2026-09-21
380.イベント予測契約④:追い詰められるKalshi,さてどうなるか
Kalshiが2月23日ユタ州知事・司法長官を相手に連邦地裁に訴えた案件は、8月4日に連邦地裁が、Kalshiが要請した仮差し止め(PI)を棄却、Kalshiは8月5日に連邦第十巡回控訴裁判所(10CA)に控訴したが、9月8日同控訴審はKalshiによる主張には根拠がないとして、これを棄却した。
もっともこれらは仮判決みたいなもので、控訴中の州政府による法執行を認める事を意味する。
要は、Kalshiは民事刑事上の法執行をされかねないという保護なしの状態で本審に向かわざるを得ないということだ。
ユタ州はあらゆる賭博が禁止されている米国唯二の州のひとつで、この判決により州政府は民事・刑事上の州法の執行、そのための訴訟をおこすことができる。
いや実際にやるかもしれない。
一方、連邦第六巡回控訴裁判所(6CA)によるKalshiによる対オハイオ州控訴では4月24日に 同巡回控訴審は Kalshiによる控訴中の仮差し止め(PI)要請を否定している。
要は6CA、9CA、10CAと三つの控訴審は、同じスタンスをとったことになる。
何と10CA判断と同日の9月8日にアイオワ州に対する連邦地裁訴訟案件でも、Kalshiの仮差し止め(PI)を求める主張は連邦地裁により棄却され、あいついでKalshiにとり不利な法廷の仮判決がでるという状況が続いている。
この他、コネチカット州司法長官は9月10日には訴訟対象となったKalshi, CoinBase以外の9つの予測市場プラットフォームに対し業務停止・退出勧告(C&D)を発出すると共に、これらプラットフォームに係る下請け業者、支払い代行業者等30社に対し、召喚状を発出した。
プラットフォームに従事する幇助者を締め付ける作戦で、法廷等の戦場ではなく、兵糧を断てば音を上げるだろうというものだ。
バトルは益々過激になりつつあるが、こちらの方がより効果的かもしれない。
連邦巡回控訴審による判決は判決後2週間以内であれば同控訴審に対し全裁判官が出席する控訴審大法廷での再審(En banc Reviewという)を要請できる。
何と、Kalshiは9月9日に9CA(連邦第九巡回控訴裁判所)にこれを要請した。
3人による裁判官の判断はCFTC旧ルールに基づく判断で、CFTCはこれを廃止し、今新ルールにおきかえようとしており、これが実現すれば、3人の裁判官の判断は無効化する。
よって大法廷による再審と審議の継続は可能なはずという理屈を提示した。
これはどう考えても無理筋の要求の様にも思えるが、時間稼ぎの戦略もあるみたいだ。
連邦巡回控訴裁判所の判決は正式に下級裁判所に移送されることにより、確定判決として下級裁判所で拘束力を持つことになる(これをMandateという)。
控訴審における大法廷による再審等なかなか認められるわけがないのだが、再審の申し立てをするだけで、このMandateの発効は一端とまってしまう!という効果がある(要は再審を行うか否かの審議が始まるわけで最終決着迄、時間を稼げるわけだ)。
この確定判決が発効する手順がとまってしまうと、9CA傘下にある他の州が法的な強制措置を取ることを、牽制することもできる。
これをやりかねないのが様子をうかがっているカリフォルニア州等でカリフォルニア州司法長官は従前より予測市場契約は州法違反、法的な強制措置もありうることを表明し続けてきており、他州の司法長官と共同歩調をとっているからだ。
控訴審判決が確定判決となれば、これを根拠に州法に基づく法的措置を胎動できるし、実際、この司法長官は過激な行動をとるかもしれない。
もっとびっくりする動きがでてきたのはKalshiと同様に別訴訟により訴えられていた同業者とKalshiが法廷闘争で連携する動きを取り始めたことだ。
9CAは実はKalshi案件とは異なるRobinhood・Crypto.comとの訴訟を統合して審理していたのだが、8月30日にRobinhoodは9CAによる判決を不服として、連邦最高裁に対し、裁量上訴の請願(Petition for Writ of Certiorari)を提出し、再審査を要求した。
その後Crypto.comもこの戦線に名を連ねた。
明らかにKalshiと共同戦線を張ったことになる。
この狙いは連邦最高裁で3CA(ニュージャージ州による請願)と9CA(Robinhoodによる請願)の案件を統合させることにあるのではないかと判断されている。
バラバラに処理されると3CAの判断は間違いか否かという点に焦点があたり、再審の対象として棄却される可能性もある。
なにしろ米国最高裁への請願の90%は取り上げてもらえないのが現実だ。
両案件を統合させ、迅速な審議と口頭弁論を要請し、あくまでもCircuit Splitの状況を強調し、3CA3と9CAのどちらの判断が正しいかを最高裁に判断させようという狙いなのだろう。
かつ、審議を取り上げるまでに時間がかかると、他の巡回控訴審(CA)の判決を見定めてから最高裁が取り上げるという状況もありうる。
確かにこうなると時間稼ぎは確実になると共に、連邦最高裁が案件を取り上げ、審査の対象にする可能性は確実に高まる。
現状4つの連邦巡回控訴裁判所(CA)で22州の訴訟案件が上訴されたか、されようとしている。
内、6CAではオハイオ州(州勝訴、PI否定)とテネシー州(Kalshi勝訴、PI付与)の案件が統合審理となり、既に7月に口頭弁論も終えている。
これは同一巡回控訴裁判所区域内でSpritが生じている案件になり、どちらにころんでも、3CA, 6CA, 9CAとトリプルのCircuit Splitが生じるのは間違いない。
6CAでは後は判決待ちということなのだが本年10月~12月には判決が下されるのではないかと予想されている。
6CAでも2CAでもKalshiの主張を棄却しそうな様相でもあり、控訴審におけるKalshiにとり不利な判決は今後共でてきそうである。
Kalshiにとり逆風は確実に強まりつつある。
Kalshiの現状のTrading Volumeの85%がスポーツベットで、フットボールのシーズンも始まり、スポーツベットと予測市場が更に拡大する可能性は極めて高い。
もし、連邦最高裁がKalshiにとり不利な判決を下した場合、予測市場自体が瓦解するリスクはある。
さて、市場はこのリスクをどう評価しているのであろうか。
(美原 融)