2025-10-20
334.ゲームと賭博③:Free to Play(F2P)とは?
ビデオゲームが生まれ、これがポピュラーになったのは1970年代~80年代で、ゲーム喫茶やゲームセンターに設置された機械にコインを投入し、一定時間遊ぶという行為が人気を博した時代でもあった。
その後90年代にはコンソールマシーンという家庭用ゲーム機が登場し、器具やアプリを購入することで、家庭でゲームを楽しむことが一般化したともいえる。
インターネットの登場と発展は更にこのゲームの世界を飛躍的に拡大させることになった。
ネットでゲームが提供されるようになったからである。
単純なゲームは無料で提供され、インターネット上で遊ぶことができた。
ところがネット社会の技術的発展は、リアルタイムで顧客とシステムとの双方向的な反応と対応ができるようになり、スピードや画像の精度、臨場感も飛躍的に向上させることを可能にした。
かつ有料アプリを電子決済やクレジットカードで購入し、ネット空間で他人と競うあうことまでを可能にする世界をもたらし、これが若い世代を中心とした顧客層の飛躍的拡大をもたらしたといえる。
これを更に加速させたのがソーシャルゲーム(Social Game)かもしれない。
これはSNSをプラットフォームとし、ソーシャルな機能(友達を作る、友達を誘う、友達と交流する、友達と競い合う)を持つゲームの一種でこの枠組みの中で、ゲームを楽しむわけだ。
かつこのゲームの中で相手を負かして勝つことによりアイテムを取得できるという収集要素(Collectibles)があることが多い。
複数のプレーヤーや友達同士でアイテムの取得を競うあうことになる。
ネット社会の進化と発展は、従来のゲームの主流であった人対コンピューター(システム、ソフト)のゲームを、ネットを通じた人対人のゲーム、人対AIのゲーム、複数人が一緒に競い合うゲーム等の導入を可能にしたともいえる。
更には、アプリのダウンロードは不要でクラウド上のプラットフォームにアクセスすることでゲームを楽しむことができたり、スマフォの登場とその性能向上は、同じゲームを何時でも何処でもスマフォや自宅のコンピューターで遊べたりできるというマルチプレーヤーゲーミングの環境を可能にしている。
この発展の結果として生まれたのがFree to Play(F2P~遊ぶのは無料~)という遊び方だ。
従来はアプリを購入したり、一定の固定料ないしは月毎の参加費をサブスクリプションで支払ったりすることによりゲームを楽しむことが主流でもあった。
ところがこれが、アプリダウンロードは無料、あるいはクラウドへのアプリへのアクセスも無料で、初期段階では参加費も取られず、かなり高度なゲームを自由に遊べることができるという環境に変化していくことになる。
ゲームの中でゲームに勝ち進めば、ゲームの中でのみ使用できる仮想の高度機能を持つアイテムやグッズ、キャラクターあるいは特典等を獲得することもできる。
これらを集めるとより強くなり、ゲームに勝つ確率も高くなって、短期間でレベルを上げることができるというしかけだ。
これらグッズやアイテムは、ゲームで勝っても取得できるが、同じプラットフォームの内部で購入することもできる。
このゲームは、一定レベル迄は無料だが、これに到達すると、次のフェーズは有料ゾーンになり、ゲーム内に課金システムが存在したりする。
かつアイテムやグッズ、キャラクターもゲーム内で有料にて購入することができる。
一部はかなりの高額だ。
勿論無料の世界で、時間をかけ、段階的にアイテムやグッズ、キャラクターを取得することもできるのだが、お金を払えば、より早く、より強くなり、上級レベルに行くことができ、かつ上級レベルになれば更に強くなれるアイテムやグッズ、キャラクターをも取得したり、購入したりすることができる。
この様に当初は無料で遊べる(Free to Play)という形式をとりながら、ゲームの中に課金システムが存在し、有料となるゲームゾーンに顧客を誘導するビジネスモデルをFreemium Business Model(フリーミアムビジネスモデル)と呼称している。
勿論これはできる限り広い顧客層を獲得するために、入口段階では全て無料にし、一般開放し、ゲームの中で遊ばせながら、顧客をつかみ、顧客がのめりこむ段階で課金システムへと誘導することで、ゲーム提供者(パブリッシャー)にとっての収益とするビジネスモデルでもある。
ゲームのキャラクターが利用する服装や武具等のアイテムやグッズ等はSkinとも呼称されるが、これはゲームの中で獲得することもできるのだが、中にはレアアイテム等もある。
レアアイテムを取得できればゲームの中で勝てる確率が格段に高まるため、誰もが欲しがる。
同じサイトで、有料にて購入できるものもあれば、ゲーム内でアイテムやレアアイテムの交換あるいは売買市場等が存在する場合もある。
レアアイテムになると信じられない程結構な金額がつけられている。
金銭的な交換価値がアイテムにつくようになると、ゲーム内のみならず、ゲーム外で売買市場や交換のためのサイト(二次市場)が生まれる。
利用者の利便性を高めるため、これらサイトがリンクされていることもある。
こうなるとゲーム内のアイテムやグッズには金銭的価値があり、これらをゲーム内で取得する競争に勝つことによりアイテムやグッズを取得し、これをゲーム外の市場で即刻現金化できることになってしまう。
この結果、アイテムを取得し、強くなり、ゲームに勝つことは、金銭的報酬を取得できることを意味する。
ゲームの結果が限りなく金銭的報酬に繋がるということは、限りなくこの行為が賭博行為に近いと疑われてしまうのは当然の成り行きとなる。
ゲーム内ではなく、ゲーム外で第三者が売買の仲介をしているならば、ゲーム提供事業者にとっては関係ないという主張がでてきそうだ。
これはパチンコにおける三店方式と同じロジックでもあり、一理はあるが、形式論にすぎず、限りなくグレーの世界になってしまうということでしかないように思える。
これはフォーム(外見)を満たしていればよいではないかという理屈で、実態(サブスタンス)を見ないという形式論ではないのか。
(美原 融)