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2021-02-15

64.緊急事態宣言下の実施方針・公募(RPP)③

緊急事態宣言下に伴い海外渡航や海外からのビジネス来訪客も訪問の手段を絶たれ、国内出張も不要不急の場合はしないということになり、2021年の当初の2ケ月間は企業にとりまともな活動ができない期間となってしまっている。
IR公募(RFP)に伴い提案を準備しようと企業が思っても、まともな準備ができる状況ではないというのが実態だろう。
この場合、都道府県等がとるべき当然の行動は、もし、時間が足りず、十分な提案ができそうもないとしたならば、一定期間この提案提出期限を延ばすことにある。
特段何等かの規制があるわけではなく、都道府県等は自らの判断で柔軟にこの期限を設定できる。
勿論長期の期間というわけにはいかないのは、国土交通大臣に提出する区域整備計画の提出期限が基本方針で決まっているからである(令和3年10月1日~令和4年4月28日)。
この期限は都道府県等ではなく、国が政令により定めた事項でもあり、国が全体予定を変更しようと思えば、できないことはない。
但し、政令を変えざるを得ない複雑な手続きと調整を必要とし、政府にとり特段このスケジュールを遅らせるモチベーションはない。
そもそも提出期限を期間として提示し、一定の余裕を予め設定しているからである、その時間的な枠の中で都道府県等が自らのスケジュールを調整すればいいだけの話で、国が関与するまでもないということになる。
国と都道府県等は立場が異なり、国は枠組み創出と区域認定のみに関与するため、実務を担う都道府県等や民間事業者の立場を理解できない、あるいは問題は都道府県等の事情にすぎず、国が考慮すべき事由ではないという立ち位置なのだろう。

もっとも都道府県等にとっても、スケジュールはタイトで、この期間内に余裕をもって行動できると考えている都道府県等は当初からいない。
本年秋からおそくとも年末迄に民間事業者を選定し、事業者と交渉の上、区域整備計画を上記期限内に提出することが求められており、これは行政実務としては業務量も多く、かなりタイトなスケジュールになるからである。
区域整備計画自体は選定民間事業者と共同で作成するのだが、どの位の準備期間が必要となるのか、どこまで内容を詰める必要があるのか、交渉により詳細を取り決める必要がある内容がどの程度あるのか等はまだ全く解らない。
提案の内容次第なのだが、これ次第で必要となる時間は変わってくる。
もし民間事業者の提案が国の政令要件や、都道府県等が課す条件を十分満たしている内容ならば、区域整備計画の作成にあまり時間をかける必要もない。
この場合には、都道府県等もある程度余裕をもって対応できる。
一方殆どの都道府県等は、事業者による提案提出期限を本年春(4月)から初夏(6月)頃と規定しており、事業者側から見ると、これは最初からタイトなスケジュールとなっている。
非常事態宣言により実質2ケ月ロスしたとすると、提案提出のための作業期間は僅か数か月と極めて短くなってしまう(最も実態は既に提案提出を締め切った都道府県等~和歌山県~、4月から6月に締め切りを公言している都道府県等~横浜市、長崎県~、どうスケジューリングするか、提案提出期限を未だ明確にしていない都道府県等~大阪府・市~に分かれている。
昨年より準備していれば十分な時間があるのではと思う向きもいるかもしれないが、かなりの幅広い所掌の具体的提案や投資確約が求められる公募でもあり、通常の開発行為とは異なる。
極めて不安定な経済環境の下で、4~5年先の事業計画を何処まで詰めることができるのかは単純ではあるまい)。
勿論コロナ禍が終息し、経済的活動が元に戻っていれば、ある程度は詰めることができるとはいえ、今後数か月以内に提出される提案が、民間事業者による確実な投資確約を実現できる内容のものか否かは全く不明である。

経済環境が不安定な場合には、できる限り時間をとり、余裕をみて考えさせなければろくな提案はでてこない。
コンセプトは立派でも、確実に資金調達できる目途がたっておらず、当事者による投資の確約もなく、事業計画自体が条件づけられている場合、IRが確実に実現できるという保証はない。
IRを企図する4つの都道府県等が抱えているリスクとは、①提案が未熟で、国や都道府県等の要件、条件を満たしきれていないリスク、②コンセプトはしっかりしていても、事業を実際に実現する資金調達力・資金力・能力等を事業者が具備しているか否かが不明確となるリスク、③提案内容を詰めない限り、国の要件を満たさず、区域整備計画の認定を受けられないリスク、④お互いの立場に隔たりがあり、事業者と条件を合意できないリスク、⑤交渉のレバレッジを喪失し、不利な条件を甘受したり、当初の要件規定のハードルを下げざるを得なかったりする状況に陥るリスク等になる。
かかるリスクが顕在した場合、これに対応する都道府県等の戦略は、事業者選定のタイミングをできる限り伸ばし、複数民間事業者との継続的な対話・交渉を続けることによりギリギリの時点迄内容を詰める以外残された選択肢はない。
交渉のレバレッジを一定程度保持できるからである。
もし政治的理由等により、提案の内容が固まっていない段階で、都道府県等が民間事業者を選定せざるを得ない状況になった場合、当該自治体は後刻、大きな問題を抱えることになる。
勿論国が全体のスケジュールを遅らせるならばこれにこしたことはないのだが、果たして大局観のある判断を国は取れるのであろうか。

(美原 融)

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