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2024-11-25

288.賭博依存症⑱ モニタリング・介入・支援

オンラインやモバイルを前提とした賭博行為を施行する場合、オンライン・モバイルに特徴的な否定的側面はあるが、逆にデジタル化された情報をうまく利用することにより賭博依存症に関わる問題を封じ込めたり、抑止できたりする可能性も増える。
オンラインの場合、顧客と直接対面するビジネスではないため、顧客の状態は実は把握できにくい。
但し、逆に顧客の賭け金行動の履歴とその賭け行動のパターンはデジタル化したデータから把握し、推測することができる。
ここから依存症のリスクや症状を呈した賭け金行動を特定できる。
勿論人間がやるわけではなく、膨大なデータの中からAI等を活用し、異常な賭け行動パターンを特定、解析し、対象者を特定するアルゴリズムを活用するわけだ。
かかる顧客に対し、個別のメッセージを発出したり、注意を促す、あるいは直接コンタクトしたりすることでより正確な状況を把握し、過剰な賭け行動慎むことを勧め、必要な場合にはカウンセリング等を紹介することができる。
要は、極めて早い段階で確実に潜在的問題を察知し、対処できることになる。
これにより、賭博行為がもたらしうる危害を縮小化することができる(これはデイーラーが個別の顧客の行動をモニタリングしながら、おかしな行動を察知するのに比べ、確実に早い段階で捕捉できることを意味する)。
またシステム的に対応するため、人間によるバイアスを避けることができる。
事業者によるかかる対応を事業者の義務とする国・地域もあれば、制度ではなく、事業者による慣行としてかかる手法を実践することが根付いている国や地域も多い。

かかる現実の対応策としては下記等がある。

  • 顧客賭け行動パターンのモニタリングと依存症状の特定、注意喚起:
    モバイルで賭博行為に参加する場合には、まず賭け金預託や決済のための個人の勘定を事業者サイト内に設ける必要があり、本人確認や決済のための個人情報提供等が求められる(毎回アクセス毎に勘定開設時に登録した公的書類の顔写真、スマフォの写真と比較する形で、生体認証を求めれば、なりすましはできなくなる)。
    以後全ての顧客の賭け行為はデジタル化されるため、事業者は電子的に顧客個人の勘定の出入り(ログデータ、顧客の賭け金行動データ~回数・賭け金・勝ち金・負け等)を捕捉でき、記録できる。
    一定時間内に頻度の高い賭け金行動や累積賭け金が異常に高くなる行為等の特異なパターンは予めアルゴリズムを設定することによりAIがシステム的に捕捉し、特定することが可能になる。
    かかる顧客行動を分析し、異常な賭け金行動を示している顧客を早めに発見・特定化し、直接コンタクトし、状況をチェックしたり、当該主体に注意を促したりすること等ができるようになる。
    これは陸上カジノ施設では不可能で、全てがデジタル化しているからこそ可能になる手法である。
  • 顧客への定期的活動報告フィードバックやメッセージング:
    デジタル化されたオンラインカジノやスポーツブッキングの仕組みは、電子的にログデータが蓄積されることにより、トレーサビリティが高くなる。
    過去どのくらい賭けたか、損をしたかを例えば毎月あるいは四半期毎の活動報告(Activity Statement)として電子メール等にて顧客に直接報告することができる。
    これも顧客による行き過ぎた行動を抑止したり、自重を促したりする効果がある(また回数の頻度が高く、累積損失等が大きい顧客の場合には、一定期間の損失・回数等をログインの際にスマフォ等にポップアップメッセージとして注意を促す表示をし、本人がこれを認識しないと前へ進めなくするなどの仕組みも存在するが同様の効果がある。
    あるいはスポーツ試合中のIn-Playの賭け事の場合、賭けようとするとその試合における賭け事に要した時間・回数・累積賭け金等が個人化された情報メッセージとして現れる。
    これも過剰な賭けを抑止する効果をもたらす)。
    正確な情報を顧客に伝えることにより、顧客の認識を喚起することになるわけだ。
    ネットでサービスを提供する場合には、Q&Aや顧客への情報支援提供ツールを充実させたり、必要な場合常に顧客と対話ができるインターフェースを準備したりして、顧客との関係に齟齬をきたさない配慮が必要となる。
  • 相談・カウンセリング・治療紹介等による顧客への介入・支援:
    問題症状を引き起こしている顧客等に対し無料相談・カウンセリングを常時提供できるようにサイトに常に相談電話番号を案内するバーナー広告表示が掲示されるようにするとか、異常な行動を示す顧客を特定し、かかる顧客が要請する場合には、自己排除手続きを進めたり、電子メール、電話や電子会議等の手法により専門的カウンセリングを提供したりするような施策になる。
    場合によっては医療機関を紹介したり、その他可能な方法で対応を支援したりする。
    これら対応措置は、陸上設置型カジノ施設の場合と変わりないといえる。
    オンラインによる賭博事業者は顧客から見れば、相手がよく見えない主体である以上、潜在的問題を抱えていても、どう相談したらよいか解り難い場合も考えられ、顧客との潜在的対話には24時間対応できる仕組みが必要となる。
  • 排除対象者リストの広域共有:
    自己排除や家族排除の仕組みは各施設単位での申請となるが、国あるいは広域でこの情報を本人同意のもとで電子的に共有することにより、その国、あるいは地域全体のあらゆる施設での効果的な排除が可能になる。
    施設単位の排除では他施設に行けば元もこうも無いため、一か所での申請は国単位で共有すれば排除は確実にできる。
    オーストラリアでは国の機関が音頭をとり、かかる情報共有システムが既に胎動している。

モバイルが賭博サービス提供の中心となる時代では、デジタル技術やデータをうまく活用することで、顧客のおかしな行動を早めに察知することが可能になる。
これを顧客に再認識させたり、更なる行動を抑止する勧奨をしたりすることで、危害の縮小化を図ることができる。

(美原 融)

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