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2024-08-12

273.賭博依存症③ 水原元通訳事案~米国人と日本人の意識の差

大谷選手は今や日本が誇る最大のスーパースターであって、彼が悪事に関与すること等は絶対ありえないという考えが日本のマスコミや日本人の潜在的意識には当初から強く存在した。一方米国人は必ずしもそう考えないマスコミや識者が当初から一定数存在し、現在も問題はまだ終わっていないと主張する識者すらいる。この認識の差は何処から生まれるのだろうか。米国人にとり、この事件は米国における著名プロスポーツ選手とスポーツ賭博に関わる過去のスキャンダルを想起させるからだ。似たような構図は野球だけではなく、その他のプロスポーツに過去いくらでも存在し、ひょっとしてこの事件も同じ構図ではないのかと考えるわけである。

プロやアマチュアを問わずスポーツ試合に参加する選手や関係者はチームや個別の選手に関わる様々な内部情報をもっている。チームの現状や問題点、勝ち負けの予想についても外部者には解らない内部情報を把握できる立場にあることは間違いない。試合の勝ち負けや選手のパーフォーマンスが外部で賭博行為の対象となる場合、これら内部情報を外部に漏らすことで金銭的利得を得ようとする誘惑に染まってしまう選手や内部スポーツ関係者が表れてくるのは人間社会の常なのかもしれない。スポーツ関係者とて聖人君子ばかりではないのだ。勿論自分が直接やることは絶対しない。必ず「友達」や「仲の良い部外者」等を使うことになる。第三者を通じ、この情報を利用してスポーツブックで金を儲けようとしている主体に情報を売り、一部分け前を友達と共に取得することになる。 自分のチームや自分のパーフォーマンスが賭けの対象となるProps Betの場合には、勝てる確実性が増すため、選手自らが賭け金を拠出し、友達経由、賭博に参加するということも過去ありえた。勿論これらは全てルール違反、露見すれば当該選手は関連スポーツ団体からの永久追放、状況次第では犯罪行為になってしまう。主犯が選手自身ということも往々にしてあるが、この場合は「友達」を一種の代理人、フロントとして用い、全ての資金は選手自身が拠出し、これをもって代理人に賭けさせることになる。この仕組みは過去MLBだけでなく、様々なスポーツリーグでも生じた「よくある事例」になってしまう。トップリーグ・チームのトップ選手はかかる悪事に手を染めることは殆どないのだが、二次的なチームやマイナーリーグになると選手報酬も潤沢とはいえないため、かかる誘引にのってしまう選手もやはりでてきてしまうのだろう。

もっともまともな(制度的に認められた)スポーツブックでは前払い制で、まず初めに本人確認書類を提示し、自分の名前で自分の勘定を開設し、ここに一定の資金を振り込んで、この枠内で賭けることが原則になる。身元は全て情報開示の対象となり、与信行為は無く、現金が無ければ一切賭博等できないのだ。かつ一定金額以上の高額取引や、配当が高くなるオッズに異常なほどの高額の賭けをしたり、おかしな大きい資金移動(賭け金、勝ち金)があったりする場合等は全てAIによりモニタリング会社が常時モニタリングしており、間違いなく嫌疑をかけられ調査の対象になってしまう。この枠組みで大きな金額を張り、不正行為をしようとしても、確実に露見するわけで、大きな金額を賭けることはかなりリスクがあり普通は絶対しない。水原元通訳のやったような巨額の賭けをすることは不可能に近い。裏で違法行為に加担しているからできるし、ばれにくいのだ。この事実を知らず、合法スポーツブックと違法スポーツブックを全く混同し、同一視しているのは日本のマスコミと日本人のみだ。このまともな枠組みの中では不正行為はできにくいし、不正をして巨額の金を動かすこともまずできないのが実態になる。

尚、スポーツ選手であっても通常の人間でもあり、これだけ回りがスポーツの賭けをやっている以上、自分もスポーツブックをやりたいと思うプロ選手やスポーツ関係者は多い。事実自分の関与するスポーツ種以外は賭け行為は必ずしも禁止していないという場合もある。これらスポーツ関係者あるいは金持ちの著名人等は、合法サイトで勘定を作る場合、本人確認を要求され、自分の個人情報をさらけ出すことを極端に嫌がる。不正に関与しているのではと変な懸念をかけられかねないからだ。だからこそ、正当な方法ではないが、事前に資金を払い込むより、全て信用借りで元手無しで、負けたら後で賭け金を支払うという違法な手法の賭けを好む性向がある。かつまたスポーツ選手等は直接自らが賭けず、友達や知り合い等を代理人として、ばれないように賭けるということを好む。これらが闇行為としての裏のブックメーカーが生まれてしまう背景になる。彼らは著名なスポーツ選手や関係者を金ずるとして狙いをつけ、賭博行為に誘い込み、少しずつ、深みに誘い込んでいくという手口を取る。選手に直接アクセスするのはハードルが高い故、その周辺者からアクセスを試みるというのも常道手段である。勿論これは反社会勢力やマフィア的暴力組織が絡んでいることが過半になる。要は真面な世界ではない。真面な世界ではないからこそ、巨額の資金が動いても、情報は一切ばれないし、表沙汰になることはない。相手が著名人や金持ちであればある程、負け続ければ、与信額を引き上げ、更に賭け続けさせ、泥沼に陥らせるというシナリオもよくある筋書きなのだ。勿論負け金額が巨額になると、返済に際しては暴力沙汰だけではすまなくなり、不正行為に加担させられるかもしれないということも洋の東西を問わず存在する。

この様にスポーツ選手がその友達や第三者とつるんで、悪事を働くという事例は米国では数多くある。大谷選手と水原元通訳というその関係性を聞いただけで、普通の米国人からすれば、これは両者がつるんでいるのではと勘繰るのは常識的な推測であるともいえる。これは日本人の心情には生じてこない。勿論、現状は大谷選手は単純な犠牲者ということで世論は落ち着いてはいるのだが、この続きがあるのではと考える米国人もまだいる。

(美原 融)

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