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2020-11-06

40.本人確認とマイナンバーカード

カジノ場における本人確認の目的は、不適格者がカジノ場に入ることをカジノ事業者自らが確認し、これを排除することにある。
解かりやすいのが未成年者で年齢・写真がある公的書類の提示を顧客に求めれば、これを確実に確認し、排除できる。
勿論これだけが目的ではなく、その他の不適格者をも排除することがその狙いの一つだ。
例えば暴力団構成員、反社勢力、これら周辺にいる好ましくない共生者、依存症対応プログラムに基づき自己排除・家族排除の対象となる個人等になる。
これらは事業者側に生体認証データを含めたしっかりとしたデータベースと特定の個体を確実に認識できるシステムがあれば、入場時点で確実にこれらを捕捉し、排除できる。
このためには、これら個人情報・原データを如何に取得、維持し、アップデートできるのか、入場時点で顧客から取得する情報と原データを突き合わせ瞬時にどう特定の主体を捕捉できるのか、また特定対象者をどう効果的・物理的に排除できるのか等という課題が派生的に生じてくる。

制度自体が複雑になったのは、顧客の入場時点でカジノ事業者が確認せざるを得ない項目が複数あり、目的、そのためのツール、実務的な処理の在り方が輻輳化しており、これを瞬時に実行せざるを得ないという事情があるからである(IR整備法第七十条「入退出時の本人確認等」)。
即ち、カジノ事業者は顧客入場時点で、①本人確認のためのツールとしてマイナンバーカードの提示を求める、②カードのICチップに格納されている公的個人認証(JPKI)を活用し、本人確認をする(カード保持者が本人であるかを目視でも写真と本人とを確認する)③不適格者となる未成年者か否かの判断、保持しているデータベースから暴力団構成員、反社勢力構成員等で、排除対象者か否かを確認する、③電子的に公的個人認証のデータをオンラインでカジノ管理委員会に電送、照会し、入場回数制限にひっかからないことの確認をリアルタイムで取得する、④上記を全てクリアした段階で入場料支払いを求め、入場料を受領し、24時間の入出場を全て記録・チェックすることが制度上要求されることになる。
かつ、事業者としては、この個人データを自らのローヤリテイー・カードと結びつけ、対顧客サービスやマーケッテイングに活用するという具合に自らのシステムとリンクすることが考えられている。

年齢を確認するためだけの目的なら、写真と生年月日が記載された公的証明書があれば事足りる。
但し現在の正確な住所となると、パスポートも免許証も完璧ではなく、最も確実かつ正確な本人確認のためのツールはマイナンバーカードしかないのが実態だ。
但し、現住所を含めた個人データ迄厳格にチェックする必要性があるのか、本当にマイナンバーカードが必要なのか、完璧ではないが複数の他の本人確認手段を併用すれば十分ではないかという点に関しては、懸念も残る。
国民的にカードの保持が進んでいないマイナンバーカードを必携の要素とした場合、国民の過半はIRカジノには来ないのではないか、これでは事業性は大きく毀損するのではないのかとする議論があるからである。
マイナンバーカードの活用はIR推進法衆議院付帯決議第九項に「入場規制の制度設計に当たっては、個人情報保護との調整を図りつつ、個人番号カードの活用を検討すること」とあることから検討され、採用されたものでマイナンバーカードの活用は政府としての強固な方針ということなのであろう。
確かに公的個人認証(JPKI)の活用は、カジノ管理委員会のシステムとの連携や様々な側面での将来的な利活用という意味では価値がある。
最大の難点は、カードの保持が全く進んでいないこと(2019年4月時点では全国民の13%。
但し、政府のデジタル化推進施策と共に、今後は飛躍的に増えるのではないかとする意見も多い)、この事情が今後とも継続する場合、確実に入場者数減少をもたらしかねないこと、かつまた毎回訪問時にカードを提示せざるを得ないとしたら、顧客にとっての利便性はかなり劣ることにある。
更に公的個人認証をアクテイべートするためにはカードを提示し、本人がパスワードをその場でインプットする手間が必要になる。
時間を取られる手順があるわけで、これもスムーズに顧客を入場させるという意味では難点になりそうだ。

上記は法が要求する制度的要件と、事業者にとっての実務的な要請、顧客にとっての事情と利便性という三つの要素が複雑に絡んでいることを示唆している。
法的必要要件を満たしつつ、顧客の利便性をどう向上させるかに関しては(規制当局の考えもあろうが)。
実務的に様々な配慮と工夫ができる余地もあるのかもしれない。
例えば;

  1. マイナンバーカードによる本人確認は最初の一回のみとし、以後は各事業者が作成し、提供するロイヤリテイーカード、顔写真・個人データを記録せしめ、二回目以降は、ゲートを通る時点でカードを読み取り、本人と記録済み顔写真との照合により、瞬時に本人確認ができるならば、顧客にとっての利便性は高まる。
  2. マイナンバーカード本人確認、ロイヤリテイーカード作成、入場料支払いは、最初は時間がかかりうることを想定し、全てオンライン・事前に申請できるようにし、訪問時はこれを再確認するだけにすれば、窓口で手順と時間を要せず入場することができる。
  3. 上記を前提に入場料の支払いも、事前にこれをクレジットカードで行い、入場時点で本人確認・入場時間の確認・カウントが始まることにすれば、窓口で並ぶ必要もなくなる。

大量集客施設は、入退出の管理は時間と手間を限りなく少なくし、できる限りシームレスにしないと、顧客の負担は増え、利便性は減少する。
これを実現できる柔軟な詳細制度設計が求められていることになる。

(美原 融)

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