National Council on Gaming Legislation
コラム

2020-11-28

45.ロイヤリテイーカード

ロイヤリテイーカードとはカジノ事業者がカジノにおける顧客の消費に伴い、ポイントを付与し、商品やサービス、金銭等を提供するためのポイントカードやマイレージ・サービスに似た機能を持つカードである。
各事業者は、自分のポイント・プログラムを保持しており、より高い消費を継続するとステータスが上がる。
作成は無料となり、申請用紙に個人情報を記入し、写真を取られ、カードが発行される。
世界中同じブランドの施設ならば同じように使えることになり、機械ゲームの場合には、金銭投入前にカードを差し込むと総賭け金額に応じてポイントがもらえ、現金、無料チップ、同施設の飲食代、宿泊代、物品購入代等あるいは、場合によっては、第三者が提供するサービス(航空運賃代、劇場・イベント参加費等)と交換できる仕組みである。
テーブルの場合には、デイーラーに賭け総額を申告し、デイーラーがこれをチェックし、その場でカードに総額をマニュアルでインプットしてもらう。
ポイントが貯まれば貯まる程、対顧客還元が増えるのは通常のポイントカードと変わらず、各事業者が様々なプログラムを顧客に提案している。
機械はカードを機械に挿入することで処理できるが、テーブルゲームはデイーラーという人間が関与するゲームであるため、デイーラー経由でなければインプットできない。
勿論将来的にはテーブル自体やチップの在り方、ゲーム全体を全てデジタル化・システム化することができれば、顧客の賭け金総額は自動的に捕捉することはできる。

この様なロイヤルテイ―カードを利用した対顧客還元サービスはカジノ業界でいうコンプ(Complimentary、対顧客還元サービス)と呼ばれるものの一つになるが、これはわが国では、景品表示法に基づく景品類に該当する。
同法に基づく告示は、景品類の提供に係る取引の価額の10分の2の金額の範囲内とすることを定めているが、IR整備法第108条6項はこの適用除外を規定する。
カジノ業におけるコンプの場合、賭け金総額を規制していない以上、上限総額を規制することはコンプたりえなくなるという理由からである。
またIR整備法第108条2項は、景品類を提供した日時、顧客の氏名、景品類の内容及び経済的価値、その他カジノ管理委員会が定める事項に関し、記録を作成し、これを保存する義務をカジノ事業者に課している。
即ち顧客に対し、インセンテイブを与えるためには、相手を特定化し、提供する財・サービスを明確にするという制度的要請がある。
ローヤルテイ―カードは義務ではなく、あくまでも顧客任意の要請により提供されるものだが、顧客に対しインセンテイブを付与し、顧客の利便性を高めることにより、この活用を促せば、これでコンプ(景品類)の提供を管理することができる。
逆にカードという手段がない限り、事業者は顧客行動を捕捉できないため、顧客はコンプをもらうことができなくなる

さてこのロイヤリテイーカードだが、如何なるカジノ事業者が選定されようと、わが国でもこれら事業者が従来他国で実施してきたと同様のプログラムとサービスを提供するに違いない。
但し、わが国固有の制度的事情から、かなり複雑な機能を持たせることになりそうだ。
顧客の負担減や利便性の向上を考慮した場合、あらゆる機能とサービスをこのカードに集約させることが有効と想定されるためである。
但し、顧客の個人情報に絡む内容である以上、当然顧客の同意も必要となる。
また、規制機関の同意が必要となる項目もある。
これらには下記可能性がある。

  1. 顧客の利便性を高める入退出管理のツール:
    カジノ入場時毎に本人確認のためにマイナンバーカードを持参することは、顧客にとっての負担になるが、初回訪問時に欠格者でないことを確認し、ロイヤリテイーカードを作り、同カードに個人情報・写真等の生態認証情報を盛り込めば、次回訪問時以降、このカードと入場時点の生体認証のみで入退出、及びその他の機能を同カードが保持できるように工夫できる。
    勿論これには、制度上許容できるかの判断と共に、カジノ管理委員会の同意が必要になる。
  2. 顧客賭け金行動等プレーに関するデータ記録の捕捉;
    電子式機械ゲームに関する顧客の賭け金行動、賭け金額、勝ち負け、滞在時間等賭け金行動等に関するデータをロイヤリテイーカードに記録・保存できる(今後の技術的発展次第では将来的にはテーブルゲームでも可能となる)。
    これにより顧客の個別の行動を分析でき、効果的なマーケッテイングのツールにすることができる(勿論これには顧客の同意が必要になる)。
  3. 対顧客コンプ供与のベースデータ(賭け金総額)の把握、供与等の記録保存:
    制度上記録、保存が要求されるコンプ供与のデータ記録の把握を、ロイヤルテイーカードを通じてコンプを提供することで実施し、これをシステムに取り込むことで記録保存が容易になる。
  4. キャッシュカード(Debit Card)としての利用:
    ロイヤルテイーカードにキャッシュカードとしての機能を持たせ、一定の資金のデポジットにより、ここからIR各施設や飲食店での支払いを可能にする。
    カジノゲームの賭け金の支払い、勝ち分の付け替え等もこのカードを利用する(勿論、これにはカジノ管理委員会の同意が必要になると共に複数の法律が絡んでしまうため、かなりややこしくなり、実現できるかは不明である)。

何が何処まで、どのように可能となるかは、入退出管理の在り方やコンプ提供の在り方、ゲームに係る規則等の詳細の規制の在り方が決まらない限り判断できにくい。
顧客の個人情報に係る領域でもあり、この意味でも複雑さはあるが、制度上の要件を満たす限り、できうる限り柔軟に多様な可能性を認めることが顧客の利便性を高めることに繋がる。
かつカジノの効率的運営にも繋がる。

(美原 融)

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