2026-08-03
374.ゲームと賭博⑫:Free to Play(F2P)Sweepstake Casino⑤
米国の州政府の規制機関による団体である全米ゲーミング州規制機関協議会(NCLGS, National Counsel of Legislators for Gaming States)は2024年11月にインターネットゲーミング法モデル案(Model Internet Gaming Act)を制定し、これを一般意見公募に付し、その意見を反映した上で、連邦政府・州政府にこの実現と実践を推奨している。
オンラインカジノ(iGaming)を制度として認める州は米国では僅か7州に留まり、あるべき法律のモデル案を提示することにより、公衆に信頼されるしっかりとした規制・制度を設けることでオンラインカジノを広く認めてはどうかという各州規制機関への提言になる。
カジノと同様に事業者及び経営者・職員の廉潔性を検証し、免許を付与すること、関連ベンダーやソフトウエア事業者等も免許の対象になること等は通常のカジノ規制と同様だが、オンライン賭博特有となる規制案も設けられている。
例えば、本人確認・年齢確認義務、未成年に対する有害広告・勧誘の禁止、参加顧客は21歳以上、税率はGGRの15~25%が好ましいこと(現在迄の米国各州の平均は19%)、顧客預託金は一日上限2万㌦、預託金支払いはクレジットカードは禁止、定められた支払い手法のみが可能、このほか免許申請後一定の要件を満たす主体に対しては1年間の暫定免許(Temporary License)を与え、その後詳細検証に入ること等を規定している(本免許の期間は5年で更新可能)。
注目すべきはこの法案の第20条において、オンラインのSweepstake Casinoは禁止の対象として明確にその存在を否定していることだ。
Sweepstakes Gameを「インターネットを通じて、モバイルコンピューター端末ないしは類似的なデバイスでアクセスできるゲーム、競争、顧客誘致施策で、偶然の結果として商品が付与され、二種類のゲーム内通貨を用いて、顧客がこのゲーム内通貨を賞品ないしは現金、現金と同等物に交換できる仕組みで、スロットマシーン、テーブルゲーム、ビデオポーカー、スポーツブッキング等のカジノスタイルのゲームに類似的なもの」と定義している。
事業者としてこれを提供することも、顧客としてかかるゲームに参加することも違法、違反の場合は事業者に対し、各々の取引につき1万㌦から10万㌦の罰金、再犯の場合には2年の禁固刑を課すべきと厳罰を推奨している。
相手が海外事業者の場合、果たしてこの罰則が効果的に適用できるのかは疑問となるが、全米の賭博関連規制者はSweepstake Casinoを明示的な違法行為として、禁止すべきというスタンスをとったことを意味している。
今後如何なる展開になるかは不明だが、Free to Play(F2P)モデルとしてのSweepstake Casinoの命運も尽きることになるのかもしれない。
ニューヨーク州議会では、具体の州法としてより明確に、かつ厳格な規制を設ける案が上程され(上院S5935号、下院A6145号)、2025年3月19日に上院競技・ゲーミング・賭け事委員会で可決、本会議でも満場一致で可決され、同年12月5日に知事が著名し、成立した。
概ね上記契約モデルの精神を踏襲しているが、より詳細、かつ現実的になっている。
その内容は違法インターネットサイトをより厳格に規制する目的にあり、実態は海外から提供するSweepstake Casino 事業者に対する法の執行力を強化し、強力な抑止効果をもたらそうと期する内容だ。
即ち①当該事業者が関連する賭博関連免許を保持していれば剥奪、②違反行為毎に罰金10万㌦の賦課、③金融機関、支払代行業者、Geolocation提供者、ゲームコンテンツ供給者、プラットフォーム提供者、メデイアAffiliateに対し、かかる事業者を支援することの禁止措置、④州政府規制機関(NYSGC),州警察、州司法長官事務所に対し法執行権限を付与すること等になる。
かなり厳格かつ広範囲の規定でもあり、これが実践されるようになれば、今後各州の法規制のモデルケースになりうる可能性もある。
興味深いのは法案が成立していない時点ですでに、関連Sweepstake事業者がニューヨーク州より撤退し始めたことだ。
業界団体等と共に関連当局と意見交換をしていた節もあるが、法案成立を見越して市場撤退を決断したのだろう(Play Site, Hello Millhorn, High 5Casino, Spin Blitz, Sport Miller等だ)。
2026年3月末をもってNY州住民による参加を停止し、サイトを閉鎖するので勘定の清算をするよう事前告知したサイトもあれば、何の告知もなく、既に撤退し、既存の顧客対応を無視し、アクセスできなくなった悪質サイトすらある。
ネットサイトにおける市場撤退は、ある日突然やろうと思えば簡単にできてしまう。
問題とすべきは、このレベルの消費者保護意識の低い事業者がこの市場に参加していたという事実だ。
既存の州法規定に基づきSweepstake Casinoを禁止としたのは3つの州(アイダホ、ミシガン、ワシントン)、2025年に禁止法を策定した州は6州(ニューヨーク、ニュージャージー、ネバダ、モンタナ、コネチカット、カリフォルニア)2026年に禁止法が成立した州は現在迄6州(インデイアナ、アイオワ、メイン、ルイジアナ、オクラホマ、テネシー)になる。
その他の州の司法長官も先進州の事例に倣い、事業停止・退出勧告(C&D Letter)を発出したり、州議会が禁止法制定に動き始めている。
興味深いのは事業停止・退出勧告を受け取った事業者で州政府を逆に訴え、訴訟戦術で法的妥当性にチャレンジしてくる事業者は皆無ということだ。
法廷の争いとなれば不利になるとみているのか、あるいは法の執行は弱いと憶測し、だんまりを決め込んだのか、はたまた当該州から撤退すればいいだけの話とはすに構えているのかもしれない。
弱気の戦略では確実に負けるのが米国だ。
自らの立ち位置の合法性を強く訴えることができない事業者は時間の問題で確実に淘汰されることになるに違いない。
この点、イベント予測事業者とは大きく異なる。
(美原 融)