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2025-10-27

335.ゲームと賭博④:Freemium Business Modelの仕組みとは?

Freemium Business Modelというゲームビジネスは2000年頃から登場したビジネスモデルになる。
このタイプのゲーム種としてはあらゆる種類のゲームが生まれている。
例えばロールプレイ、パズル、アドベンチャー、バトル、戦略的アクションプレー等だが、単純なカジノタイプのテーブルゲームやスロットマシーン等もある。
勿論参加料等は無料である。
どういう形で遊ぶかというとソフトをダウンロードしたり、クラウドにアクセスしたりすることにより、まず、顧客が個人情報を登録し、自分のアカウントを設ける。
アカウントを開設すると、ここに遊ぶための無料トーケンが付与される。
これで遊ぶことになるわけだが、このトーケンは一定時間経過毎に新たに付与される(例えば当該サイトに一日一回アクセスするたびに一定の参加報酬としてのトーケンが与えられる)。
ゲームに勝てばトーケンを更に取得できるのだから、勝ち続けていればトーケンは増えることになり、いくらでも遊べる。
ところが常にそんなにうまくいくわけがない。
ゲームをもっと継続してやりたい、無料のトーケンが配布されるまで待てないという顧客も全体の中の10%程度は存在するのだそうだ。
それだけゲームが面白いのだろう。
無料ではなく、自分が金を出してでもこのトーケンを取得したいという顧客に対し、有料で同じトーケンを提供することが事業者にとっての収益源になる。
あるいは無料ゾーンではなく、より高いレベルのゲームのプラットフォームを別のサイトとして準備し、リンクを張り、これを課金システムで提供すること等も行われている。
この他事業者にとっての収益源はこのゲームプラットフォーム上の広告収入等になる。
極端な利益になるわけでもないが、このビジネスモデルでもなんとかスタンドアローンのビジネスとしては成立するというのが実際の市場の動向だ。
もっともカジノにあるスロットやテーブルゲームと同じ種類のゲーム(例えばバカラ)等もこ無料サイトにて提供されている。
こういう無料カジノサイトはSocial CasinoとかSweepstake Casino等と呼ばれるが、無料登録するだけで、様々なスロットゲームやカジノのカードゲーム等をオンライン上楽しめることができる。
遊びとしては、これは通常のカジノと全く同じであって賭博か否かの差異とは参加は無料か有料か(金を賭けるか否か)、その結果勝者には金銭的報酬があるか無いかでしかない。
更に混乱しかねないのはこの無料サイトは大手陸上設置カジノ事業者の関連会社が運営していることも多く、これらカジノ会社のHPとリンクが張られていることだ。

要は無料のカジノサイトで、無料トーケンで遊ばせ、ある程度ゲームにのめりこむような場合、顧客にとっての抵抗感を少なくする形で、有料のカジノサイトへと誘導させるような仕掛けがあることになる。
この可能性(カジノへの誘導・導入機能)を事業者は否定していない。
こうなると無料ゲームとはいえ、有料ゲームないしは賭博ゲームと限りなく近い領域にあることになる。
更に興味深いのは、カジノ事業者の関連事業者が運営するこの無料ゲームサイトでは、勝ち進むことにより、カジノ事業者のロイヤリテイープログラムの景品や商品、得点等も取得できるようになっていることが多い。
無料で遊びながらポイントが貯まっていくわけで、この得点はカジノにおけるロヤルテイープログラムと全く同じ効果がある。
例えばカジノ事業者の諸施設での無料宿泊券、無料飲食券、あるいはその他の物品やサービス等とも交換できる。
即ちカジノ施設におけるプログラムと同じ商品を取得できる。
こうなると無料ゲームとカジノ賭博との差異は限りなくなくなってしまうということになりかねない。

事業者にとっての無料ゲームの価値とは特段賭博やゲームにあまり興味のない人をゲームの世界へと誘いやすいことにある。
FacebookやX等のSNSを通じて、不特定多数のプレーヤーとのコミュニケーションをとりながら交流を楽しみ、遊べることからこれをSocial Gameの一類型と定義する識者もいる。
社会的(Social)な側面と特定なサイトやプログラムへの固執とこれらを顧客に対するローヤリテイープログラムと絡み合わせたところに顧客を引き付ける側面がある。
これは無料ゲームを一種のゲートウエイとして賭博行為へと繋げていることに近い。

カジノ関連事業者とこの無料ゲームを提供するゲーム事業者との様々な連携は活性化している。
2011年に大手カジノ事業者であるCaesars Entertainmentは$92 Mでゲーム会社PlayTiksを買収したが、なんと2016年には同社を中国企業に$4.4Billionで売却している。
やはりこの分野大手のPixel Unitedもスロットメーカーである豪州Aristocratに買収され、同業者のScoPlayもスロットメーカーであるL&Wに$49Mで買収されている。
これは賭博の世界が無料ゲームの世界を囲い込み、その顧客を賭博ゲームへと誘う仕組みを構築していると理解してもよいのかもしれない。
無料ゲームは何処の国でも消費者保護規制の対象になりうる可能性があるのだが、ゲームである以上特段の免許も許可も無く提供できる。
よって賭博制度の枠外で限りなく賭博行為に類似的なゲームを提供できるのだ。
但し、現実は無料ゲームと賭博行為との境目が曖昧になってきており、制度的には新たなグレー領域が生まれているに近い。
Social GameからBetting/Gamblingへと繋げる動きは特にスポーツ分野では顕著だ。
スポーツブックの二大事業者であるFan DuelもDraft Kingも当初は無料のソーシャルゲームとしてのFantasy Sportから始まり、親和性の高い賭博(Sport Betting)の世界へと展開し巨大な企業へと成長していったという現実もある。

(美原 融)

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