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2025-03-17

304.違法オンライン賭博撲滅作戦:マカオ特別行政区

マカオでは如何なる賭博も認められているのではと錯覚する人も多いのだが、オンラインによる賭博行為の提供は認められていない。
マカオでは全て管理・監督が確実に可能な対面方式の賭博が基本となる。
ところがこの一見ありそうな雰囲気を悪用し、サイバー世界には中国語でオンラインの賭博サイトが乱立しているのが実態だ。
そもそもサーバーを何処に設置していて、どこからオンライン賭博を提供しているのかは中々解らない。
顧客対象も広く中国本土、中国圏のマカオ、香港等だが、マカオや香港等ではクレジットカードや電子マネーは自由に使え、相当の顧客数もあるため、ここを本拠地としながら、一見合法的な事業者を装い、巨大な中華圏全域を商圏とするわけだ。
ここでの違法事業者の参入バリアーは過去相対的に低かった。
マカオ特別行政区(SAR)にとってっみれば、これを放置しておけばマカオのイメージダウンに繋がると共に、これら違法オンライン事業者が陸上コンセッション事業者の顧客とマカオSAR税収の一部をカスミ取っているという判断から2021年以降、中国政府と連携して監視と違法行為摘発を強めつつある。
マカオ警察、規制機関(GICBゲーミング調査管理局)、法的な免許事業者が連携・協力して、対応する体制が取られている(これを3 way joint effort mechanismと呼称している)。
2024年前半のみで摘発し、閉鎖させたオンラインのウエッブサイトは何と36,000に達するというのだから並大抵の数字ではない。
毎日、いたちごっこのようにAIをも活用して違法サイトを特定し、プロバイダー経由、サイトを強制的にブロックする手段をとったことになる。
もっともサイバー空間で提供される違法賭博とはマカオ市場を対象とするだけではなく、実態は巨大な中国本土の市場を対象としている。
よって問題はマカオだけで終結するものではない。
違法オンライン賭博は中国本土のような人口数の多い大規模市場をターゲットにすることが理にかなっている。
不特定多数の顧客に時間的地理的制約無く、提供する仕組みが可能になるからだ。
かかる理由によりその規制や摘発は供給サイド(Supply side)だけではなく需要サイド(Demand side)にも跨って実施しなければ効果は薄くなる。

中国政府が問題視しているのはオンラインで提供される国境を超える違法賭博行為(Cross Border Illegal Gambling/Betting)であり、 サイバー世界から中国本土の潜在的顧客に対して提供される無制限な賭博行為でもある。
2021年中国では刑法が改正され国境を越えて提供される賭博行為を違法と明確に定義し、その摘発を強化し始めた。
中国本土では海外からの違法賭博サイトのブロック以上に、需要サイドに着目し、違法な換金・送金・マネーロンダリング等地下銀行を含む決済関連の摘発の方が圧倒的に多い。
マカオにおける2021年大手ジャンケット事業者の摘発、実質的なジャンケットの締め出しは、中国本土のVIP顧客に絡んだ巨額な資金の違法マネーロンダリングに絡んだ摘発でしかない。
同時に中国政府は一部東南アジア諸国に存在する中国本土の中国人を顧客とするオンライン賭博事業者を根絶するよう、2016年以降関係諸国に外交的圧力をかけることを実践し始めている。
違法オンライン事業者は比較的規制が緩かったマカオ、香港、広東省にもベースを置いていたという経緯もあり、中国政府はマカオSARと共に、香港SAR、中国広東省との連携・協力により、これら地域にサーバーや本拠を構える国境を超える違法賭博事業者の摘発体制も平行的に進めている。
中国系の国際的な犯罪組織がこれに絡んでいることも露呈しており、マカオですら既にMOP1Billion($124.6M)の違法資金を没収したり、50人以上の犯罪組織構成員を逮捕するに至っている。
2024年10月にはマカオ議会は違法賭博行為法(Law on Illegal Gambling Activities)を新たに可決した。
法の下で許諾されていない賭博行為は当然昔から違法なるも、違法行為の定義をより明確にし、罰金刑も規定し、かつ捜査の在り方をも改善しようとする狙いの立法措置になる。
例えば、カジノ施設内でのサイドベッテイングの禁止、オンライン賭博の禁止、カジノ施設内外における違法為替取引の禁止、罰則規定の明確化、捜査当局によるおとり捜査の許諾等が主たる内容になる。
第7条は明確にオンライン賭博を違法行為と定義し、僥倖に基づくゲームや投票式賭博、顧客間ゲーム等をデジタルデバイスやサーバー経由提供する行為を違法とし、違反者は1年から8年の禁固刑を科すとある。
かなり強権的、厳格な規制となることが解る。
この内注目すべきは違法為替取引の禁止である。
マカオでは中国元をHK$ないしはマカオパタカに交換しなければゲームも賭博もできない。
一方、中国国内では外貨持ち出しや外国為替購入が制限され、自由に外貨を取得できるわけではない。
ここに違法為替業者が様々な手段を用いて暗躍することになる。
金の出もとを締め付ければかなりの抑制手段になるわけで、ここに切り込んで違法行為を摘発することは理にかなっている。

中国の習近平主席による汚職・腐敗一掃、違法賭博やオンライン賭博をより厳格に取り締まり、摘発するという基本的スタンスは2021年以降一切変わっていない。
2022年のマカオ6事業者のカジノ免許更新に際し、マカオ規制当局は巨額の非ゲーミング関連投資($14.9Bill)の実践を条件とした。
ポルトガルからのマカオ施政権返還25周年記念に2024年12月マカオを訪問した習主席は、マカオの税収がゲーミング関連に異常に依存していること(税収の81%がゲーミング関連に依存。
因みにラスベガス市の場合は、これは31%)に警鐘をならし、経済の多角化、新たな国際競争力のある産業の振興等の必要性を主張し始めている。
違法賭博の摘発厳格化とマカオ経済の多角化、多面化は今後進むのだろうが、これがマカオSARをどのように変えていくかの構図はまだ見えていない。

(美原 融)

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