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2022-01-10

139.IR:本邦企業の投資行動 ④外資との連携

我が国事業者でカジノ業の経験のある企業は限られる。
経験の無い新たな業となるため、外国カジノ事業者と連携し、事業に参画したいとする我が国企業がでてくるのは当然のことだ。
一方外資カジノ事業者の方も当初から日本企業とのパートナーシップを前面に出してきているがこれも至極当然の考えになる。
外資のみでは言語・制度・文化・社会的慣行等の壁や日常的な規制当局や地域社会との間にある障壁を乗り越えられないからだ。
では如何なる連携や協力の仕方があるのであろうか。
現実に行われている合掌連携の在り方を外から見ていると、様々なパターンがあることが解かる。
但し、カジノ行為は委託の対象にはできず、あくまでもSPCが我が国におけるカジノ事業者になり、海外カジノ事業者は出資者・株主として、SPCを通じ、事業に参画することが基本になる。
SPCが制度上の認定設置運営事業者でカジノ事業者ということになるわけで、カジノ行為を切り出し、第三者たる海外カジノ事業者にカジノ行為を委託するというスキームは我が国では認められていない。
一方、資本構成の在り方に関しては、国として外資の参入を規制しているわけではない(基本方針第3(2)2)。
もっとも実務的に外資と我が国企業が如何なる合掌連携を取れるかに関しては、なんでもありということではない。
役割分担については一定の政令要件があると共に、都道府県等や国が評価しにくい提案は、当然嫌がられる。
理論的、制度的には可能でも、実務的な複雑さや処理の在り方、管理監督の難易度等は大きく変わるため、否定的な評価に繋がりやすいという側面も存在する。
 
表象的には外資カジノ企業と本邦起用との連携には下記パターンがある様だ。

  1. 大手外資カジノ企業が過半のSPC株式シェアを取り、本邦企業(群)はあくまでも少数株主に留まる:
    米国大手カジノ事業者が当初志向したモデルである。
    複数の日本企業があくまでも少数株主として参画するが補完的な役割しか期待せず、事業のガバナンスは大手外資カジノ事業者が一手に担う。
    本邦企業は自分の役割の所掌を担うだけとなり、カジノ部分の詳細経営に関与できるかは極めて難しい。
    本邦企業にとっては、事業に参画することで発言力を得て、自ら担う所掌を確実にSPCから受注したいという狙いがある。
  2. 大手外資カジノ企業と本邦企業との間で原則SPCの株式を折半する:
    50/50のJVになる。
    理想的な組み合わせだが、役割分担、意思決定やガバナンスの体制構築、合意形成に時間がかかったり、複雑になったりする課題を抱える。
    中長期的には人材は内部で育つし、組織の融合ができれば持続可能なモデルになる。
    二社の総体的Majorityを崩さず、各々の持ち分の一部をDiluteし、地域企業等の第三者日本企業群を株主として後刻追加することもありうる。
  3. 大手外資カジノ企業が第一位出資者としての出資比率を保持するが、複数の企業から構成される日本企業群が、総体としてMajorityを取る:
    日本企業群がグループとして50%以上の出資比率を取り、外資カジノ企業は相対的に少数株主となるケースになる。
    カジノ事業の運営経営は海外カジノ事業者がリードを取らざるを得ないが、一方事業体としては日本企業群がコントロールするということになる。
    果たしてこれでしっかりとした意思決定やガバナンス体制が構築できるのかに関して、懸念要素は強い。
    株主間の取り決めや、株主の構成にもよるが、日本側がバラバラの少数株主の連合体であるならば、企業レベルから見ると、海外カジノ事業者が最大株主になり、実態面ではガバナンスは海外カジノ事業者にとられる公算が高い。
    複数の企業の連合体ではOne Voiceとしての迅速な意思決定はできにくいからだ。
  4. 中小規模外資カジノ企業が5%以下の少数株主として参加し、残りは海外投資家・本邦企業等カジノ関連外事業者がMajorityを占める:
    当然整備法上は適法だが、RFPや条件規定書の枠組みで、代表企業のカジノとのかかわり、経験、能力、ガバナンス等の要件を設定している場合もあり、この場合、中核企業たりえないカジノ事業者が如何なる評価をされるのかという課題を抱える。
    出融資で資金を注ぎ込まない場合、責任も義務も取れない主体と見なされる。
    これでは誰が責任を取り、SPCを支えるのか、SPCの履行保証をできるのか等も全く不明になってしまう。

事業会社(SPC)と出資親会社との関係が出資-配当、劣後融資-金利だけならば単純だが、そうとはならない。
工事契約や様々なサービス提供、管理委託契約、職員派遣契約等を通じ、SPCから出資企業に資金が流れる。
リスクを取る主体がリスクに見合う対価報酬を得ることはおかしくない。
一方、これら契約は全てカジノ管理委員会の認可の対象になると共に、アームズ・レングスとは言えない取引や、親子会社間での非合理的な取引、利益操作が疑われる取引等に関してはカジノ管理委員会が認可を拒否する可能性もある。
全てが何でもありで認められるわけではないと考えるべきだろう。
カジノ行為を委託することは不可能だが、SPCに対し出資カジノ企業が役職員を出向という形で送りこみ、この見合いとして報酬を受け取ることは可能になるはずで、これも金額や条件次第では問題になるかもしれない。
これは規制当局がこの点に関し、如何なる規制をかけるか次第では企業間の座組の在り方の実務上の課題は変わってきてしまうことを意味する。
本邦企業の組み合わせは、案件毎に様相が全く異なる模様で、複数の異なる企業連携や座組が志向され、個別案件毎に様々な課題が生まれそうである。

(美原 融)

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