じー110とラインが設定されることもある(この場合の10は胴元のコミッションでどちらが勝っても、コミッションをとるということを意味する)。
胴元の目的とは、顧客の賭け金行動がこのラインの両側で、いずれも活性化し、理想的には両側に賭けられるお金の総量(これは胴元にとりエキスポージャー、即ち理論的損失最大値になる)が同じレベル(50/50)となるようにラインと各々のオッズを設定し、かつこれを顧客の賭け金行動に応じて、随時修正していくことにある。
一端アクセプトした賭けは固定するため、オッズを変えて両側をイーブンにするようにもっていくわけである。
顧客の賭け金行動が平均して分散する様にするわけだ。
こうすれば、胴元はどちらのチームが勝つか負けるかには関係なく、リスクを極小化し、安定的な利潤を得ることが可能になる。
尚、上記のオッズの提供の在り方から、胴元は各々のチームが勝つ可能性をどう評価したかを計算できる。
これをImplied Probabilityというが、両チームの可能性を足すと必ず100%以上の数値になる。
100%を超える数値をOvergroundと呼称するが、これが胴元のコミッションになる(これをVIGという)。

胴元による当初のオッズの設定は様々なチームや選手の統計的データや、過去の対戦試合の履歴、試合場のロケーション(ホームかアウエイ)、チームの調子・事故者、天候等から類推し、顧客の賭け金行動を判断し、ラインの両側に顧客の賭け金行動がうまく分かれるようにする。
昔はOdds Compilerというこの道のプロが設定していたのだが、試合に関わる過去の統計的データや賭け金行動の推移・データ等は全て数値やビッグデータでもあり、一定の計算式とアルゴリズムを設定したり、AIを活用したりすれば、基本的なオッズの設定はこのためのソフトウエア・システムによりできるようになってきた。
これはどちらのチームが勝つかには全く関係ないアルゴリズムにより、オッズを設定できることになり、誰がこれを担おうが、中立性や公平性は担保できるという考え方が生まれてきたことを意味する。
この考えが、その後この業を大きく発展させる経緯になったといえるのかもしれない。
カジノの様に単純な僥倖や確率ではなく、顧客と胴元が統計データや過去の履歴データを分析し、勝ち負けや得点の在り方を推察し、賭け事の対象にするのだが、胴元はこれをゲームとして提供しつつも、どちらがどのように勝とうが負けようが(顧客のインタレストには)関係なく、安定的なコミッションビジネスを担うという形態を志向する。
これにより、胴元、ソフトウエア提供者、オッズを纏め提供するマネージメント事業者、オンラインのプラットフォームを提供する事業者等様々な機能を分担し、協業する仕組みが市場で成立している。
勿論状況次第では、これら主体は全て、免許、認可の対象となり、廉潔性審査の対象になることは間違いない。
但し、スポーツブッキングの廉潔性がシステムにより担保されているという前提をとった場合、規制の在り方や審査の対象も従来の考え方では機能しない側面もでてきているといえる。

尚、かかる状況で複数事業者が市場で競合する場合であっても、これら事業者が提供するオッズは類似的だが同じとはならない。
類似的となる理由はいずれの事業者も他の事業者のオッズを常にチェック・比較し、大きな差異がないような調整をしているからだ。
異なりうるのは、事業者が前提とするコミッション(VIG)の考えは事業者毎に異なりうる。
かつ個別事業者が抱えるエキスポージャーのポジションは、同じではないし、これらの状況は個別事業者の判断として、オッズを変える方向に事業者を動かすことになるからである。

(美原 融)

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