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2024-12-30

293.違法オンライン賭博 警察庁実態調査

警察庁が日本人向けに運営されている海外のオンラインカジノサイトについて、初の実態調査を発注したことが8月に報道された(「オンラインカジノの実態把握のための調査研究」業務委託、調査会社シードプランニングが6542.8万円で受託)。
若者の間に急速にオンラインによる賭博が広がり、借金苦や犯罪に加担してしまうケースもみられることから、実態把握の必要性が指摘されてきたことがその背景にある。
国会でも何度となく議論の対象となり、質問主意書等も過去数多くだされていたにも拘らず、何ともはや遅い対応で、ようやくまずは「実態を調べるべく調査をする」という官僚的スタンスだ。
海外から日本語によるオンライン賭博のサイトがネットを通じて提供され、多くの日本人がかかるオンラインカジノに参加していることは紛れもない事実だ。
勿論、提供する行為も参加する行為も違法なのだが、胴元が国外では犯罪を構成できないし、顧客たる日本人もスマフォやパソコンからネットでアクセスすればまずばれないし、違法性も認識しないというのが実態だろう。
騙されても被害届を出す者等存在するとは想定できないし、そもそも違法、犯罪とまくし立てたところで、国民は動かず、かつ警察としても捜査をして立件できる証拠もなければ、その価値もない、何もできないというのが実体だろう。
警察庁によると、オンラインカジノによる賭博事件での摘発者は2023年107人に上り、この内スマートフォンなどを使った無店舗型(所謂オンラインカジノ)は32人で、22年の1人から一気に増えたというのだが、これは海外違法賭博サイトを幇助した実質的な運営者や資金供給者の立件・逮捕に伴い、芋ずる的に関与した顧客が特定され、偶々単純賭博罪で逮捕できたということでしかない。
これでは警察当局は証拠がなければ何もできないし、何もしないという証左を国民に見せつけているだけにしか思えない。

警察当局が積極的に動けないことを知っているからこそ、「違法ではない」とか「グレーなマーケットで問題ない」等と主張し、顧客を募っているのが海外オンラインカジノサイトの実態だ。
様々な海外調査データによると巨額の資金が日本から流れ、かなりの数の日本人が参加していることは間違いないのだが、これらデータは各社ごとに大きな差異があり、そもそも財務情報を開示しない信用がない企業がネットから提供する行為では市場実態が解り難いのは当然ともいえる。
警察庁の今回の発表では日本向けのオンラインカジノの運営会社やその所在地、賭け金の入金や出金方法のほか、日本からのアクセス数などを調査するという。
かつ国内の10歳代~70歳代の7000人以上を対象にしたアンケートも行い、利用状況を年度内にまとめる方針であるらしい。
アプローチとしてはおかしくないのだが、第三者の本邦調査会社に丸投げして調査するようであれば、どこまで信頼おける調査結果がでてくるのかは懸念も多い。
ネットを調べると信頼おける海外オンライン賭博事業者のリスト等様々な情報が出回っているのだが、これだけではない裏の事業者がごまんといる。
おまけにタックスヘーブンの会社だと実態は不明、サイトも日本語で複数、違った名前で提供することも常識的に行われ、誰が運営者なのかよくわからない。
また顧客勘定開設に際し、本人確認を要請し、未成年の場合には拒否するサイトもあるが、要求しないサイトもあったり、(本人確認を要求せず)無記名譲渡可能な電子マネーを未成年に転売したりする事象者すらいる始末だ。
市場規模を正確に把握するには本来資金の流れをトレースすることが有効なのだが、銀行、クレジットカード会社、電子マネー取り扱い事業者、資金決済代行事業者、仮想通貨交換取引所等取引手段は複雑、多岐に亘り、これら決済関連事業者は決済の目的にはあまり関知しないし、調査に協力するとも思えない。
彼らをこの分野で効果的に律する法規定は存在しないのだ。
7000人以上を対象とするアンケートも違法行為の認識の有無も含めて、決済手法や遊びの在り方等解れば面白いのだが、どこまで正直に解答する人がいるのかは解らない。
違法行為に参加していることを自ら認識していれば、真面目にアンケートに答える人等おるまい。
調査会社等に頼むよりも国際機関や各国警察公安当局との積極的な情報交換・連携・協力等により海外市場の実態と日本市場との関連を詳細に調べることにより、全体市場の動向を把握し、日本のポジションを精査した方が、より効果的な調査になる。
オンライン賭博や仮想通貨は法規制が行き届かない格好のマネーロンダリング手法となっていることが国際機関や各国公安当局の共通の認識でもあるからだ。

違法オンライン賭博サイトへの積極的な政策的対応は今や先進国では常識的になりつつある。
但し、ネットビジネスへの規制は単純ではなく、制度の改定や新たな法的措置により、違法オンラインサイトの強制的ブロック、決済関連事業者に対する違法オンライン賭博関連決済の禁止等自国内において、アクセスを制限し、決済をさせないとすることが主流になっている。
これはサイバー世界にいる事業者を国内法では取り締まれないため、国民を守る積極的な施策を取ることを意味する。
勿論、彼らを幇助する我が国の主体(アフィーリエート、決済代行事業者、プラットフォーマー、ISP等)に対する規制を強化し、違法行為の幇助として摘発することは不可能ではない。
もっとも我が国ではかかる行為は複数省庁の所管に跨り、警察当局だけでは効果的に対処できないため、調査結果を関係省庁と共有し、新たな制度的措置の検討を進めざるを得なくなる。
単なる業界による自主規制と当局による掛け声だけで終わるのか、オンライン賭博を根絶する意思と政策を本当に実施できるのかが問われるといっていいのかもしれない。

(美原 融)

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